冗談ドラゴンクエスト
冒険の書・7

メニューへ 人体錬成? 「なるほど……。良く判りました」 「司祭様。何か良い手立てはありませんか?」 「そうですねえ……(と、腕組みをして考え込む)」  司祭に視線を合わせる一同。  しばし、重苦しい雰囲気。 「ないことはないですが……(思わせぶりに)」 「ほんとうですか?教えてください!(身を乗り出す)」 「司祭様。それって、まさか?」 「そうです。禁断の魔道書に記されているという」 「人体練成ですね」 「人体練成?」 「禁断の魔道書……。私も、内容は知りませんが、噂だけは聞いたことがありますよ」 「その魔道書はどこにあるのですか?」 「聞いてどうするのかね?」 「女の子の身体に戻りたいんです。人体練成ができればかないます」 「その気持ち判らないでもないが、人体練成を行うことは禁じられている。だから こその禁断の魔道書なのです」 「そうよねえ。簡単に男が女に女が男になったりしたら、役場の人が困るわね」 「そういう問題でもないと思いますが……」 「そもそも、禁断の魔道書の在り処でさえ誰も知らないのよ。噂だけ」 「誰も知らないのですか?」 「そうなのよ。だから本当に存在するかも疑わしいの」 「しかし、火のない所に煙は立たずといいますからね」 「司祭様。何か手がかりになりそうなことはご存じないですか?」 「そうですね……(しばし考える)クアール最高導師様なら、何か知っておられる かもしれないですね」 「クアール最高導師様?」 「久しぶりに聞く名前だわ」 「ご存知なのですか?」 「噂だけよ。すべての魔法を習得した魔導師中の魔導師。何でも500年くらいは 生きているらしくて神に近い存在らしいわ」 「すごいですね」 「今は現役を引退して森の中でひっそりと暮らしているとか」 「どこの森とかは判らないのですか?」 「誰も知らないということです。ただ、引退直前まで仕えていたフェリス王国の大 神官様なら、行方をご存知かも知れない」 「フェリス王国へ行ってみましょう」 「大神官様にお聞きするのですね」 「そうよ。今請け負っている仕事先のモトス村も途中にあるし、丁度いいわ」 「仕事中だったのですか?」 「こいつ……じゃなかった。元の勇者の請負だったけど、関わっている以上投げ出 すわけにはいかないから」  自分が一方的に勇者に押し付けた仕事だったことはすっかり忘れているナタリー であった。 「早速、フェリス王国へ向かいましょう」 「いや、もうすぐ夜がふける。山道を夜中に通るのは非常に危険です。明朝にしま しょう」 「そうね。なじみの宿屋を知っているから、そこに泊まりましょう」 「それは良かった。今夜はゆっくり休んで明日からの旅に備えましょう」  というわけで、夜が明けて出発の朝となる。 「騎士さんが、旅に一緒について来てくれるなんて、大助かりだわ」 「ご婦人をお守りするのがナイトの務めですから」 「ところで、騎士さんのお名前を伺っていいですか?」 「これは失礼しました。まだ名乗っていなかったですね。コンラッドと申します」 「コンラッドさんか……。いい名前だわ」 「よい響きがします」 「ほめてくださってありがとうございます。自分でも気に入っているんです」 「勇者という名前の変な奴もいたが(と、リリアをじっと見つめる)」 「な、なんですか?(恥ずかしそうに)」 「そういえば、あなた花売りと言っていたわね」 「はい、そうですが」 「つまり、冒険の旅に出たことがない?」 「はい」 「魔物と戦ったこともない?」 「その通りです」 「……で、フェリス王国へ行こうと?」 「いけませんか?」 「天然ボケが入っているわね……」 「はあ……?」 「いいこと? 村の外に出れば魔物が襲ってくるのよ。それくらいは判るわね?」 「当然ですね」 「あなた、戦えるの?」 「戦えませんが、ナタリーさんが守ってくださると思ってます」 「あのねえ……」 「そもそも、あたしをこんな身体にしたのは、ナタリーさんです。その責任は取ら ないといけないと思います」 「責任を取る?」 「こんな身体になるくらいなら、魂のまま彷徨っていたほうがよかったです」 「よく言うわね」 「あはは(と笑いながら)いいじゃないですか。一緒に旅をしましょう。リリアさ んは私が責任を持って守りますよ」 「あ、ありがとうございます。そうしていただけると助かります」 「それはいいんだけど……。体力はともかくその他のステータスが問題なのよね」 「何か問題があるのですか?」 「これが、大ありなのよね」 「どういうことですか?」 「HP以外の攻撃力・守備力・素早さなどが全部(1)でね、レベルアップしても ステータスはほとんど上がらないという男だったのよ」 「めずらしいですね。ほんとうですか?」 「もういちど見てみるわ」 といつつ、ステータス表示の呪文を唱えるナタリー。 「あれ? おかしいな……」 「どうしました?」 「ステータスが変わってる」 「どういう具合にですか?」 「ごく普通のというか……レベル1に戻っているんだけど、これは戦士……じゃな いわね。勇者クラスの初期値になってる。まあ、一応勇者なんだけどね」  それを聞いて騎士が頷く。 「勇者クラスですか。だとしたら、旅も大丈夫ですね」 「まあ、しばらくは経験値稼ぎが必要だろうけどね」 「あたしが勇者ですか? いやだなあ……」 「なっちまったものはしようがないでしょ。そろそろ出発しましょうか」 「おや、出発ですか?」  と、司祭が登場する。  言い忘れていたが、一同は教会前に集合していたのである。 「司祭様。おせわになりました」 「ふむ。フェリス王国へ行くのなら、ちょっと頼みごとをしたいのですが」 「頼みごと?」 「実は、この信書をフェリス王国大神官様に届けてほしいのです」 「フェリス王国の大神官というとモントゴメリー様ですね」 「その通りです。よくご存知ですね」 「フェリス王国には行った事がありますから」

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