銀河戦記/鳴動編 第二部 第六章 皇室議会 Ⅲ
2021.07.02

第六章 皇室議会




 正面パネルスクリーンには、勇壮と進軍する統合軍艦隊が映し出されていた。
「しばし後を頼む」
 席を立つアレックス。
「どちらへ?」
「ティータイムだ」
 統合軍の進撃が順調に進んでいるのを見届けて、ちょっと休憩したくなったのであろう。
 第一艦橋を出てすぐの所に、自動販売機コーナーがある。
 立ち寄って販売機にIDカードを挿しいれてドリンクを購入するアレックス。
 湯気の立ち上がるカップを取り出して、そばのベンチに座って口にする。
「うん。自動販売機にしては、結構いける味だな」
 一服している間にも、艦橋要員のオペレーターが立ち寄っていくが、アレックスが任務中なのを知っているので、軽く挨拶をするだけで話しかける者はいない。


 ドリンクを飲み終わり、やおら立ち上がって艦橋とは反対方向へと歩きはじめる。
 向かった先は、通信統制室の一角にある通信ルーム。
 その中の一室に入り、端末の前に着座して、機器を操作している。
「特秘通信回線を開いてくれ」
 端末に向かって話すと、
『IDカードヲ、ソウニュウシテクダサイ』
 と喋り、言われたとおりにIDカードを差し入れると、
『モウマクパターンヲ、ショウゴウシマス』
 レーザー光線が目に当てられて、網膜パターンのスキャンが行われた。
『アレックス・ランドールテイトクト、カクニンシマシタ。トクヒカイセンヲ、ヒラキマス』
 と同時に背後の扉が自動的に閉じられ鍵が掛けられた。
 アレックスは通信相手の暗号コードを入力して短い電文を送信した。

 静かな湖から白鳥は飛び立つ

 たったそれだけであった。
 何かを指示する暗号文なのであろうが、これだけでは知らない人間には通じない。
 おそらく受け取った誰かだけが、その真意を理解することができるのであろう。
 ややあってから、
『ジュシンヲ、カクニンシマシタ。リョウカイシタ』
 という通信が二度返ってきた。
 暗号文が二箇所の相手に伝えられ確認されたことを意味していた。
 通信端末の回線を切るアレックス。
 回線を切ると自動的に扉が開く。
「よし。これでいい」
 立ち上がり、通信ルームを退室する。


 艦橋に戻ると一騒動が起きていた。
 整然と並んでいた艦隊が乱れていた。
「どうしたんだ?」
「はい。地方の委任統治領の領主が参戦したいと割り込んできたのです」
「委任統治領?」
「いわゆる周辺地域をパトロールしていた警備艦隊を引き連れてきました」
「警備艦隊ねえ……」
 警備艦隊は、各地で起こった暴動や反乱などを鎮圧するのが主な任務である。
 つまり艦隊戦の経験がまったくないということである。
 これからやろうというのは、総督軍との艦隊決戦である。
 艦隊戦闘の経験のない艦隊など役に立つどころか足手まといになるだけである。
「ここで名を売っておこうという腹積もりなのではないかと」
「おそらくな」
「どうしますか、追い返します?」
「そう無碍にもできないだろう。何か役に立つこともあるだろうさ」
「索敵にでも出しますか?」
「いや。索敵を甘く考えてはだめだ。勝利の行方を左右する重大な任務に素人を投入するのは危険だ」
「では、後方支援部隊に協力させて、解放した惑星の戦後処理にでも当たらせますか?」
「そうだな……」
 厄介なことになったが、相手は委任統治領の領主でり、土地持ちの上級貴族である。
 今後の銀河帝国における政策にも関わる問題であり、彼らを抜きにしては将来は保証できない。


 変わって首都星アルデランのアルタミラ宮殿。
 皇室議会が召集されていた。
 議場の正面には、パネルスクリーンに銀河帝国統合軍艦隊の勇姿が投影されていた。
「第一皇子殿下が出撃されて十八時間になるが、何か変わったことはないか?」
「特に変わったことは……」
「中立地帯を越えるのは、いつ頃になるか?」
「およそ三日後になるかと」
「しかし、けしからんな。報道機関がこぞって皇太子殿下などと呼称している。我々は、皇太子継承をまだ認めていないぞ」
「そうは言っても、民衆の間ではすでにアレクサンダー第一皇子を皇太子として受け入れているようだ」
「戦争に報道機関を従軍させるとは、何を考えているんだ」
「民衆に対する人気取りに決まっているだろう」
「そうかな。自分には自信の程が窺えるのだが……」
「それにしても、総勢百五十万隻で敵艦隊二百五十万隻と本気で戦うつもりだろうか」
「そうでなきゃ。出撃しないだろう。何せ共和国同盟の英雄だからな。連戦連勝、向かうところ敵なしの無敗の智将。圧倒的に敵が有利な戦をもひっくり返して勝ち続けたという実績もある」
「不意打ちとか待ち伏せ、姑息で卑怯な戦いをするともいうが」
「まさか、一対一で向き合って『やあやあ、我こそは源氏の頭領、源の何がしである……』とか言うのが正論だと言わないだろうな」
 次々と、ぼやきにも似た発言を続ける議員達だった。
 アレックスの悪口ばかりだったが、一人が話題を変えた。
「委任統治領の領主達が、独自に判断して警備艦隊を引き連れて参戦しているようだが」
「摂政派の領主達も参加しているというじゃないか。止められなかったのか?」
「謀反だな。領地没収だな」
「できるのか?」

「今からでも遅くないだろ。呼び戻せないか」
「どうやって?」
「何とでも言えるだろう。公爵殿の意向だと言えば引き返すさ」
「馬鹿言え! 銀河帝国の存亡を掛けて出撃している第一皇子の下に馳せ参じているんだぞ。『帰れ』などと命令できるわけがないじゃないか」
 一同が口を噤んだ。
 摂政エリザベス皇女より、銀河帝国元帥号及び宇宙艦隊司令長官を拝命したアレックス。
 その地位は本来、皇太子殿下にのみに与えられるものである。
 すでにアレックスは絶大なる権限を有し、銀河帝国艦隊を自由に動かすことのできる地位にあるのだ。
 たとえ地方の警備艦隊といえども、アレックスがひとたび命令を下せば従わねばならない規則になっている。
「こうなる前に、戒厳令を布いておくべきだったか」
「誰が予測できたというのだ」
「もし、この戦いでアレクサンダー皇子が勝てば、民衆に対する人気は絶大なものになる」
「そうだな。いくら公爵といえども世論には逆らえまい」
 議論は堂々巡りで進展しない。
 誰かが発言した。
「こうしたらどうだろう。今この時点で論じ合っても詮無いこと、結果が出てからでも遅くないのではないか」
「それもそうだ」
 意見は一致した。
 皇太子擁立問題は、第一皇子の総督軍との決戦を見届けてからということになった。
「それでは、そういうことで閉会とする」

 第六章 了

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2021.07.02 16:10 | 固定リンク | 第二部 | コメント (0)
銀河戦記/鳴動編 第二部 第六章 皇室議会 Ⅱ
2021.07.01

第六章 皇室議会

      


 謁見の間は、相変わらず紛糾していた。
 アレックスの意見具申に対しことごとく反対意見を述べる大臣達。
 いつまでも結論が出ず、結局最後は摂政裁定で議決されるという有様だった。
 ここにはいないロベスピエール公爵の意向がすべてを左右していた。
 傀儡かいらい政権の大臣達には公爵に逆らえるわけがなかったのである。
「統合軍第四艦隊及び第五艦隊に対し出撃を命令し、先行する第二艦隊と第三艦隊の後方支援の任務を与えます」
 アレックスが意見具申を申し出てから、今日の裁定に至るまで七日という日が無駄に費やされていた。
 皇女が直接指揮権を有する皇女艦隊と違って、一般の統合軍艦隊は国防大臣(艦隊運用)及び国務大臣(予算配分)の配下にあった。どちらも摂政派に属しているために、いろんな理屈を並べて首を縦には振らなかったのである。
 議論は平行線をたどった挙句、直接戦闘には参加しない後方支援ということで、やっとのこと日の目をみたという次第だった。
「皇女様に対し敵艦隊との矢面に立たせて、第四・第五艦隊は安全な後方支援とはいかなる所存か?」
 第四艦隊・第五艦隊司令官からも、なぜ自分達は後方支援なのだという意見具申が出されていた。
 しかし大臣達は、戦闘経験のない艦隊を最前線に出すわけにはいかないという一点張りで対抗した。

 謁見の間から、統制官執務室に戻ったアレックスだが、思わず次官に対して愚痴をこぼしてしまう。
「まったく……頭の固い連中を相手にするのは疲れるよ」
「お察し致します。総督軍が迫っていると言うのに、相も変わらず保身に終始していますからね。総督軍との戦いに敗れれば、皇族も貴族もないのに」
「で、艦隊編成の進み具合は?」
「大臣達のお陰で何かと遅れ気味でしたが、燃料と弾薬の補給をほぼ完了して、やっとこさ一週間遅れで出撃できる次第となりました」
「一週間遅れか……。何とか間に合ったと言うところだな」
「後方支援ですからね。ぎりぎりセーフでしょう」
「ともかく後方かく乱されることなく、先行することができるようになったわけだ。一日でも早く先行する艦隊との差を縮めるようにしたまえ」
「かしこまりました」
 背を向けて窓の外の景色を眺めるようにして、腕組をし考え込むアレックス。
 しばしの沈黙があった。
 やがて振り返って命令する。
「第二艦隊及び第三艦隊に出撃命令を出せ。四十八時間以内に共和国同盟に向けて出撃する」
「了解。第二艦隊及び第三艦隊に出撃命令。四十八時間以内に共和国同盟へ進撃させます」
「よろしい」
 ついに迎撃開始の命令を出したアレックス。
 次官はデスクの上の端末を操作して、統合軍総司令部に命令を伝達した。
 艦隊数にして百五十万隻対二百五十万隻という敗勢必至の状況ではあるが、手をこまねいているわけにはいかなかった。
 数で負けるならば、それを跳ね除けるような作戦が必要なのであるが……。


 サラマンダー艦橋。
 指揮官席に、腕を組み目を伏せているアレックスが座っている。
 周囲からは管制オペレーター達の出撃準備の指示命令が聞こえている。
「全艦隊へのリモコンコードを送信する確認せよ」
「帝国旗艦アークロイヤルへ、サラマンダー左舷への進入を許可する」
「インヴィンシブルは右舷で待機せよ」
 前面のパネルスクリーンには、サラマンダーを中心に展開を進める統合宇宙艦隊の姿が映し出されている。
 サラマンダーの左側にマーガレット皇女の乗る攻撃空母アークロイヤル、右側にジュリエッタ皇女の巡洋戦艦インヴィンシブルが並進しており、後方には修理を終えたばかりのマリアンヌ皇女の戦艦マジェスティックが控えていた。
「同盟軍、全艦隊出撃準備完了しました」
「よろしい!マーガレット皇女を呼んでくれ」
「了解」


 アークロイヤル艦橋。
 艦隊司令官のトーマス・グレイブス少将がてきぱきと艦隊指揮を執っていた。
 正装したマーガレットが皇女席に腰掛けている。
 皇女として常に凛々しい姿を見せるために、戦闘服などいう野暮ったいものは着ていない。しかし、実際には皇女席の周りには、対衝撃バリアが張り巡らされていて、いざという時には床下から緊急脱出艇へ、着席したまま移動できるようになっていた。
「殿下がお出になっておられます」
「繋いでください」
「かしこまりました」
 正面パネルスクリーンにアレックスの姿が映し出された。
「そちらの準備はいかがですか?」
「ちょうど出撃準備が完了したところです」
「まもなく出撃します」
「判りました、こちらはいつでも構いません」

 インヴィンシブル艦橋。
 こちらの艦隊司令官はホレーショ・ネルソン中将である。
 同じく正装姿のジュリエッタが、アレックスと交信していた。
「これからの戦いは今までの相手と違って、手加減はしてくれません。正真正銘の殺し合いになりますが、将兵達の士気はいかがですか?」
「士気は上がっております。殿下の期待に十分応えられると存じます」
「結構ですね。それでは全艦の準備が終わり次第、出撃します」
「かしこまりました」

 再びサラマンダー艦橋。
「帝国艦隊、全艦隊出撃準備完了です」
「よし、足並み揃った。行くとするか……」
 傍に控えるパトリシアに目配せしてから、全軍に指令を下すアレックス。
「統合軍、全艦隊出撃開始せよ!」
 アレックス指揮以下の宇宙艦隊が進軍を開始した。
 するとどこからともなく民間の宇宙船が集まってくる。
 TV局の報道用宇宙船であった。
 報道宇宙船が追従を続ける。
『我等が皇太子殿下のお乗りになられる旗艦サラマンダーであります。最大戦闘速度は、戦艦では銀河系随一の俊足を誇り、火力の射程距離も最大級。艦体に彩られた図柄は、伝説の火の精霊。連邦軍はその艦影を見ただけで、恐れをなして逃げ出すといわれております。その両翼にはマーガレット皇女さまのアークロイヤル、ジュリエッタ皇女さまのインヴィンシブルが並進し、まるでご兄妹仲の良さを現しているかのようであります』
 また別のTV局も負けじと報道合戦を繰り広げる。
『帝国二百億の皆様。ごらんください。皇太子殿下率いる、共和国同盟解放軍および銀河帝国軍の混成連合艦隊の雄姿であります。総勢百五十万隻の艦隊が一路、共和国同盟の解放を目指して進軍を開始しました。かつてのトリスタニア商業組合連合が帝国からの分離独立を果たした第二次銀河大戦以来、二百年ぶりの国境を越えての本格的な軍事介入となります。その目的が独立阻止から民衆解放と変わったとはいえ、歴史の一ページを飾る大きな出来事といえます』
『伝説の火の精霊に彩られた旗艦サラマンダーは、これまで皇太子殿下が幾多の戦いを乗り越えられ勝利されてきた名誉ある戦闘艦です。そして今また、銀河帝国の存亡の危機を救わんと殿下自らが艦隊を率いて共和国同盟総督軍との戦いに臨まれます』
 さらにサラマンダー艦内にもTV局の報道陣が入っていた。軍艦であるから厳重なる軍事機密があるはずなのにである。
『ここは旗艦サラマンダーの居住区であります。皇太子殿下より特別許可を許されまして、はじめて報道のカメラが入りました。但し、乗員への取材は厳禁となっております。今カメラの視野に入っておりますのは病院です。乗員たちの健康を維持し、体力を増進させます。医療機器も最新の設備を誇り、臓器移植さえ可能なスタッフを揃えています』
『さて、とっておきの映像をお届けしましょう。なんと! 旗艦サラマンダーの第一艦橋内部の映像です。皇太子殿下が御座なさり、全艦隊への勅命を下される司令塔であります。とは申しましても、残念ながら一箇所にカメラを固定されてのワンカット映像のみで音声もありません。艦橋内は最高軍事機密ですので、乗員達の素顔や最新鋭の計器類を撮影することは許されておりません。しかしながら、背中越しとはいえ、艦橋内の緊迫感は伝わってくるかと思います』

 パネルスクリーンに投影されている報道局の宇宙船を眺めながらパトリシアが尋ねる。
「しかし、提督はどうしてTV局の追随を許可なされたのですか? しかも艦内撮影まで許可なされるとは」
「民衆にたいする宣伝だよ」
「宣伝?」
「そうだ。いかに帝国皇太子といえども、民衆の支持なくしては、政治を円満に推し進めることはできないし、第一、皇室議会からは未だ正式な皇太子継承の承認を受けていないからな。頭の固い大臣達だって、民衆の声を無視するわけにはいかないだろう」
「民衆を味方につけるわけですか」
「保身に走りたがる貴族よりは、民衆のほうがよっぽど銀河帝国の将来を心配しているのが実情だ。虐げられているとはいえ、民衆の気持ちは大切にしたいからね」
「それで……。そこまでのことをする限りは、この戦いに勝つ算段が十二分におありなんでしょうね」
「まあ、それなりのことはするつもりだよ。もし敗れれば、逆効果となって、帝国内部で再び騒乱が起きる可能性もででくるかもしれないがな」
「摂政派の連中が、それ見たことかと冗長するでしょうね」

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2021.07.01 08:19 | 固定リンク | 第二部 | コメント (0)
銀河戦記/鳴動編 第二部 第六章 皇室議会 Ⅰ
2021.06.30

第六章 皇室議会




 皇太子問題を正式に討議する機関である皇室議会は、いまだ結論を出しかねていた。
 エリザベスが摂政権限でアレックスを宇宙艦隊司令長官及び元帥号の称号を与えたとしても、あくまで暫定的な処置であって恒久的なものではないと判断されているからである。
 皇室議会のメンバーは原則的には皇族以外の上級貴族達で構成されていた。
 皇族間の紛争を避けるために中立的な立場から意見を述べ合えるとの配慮からだった。
 だが実際には、皇族の息の掛かった貴族が選ばれるのが常だった。影で糸を引く実力者として、ロベスピエール公爵の名前が噂に上っている。
 皇室議会はロベスピエール公爵の手の内にあると言っても過言ではなかった。
 ゆえに、摂政派の旗頭であるジョージ親王を、おいそれとは追い出せないのである。
 公爵にしてみれば、自分の嫡男が皇帝の座に着けば、銀河帝国の全権を掌握したにも等しいことになる。
 何せジョージ親王は精神薄弱で、自分で意思決定ができず、すべて公爵の言いなりになっているからである。

 謁見の間に参列する大臣達の大半が摂政派に属していることも、アレックスの頭痛の種となっていた。
 アレックスの意見や進言にことごとく反対して自由に行動させないようにしているのは、ロベスピエール公爵の意向が計り知れなかったからである。
 何事にも公爵の意見を聞かなければ決断が出せないのである。自分で勝手に判断して、公爵の機嫌を損ねたら大変だ。
 アレックスを自由にすれば皇太子派の勢力を冗長させるのは目に見えている。摂政派としては、そのことだけは何としても阻止しなければならない。
 もっと極端に言えば、アレックスには死んでもらった方がいいと考えるのが摂政派の考えであろう。
 幼児時代の誘拐事件や、アルビエール侯国来訪時の襲撃事件も、裏から糸を引く公爵の差し金によって、大臣の中の誰かが策謀したものに違いなかった。
 摂政派にとって憂慮することは、アレックスには正統なる皇位継承者である第一皇子としての地位が確保されており、なによりも【皇位継承の証】という伝家の宝刀を所持しているということである。
 ジョージ親王が、先の皇室議会での決定による皇太子詮議にもとづいて、皇位についたとしても、アレックスの第一位皇位継承権が剥奪されたわけではない。ジョージ親王の皇帝即位は暫定的なもので、その子孫が皇位を継承する権利はなく、『皇位継承の証』を所有するアレックスとその子孫が皇位につくことが決定されている。

 皇室議会が皇太子問題を先延ばしにしていることは、世論の批判を浴びることになった。
 アレクサンダー第一皇子暗殺計画が策謀され密かに進行しているとか、根も葉もない噂も飛び交っていた。
 例え噂だったとしても、一国の将来を担う重大な問題だけに、噂に尾ひれがついて大きな波紋へと広がりつつあった。
 皇太子派も黙って指を加えているはずがなかった。摂政派が第一皇子を暗殺するなら、皇太子派の邪魔者であるジョージ親王を亡き者にしてやろうとたくらんでいるようだった。
 そんな不穏な動きが銀河帝国内を席巻しつつあり、内乱状態へと逆戻りするかも知れない一触触発の由々しき事態となっていた。


 そういった情勢の間にも、エリザベス以下マリアンヌまでの皇女達の間では、アレックスを立太子する方向にほぼ同意がなされていた。皇室議会においてジョージ親王がすでに、皇太子擁立の詮議が確定してしまっている以上、摂政エリザベスをしてもそれを覆すことはできない。とはいっても再審議の際には、家族協議における一致があれば、それを尊重しないわけにはいかない。
 家族だけが集う午餐会には、アレックスを交えて皇女達が仲睦まじく食事を囲む風景が、ここしばらく続いている。皇太子誘拐、継承争いにかかる姉妹の断絶、そして連邦軍の侵略と、内憂外患に煩わされていた日々を清算するためには、まず姉妹の絆を結束することからはじめなければならない、と誰しもが思っていたからである。アレックスが戻ってきた今こそがいい機会なのだと。
 最上位席(つまり食卓の端の席)にアレックスが腰掛けて、その両側に順次第一皇女から並んで腰を降ろしている。
「どうも困った事態になりつつあります。摂政派と皇太子派が一触即発状態にまで発展しつつあります」
 アレックスの口から最初に出た言葉だった。
 それに呼応してマーガレットが答える。
「それもこれも、皇室議会が皇太子問題を棚上げにしているせいよ」
「ベスには悪いけど、皇室議会は摂政派が過半数を占めていますからね」
 ジュリエッタも批判的な意見だった。
 摂政派……。
 誰が最初に言い出したかは判らない。
 皇太子候補となったロベール王子と父親のロベスピエール公爵一派というのが、真の意味での正確な表現であろう。
 そして母親であり公爵夫人であるエリザベスが、銀河帝国の摂政として国政を司っていることから、誰から言うともなく摂政派と呼称されるようになった。
 摂政派という呼称を使われるとき、エリザベスは辛酸を飲まされるような気分に陥る。
 しかも血肉を分けた家族から言われる心境はいかがなものであろうか。
「今は摂政派だ皇太子派だと論じている場合じゃない。総督軍の迫り来る情勢の中、早急に迎撃体制を整えなければならないというのに。とにかく内政に関しては、これまで通りにエリザベスに任せますよ」
「問題は傀儡政権となっている頭の固い大臣達よ。帝国軍を動かすには予算繰りから人事発動まで、実際に権限を持っているのは大臣なんだから。何かにつけていちゃもんを付けてはなかなか動こうとはしない」
「そうね。今動かせる艦隊は、第二艦隊と第三艦隊だけじゃない。叔父様達の自治領艦隊は動かすわけにはいかないし……」
「合わせて百四十万隻。総督軍は二百五十万隻というから、数だけを論ずるなら確実に負けるわね」
「あたしの艦隊もあるわ」
 マリアンヌが口を挟んだ。
 第六艦隊の十万隻を忘れないでという雰囲気だった。
「そうだったわね。合わせて百五十万隻よ」
 十万隻増えたところで体勢に影響はないが……。
 幸いにも将軍達は、アレックスに好意的だったので、軍内部での統制はすこぶる良好であった。

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2021.06.30 08:35 | 固定リンク | 第二部 | コメント (0)
銀河戦記/鳴動編 第二部 第五章 アル・サフリエニ Ⅲ
2021.06.29

第五章 アル・サフリエニ




 妹の自殺の知らせを、レイチェルから聞かされた時、ゴードンは号泣したという。
 唯一無二の肉親であり、幼少から自分が育ててきた可愛い妹の死は、連邦に対する激しい憎悪となって燃え上がり、彼を復讐鬼へと変貌させてしまったのである。
 妹の無残死のことを知っている参謀達は同情し、彼の狂気を止めることはできなかった。
「敵艦隊全滅しました」
「よし。惑星に降下して、地上に残る連邦兵士も一人残らず一掃しろ」
 降下作戦が実行され、連邦兵士は掃討されていった。
 カルバキア共和国首都星ニーチェのハーマン・ノルディック大統領と会見するゴードン。
「いやあ、あなた方が救援に来てくださって、助かりました。感謝いたします」
「当然のことをしたまでです。連邦軍は徹底的に排除すべきです」
「しかし投降した艦まで攻撃を続けて撃沈したのは感心しませんね」
「我々には捕虜を収容するだけの余裕はありませんし、逃がしてやれば、態勢を整えてまた舞い戻ってきます」
「国際条約に違反するのでは?」
「条約違反? 違反しているのは奴らの方じゃないですか。占領政策として連邦憲章にもとずく新政策を実施しました。個人の自由を完全に無視している。連邦では当然のことでしょうが、共和国においては何者にも束縛されない自由があったはず。それを連邦は……。占領下にある女性達は、連邦の兵士相手に妊娠を強制されるという極悪非道の扱いを受けています。それを知らないと言うのですか?」
「いや、それは良く存じております。我が国の女性達もその制度を強要されるところでした。それがために救援要請を行ったのですから」
「奴らは自分達の国の制度が一番と信じて疑わず、占領した国家の制度をことごとく改変しています」
「信じて疑わないから太刀が悪いですね」
「連邦の人間など抹殺されて当然です」
 それから二人は実務会議へと入った。
 カルバキア共和国の自治を将来に渡って維持するために、ウィンディーネ艦隊の一部を駐留させる事。カルバキアは、ウィンディーネ艦隊への燃料・弾薬・食料の補給の義務を負うこと。カルバキアの鉱物資源の採掘権の一部割譲などが取り交わされた。
 カルバキアにとっては不利な条件ではあるが、連邦の脅威が続いている以上、承諾するよりなかったのである。
 鉱物資源大国カルバキア共和国を友好国とし、鉱物採掘権を得た。鉱物は精錬して含有金属を取り出さなければならない。さらに造船所を確保して新造戦艦を建造して艦隊の増強も図りたい。
 こうしてゴードンが次なる友好国とする候補が上がった。
「カレウス星系惑星トバへ行くぞ」
 惑星トバは、一惑星一国家という小さな国家ではあるが、鉱物資源を輸入して精錬加工して輸出するという重金属工業都市であった。精錬した金属から戦艦を建造することのできる造船王国でもあった。
 技術立国にとって、技術者がどれだけ大事だかは、フリード・ケースンのことを考えれば一目瞭然のことであろう。たった一人で戦艦を開発設計できる能力者を失えば大きな痛手となる。そして幸いにもそのフリードはタルシエン要塞に在中であるから、戦艦の開発設計をやってもらい、惑星トバにて建造する。ゴードンの脳裏にはそういったプランが出来上がっていたようである。
 しかしながら惑星トバは、共和国が滅んだ時逸早く連邦に組みして、自治権を確保している。連邦としては無理に占領して、有能な技術者が逃亡するのを恐れて、自治権を認めてその工業力を掌握することにしたのである。
 当然ながら、連邦はそれ相応の駐留艦隊を配備していた。


「駐留艦隊の総数は、およそ一万八千隻です」
「工業大国を防衛するには、少な過ぎやしないか……?」
「補給の問題でしょう。工業国とはいえ、資源を輸入して加工品を輸出するという国政ですから、補給までは手が回らないでしょう。何よりも最大の問題が食料補給でしょう」
「自分達の国民でさえ食糧不足で困っているのにか?」
「その通りです。連邦軍は食料を自前で確保しなければなりませんから、大艦隊を派遣することはできないでしょう」
「だろうな」
「とにかく、数で圧倒して勝利は確実ですが、やりますか?」
「当然! 戦闘配備だ」
「了解。戦闘配備」
 戦闘が開始された。
 一万八千隻対十万隻という戦力差。数の上ではウィンディーネ艦隊の圧勝というところだが、技術大国を防衛する責務に燃える駐留艦隊の激しい抵抗にあって、一進一退が続いていた。というよりも、投降を一切認めない『皆殺しのウィンディーネ』と悟って、死にもの狂いで反撃していたのである。
「なかなかやるなあ……。エールを送りたくなるよ。しかしこれでどうだ」
 ゴードンは両翼を伸ばして完全包囲の態勢を取ると、オドリー少佐の部隊に突撃を命じた。
 ランドール戦法の攻撃力が加わると、さしもの駐留艦隊も態勢を乱して総崩れとなり、降伏を認めないゴードンによって全滅に至った。
 すぐさま惑星トバの首長と面会を求めたが拒絶された。
「我々はバーナード星系連邦と協定を結んだ。たとえ今ここで解放戦線と協定を結び直したとしても、連邦は再び艦隊を次々と派遣してくるだろう。たかが三十万隻そこそこの解放戦線に何ができる。最後に勝つのは連邦に決まっている。よって我々は解放戦線とは組みしない。判ったらさっさと立ち去るが良い」
 そういわれて、
「はい、そうですか」
 と引き下がるようなゴードンではなかった。
「言ってくれるねえ……感心するよ」
 相手が言うことを聞かなければ実力行使しかない。
 ただちに降下作戦に入り、瞬く間に惑星トバを占拠してしまったのである。
 首長ら高級官僚を拘束し、連邦軍排除派の民衆運動家のリーダーを首長に据えて、解放戦線との協定を結んでしまったのである。
 旧首脳陣は、ゴードンが実力行使という強行手段に出るとは思いもしなかったようである。アレックス率いるランドール艦隊が、民衆を大切にし解放のために戦っていることは知っている。
 おだやかなるアレックスの性格から民衆をないがしろにする行為には出ないだろう。
 そんな甘い考えがあったに違いない。
 しかし、連邦への復讐に燃えるゴードンには通じなかった。
 連邦の味方をすると公言したトバの首長を許すわけにはいかなかったのである。
 こうしてゴードンは、鉱物資源・精錬所・造船所と、戦艦を増強する手段を確保したが、肝心の資金がなかった。民衆から税金を徴収して運用資金を得られる政府軍と違って、解放戦線には海賊行為でもやらない限り資金集めは非常に困難であった。そもそもアレックスが銀河帝国へ向かったのも活動資金を援助してもらうためである。
 幸いにもカルバキア共和国から鉱物資源の採掘権が認められている。そこで資源を開発して希少金属を採掘して、それを売却して資金源とすることを決定した。そのために鉱脈探査の専門家を呼び寄せて調査に当たらせた。まるで山師のようで、どうなるものか判らないが、手をこまねいていては解決しない。
 その間にも、資金を提供してくれる友好国を求めて奔走するゴードンであった。

 第五章 了

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2021.06.29 15:23 | 固定リンク | 第二部 | コメント (0)
銀河戦記/鳴動編 第二部 第五章 アル・サフリエニ Ⅱ
2021.06.28

第五章 アル・サフリエニ




 ところが、総督軍にくみしたくないとある一国が差し迫って救援を求めてきて、それに呼応してゴードンが配下の艦隊を向かわせた。
 それが事の始まりだった。
 次々と救援要請を求める国が続出し、ゴードン率いるウィンディーネ艦隊が出動してきた。
「奴は独断先行が過ぎる」
 ゴードン率いるウィンディーネ艦隊は、独立艦隊で自由な行動がある程度許されていた。命令できる者は直属の上官であるアレックスだけであるが、本人は帝国へ行ってしまっている。よって、自由気ままに行動しているわけである。
 フランクは、指揮下の第五師団を当初予定通りの防衛陣から動かさなかった。また、チェスター准将の第十七艦隊以下の第八師団もそれに従った。ゴードンだけが突出して単独行動を続けていたのである。
 以前、ゴードンは冗談めいて言った事がある。
「遠征が失敗したら、いっそのことアル・サフリエニ共和国でも作って、細々とでもいいから生き残りを図った方がいいかも知れないね」
 当時は笑って済まされたが、
「もしかしたら……、本気でアル・サフリエニ共和国を興すつもりかもしれない」
 救援要請を受けているのは、そのための地盤固めかもしれない。住民達の心象を良くし、一念発起の際には協力を取り付ける所存なのだろう。
 銀河帝国からの放映は続いている。
 総督軍二百五十万隻に及ぶ侵略軍のことを報じており、アレクサンダー元帥が、これを百二十万隻で迎え撃つことを表明したと発表して終了した。
「百二十万隻対二百五十万隻か……。それなりに策を練ってはいると思うが、自分が育て上げた第十七艦隊とは違う。どこまでやれるのか見物だな」

 その頃、カルバキア共和国へ向かっているウィンディーネ艦隊。
「まもなくカルバキア共和国です」
「オードリー少佐を呼んでくれ」
 正面スクリーンにポップアップでオードリー少佐が現れた。彼はつい最近までゴードンの作戦参謀をやっていたが、配置転換で二千隻を従えた部隊司令官となっていた。
「敵艦隊の背後に先回りして退路を遮断してくれ」
「判りました。逃がしはしませんよ」
 ポップアップの映像が消えて、カルバキア共和国の首都星ニーチェが近づきつつあった。
 カルバキアは五十ほどの恒星・惑星からなる国家で、人が住めるのはニーチェだけだが、他惑星には鉄・ニッケル・タングステンといった鉱物資源が豊富に埋蔵されていて、鉱物資源大国となっていた。他惑星には軌道上に宇宙コロニーを建設して移り住み、資源開発を行っていた。
「敵艦隊発見!」
「ようし攻撃開始だ。一隻も逃がすなよ」
 ニーチェの軌道上に展開していた連邦艦隊、はるかに勝るウィンディーネ艦隊の来襲を受けて、あわてて撤退をはじめた。
「敵艦隊、撤退します」
「逃がすな。追撃しろ」
 アレックスの場合は、撤退する艦隊は追撃しないという方針を貫いていたが、ゴードンの場合は追撃して全滅させるのが方針のようだ。
 猛攻を受けて次々と撃沈していく連邦艦隊。退路に新たに出現した別働隊によって退路を絶たれ、観念した連邦艦隊は投降信号を打ち上げて停船した。
「白信号三つ。投降信号です」
「構わん。攻撃を続けろ。一隻も残さず殲滅するんだ」
 この頃のゴードン率いる艦隊は、皆殺しのウィンディーネと恐れられ、連邦軍にとっては恐怖の代名詞となりつつあった。ウィンディーネ艦隊とそうした連邦軍はことごとく全滅させられ、救命艇で脱出しようとする者までも容赦なく攻撃、一兵卒に至るまで残らず殺戮を繰り返していた。


 ゴードンの心は荒んでいた。
 その背景には悲しい物語があったのである。

 ゴードンには妹がいた。
 その妹を残して、トリスタニア共和国同盟首都星トランターを旅立って、アル・サフリエニ方面に赴任したゴードン。
 やがてバーナード星系連邦が攻め寄せてきて、トランターは陥落した。
 すぐさまバーナード星系連邦憲章に基づく占領政策が行われた。
 共和国同盟軍は解体されて、新たに共和国総督軍が設立され、徴兵制度によって兵役年齢にある男子はすべて徴兵された。
 各地に授産施設が開設され、妊娠可能年齢にある女性のすべてが強制収容された。
 授産施設。
 それはバーナード星系連邦にあって、人口殖産制度による『産めよ増やせよ』という考えにもとずく政策の一つであった。
 女性は、子供を産んで育てるもの。相応の年齢に達したら、授産施設に入所して妊娠のためのプログラムに参加する。
 スカートは女性のみが着るものだ。
 と、社会通念として教育されれば、誰しもがそう思い、男性はスカートを着てはいけないと判断する。それが自然なのだ。
 連邦に生まれた女性達は、幼少の頃からそう教えられ育てられたために、何の疑惑も持たずに殖産制度に従って、妊娠し子供を産みつづけている。
 もちろん妊娠し母となった女性達には、政府からの手厚い保護が受けられて働く必要もなく、養育に専念できるようになっている。
 占領総督府は、この授産施設による人口殖産制度を、共和国同盟の女性達にも適用したのである。
 そもそも共和国同盟憲章による教育を受けた同盟の女性達には、授産施設の何たるかを知るよしもないし、自分の意志によらない妊娠など問題外であった。
 子供は愛し合った男性と結婚して授かるものであって、授産施設で不特定の男性をあてがって妊娠させようなどとは、絶対に受け入れられない制度であった。
 地球古代史に記録のある、旧帝国日本軍が占領下の女性達に対して行なった強制慰安婦問題と同じではないか。(韓国軍慰安婦=第五種補給品と呼ばれた)
 しかし自分達の国家の制度は正しいと信伏する総督府によって、人口殖産制度は推し進められたのである。
 女性達は無理やり強制的に授産施設に連れてこられて、言うことを聞かないと逃げ出さないように裸にされて一室に閉じ込められ、毎日のように連邦軍兵士の相手をさせられた。
 抵抗する女性は手足を縛られて無理やりに犯された。かつて同様のことを行ったハンニバル艦隊の将兵達のように。
 当然として女性達は妊娠することになる。
 おなかの中にいるのは、身も知らぬ連邦軍兵士の子供。
 人工中絶は認められておらず出産するしかない。
 ここで女性達は二つの選択肢を与えられることになる。
 妊娠し子供を産み育てることを容認すれば、授産施設から解放されて自由になれる。少なくとも子供が十四歳になるまでは、次の妊娠を強要されることはない。
 もう一つは、密かに避妊ピルを服用しつつも、兵士達の相手をしながら耐え忍ぶことである。連邦軍には避妊ピルを知る者がいなかったからである。差し入れと称して授産施設の女性達に配られていた。
 ゴードンの妹も、そんな女性達の中にあった。
 そして妹は、第三の選択肢を選んだのである。
 妊娠したことを知った妹は、授産施設を抜け出し、自殺の道を選んだ。

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2021.06.28 07:12 | 固定リンク | 第二部 | コメント (0)

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