銀河戦記/鳴動編 第二部 第十三章 カーター男爵 V
2021.07.04

第十三章 カーター男爵





 カーターは病室のベッドの上で目が覚めた。
 ベッド脇には点滴の器具があり、左手に繋がれていた。
「あら、気が付かれましたか」
 看護師が話しかけてきた。
「公爵さまは?」
「あなたのお蔭で、無事息災ですよ。ご安心ください」
「そうですか……。よかった」
「その公爵様が、謁見を許されております。お会いになられますか?」
「公爵さまが? ぜひお願いします」
「それでは……」
 看護師は、車いすを持ち出してきてカーターを乗せて、公爵の御前へと進んだ。

「そなたのお蔭で無事だった」
「当然のことをしたまでです」
「そうか。とはいえ、何か礼をしなければな」
 しばらく考えていたが、
「お主は貴族の子孫だと聞いておるが、真か?」
「はい。曾祖父の代に先のウィフム・クロンカンプ伯爵に仕えており、男爵の位を頂いておりました」
「ほほう。男爵とな、何故爵位を剥奪されたのか?」
「詳しくは存じませんが、公金横領の疑いを受けたということを聞いております」
「疑いだけでか?」
「はい。火のない所に煙は立たぬ、ということらしいです」
「そうか……ふむ。ならばお主に爵位を与えよう。そうだな、いきなり男爵というわけにはいかないから、勲功爵からだ。今後の働き次第で男爵位も与えよう。どうだ?」
「目に余る光栄でございます」

 そこへ別の人物が連れてこられた。
 海賊ドレークである。
 今度は、暴行を働けないように拘束具を装着されて、立つのがやっとの状態であった。
 従者の一人が進言する。
「この者の名は、フランシス・ドレーク。公爵への暴行は無論のこと、我が国の商船に対する海賊行為による損害は計り知れず、死刑に値するものであります」
「ドレークよ。申し開きはあるか?」
 ドレークは無言で答えない。
「釈明も命乞いもしないのだな。まあよいわ」
 と、傍に控えていた別の従者に合図すると、ワゴンを押して二人の前に酒の入ったグラスを運んだ。
 ドレークの拘束具が解かれる。
「お主の力量を葬り去るのは惜しいのだ。どうだ、我が国の艦隊で、その才能を発揮してはみないか?」
「この俺に軍隊で働けと言うのか?」
「わが軍は平和ボケしていて、まともに戦った士官がいないのでな。お主のような百戦錬磨の強者が欲しいのだよ」
「そうか……いいだろう。で、どれだけの戦力をくれるのか?」
「銀河帝国第一艦隊百万隻だ! その司令長官に任じたい」
「百万隻か、いいね。引き受けた!」
「よろしい。祝杯を挙げよう」
 グラスに酒が注がれる。

 こうして、マンソン・カーターとフランシス・ドレークが公爵の配下となった。

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2021.07.04 16:00 | 固定リンク | 第二部 | コメント (0)
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