冗談ドラゴンクエスト
冒険の書・15

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冒険の書・15 旅の準備  道しるべの羅針盤を入手して、『いざ!龍峡谷へ』と大聖堂から出てくる一行。 「龍峡谷は、入ってきた反対側の東大門からの出発です」  コンラッドが案内する。 「まずは道具屋で、食料とかの必要品を買い揃えておきましょう」 「聖水とかも一杯買っておきましょう」 「私は、武器屋に寄りたいので、東大門の所で落ち合いましょう」  ほどなくして東大門で落ち合う一行。 「それでは出発しましょう!」 「おお、気を付けて行けや」 「行くわよ!」  ナタリーが勇者の耳を引っ張っていこうとするげ、リリアを見て躊躇する。  こうして、新たなる旅が始まるのである。 「コンラッド様、旅に出られるのですか?」  城門の衛兵がコンラッドを見つけて言う。 「ああ、今度は長い旅になりそうだ」 「お気をつけて行ってらっしゃいませ」  と重い扉を開け放つ。  全員が城外に出た所で、城門は閉ざされ新展開の世界へと飛び出した」  とはいえ、まず最初にするのは雑魚モンスターを退治して、レベルアップに励む ことである。  と言っているそばからモンスターが現れた。 「みなさんこれをどうぞ」  と、コンラッドが三人に「聖なるナイフ」を手渡した。 「それで武器屋に寄ってらっしゃったのですね」 「気が利くわね、流石リーダーだわ」 「おい、俺がリーダーじゃなかったのか?」  勇者が不平を言う。 「何よ、今のあなたはスケベなただの花売り娘じゃない。勇者という名前のね」 「俺は、花売り娘なのか?」 「そうです」  リリアがキッパリと言った。 「ドラクエにそんな職業あったか?」 「無駄話はよして戦いに集中しましょう」 「そうだった。目の前にモンスターがいたんだ」 「大丈夫だ、ドラクエはターン制。こっちのコマンド入力戦闘が終わるまで、モン スターは襲ってはこない」  モンスターがいきなり襲ってきた。勇者に50Pのダメージ。 「そ、たまに奇襲されることもあるから要注意だ」 「何をのんきな事言ってるのよ」 「えい!」  とばかりに、モンスターをなぎ倒すコンラッド。  チャリラリラン、と天から鳴り響く。  勇者はレベルアップした。体力その他1アップした。 「おっ!久しぶりに聞く天の声か。しかし【1】とは、相変わらずせこいな」  なんやかんやとモンスターを倒しながら進んだ先、目の間に広大な海の広がる海 岸に出てきた。 「これが海ですか?はじめて見ました」  リリアが目を輝かせて海を見ている。  山々の野原しか見たことがないからである。 「俺もはじめてだ。何せ、城から一歩も出たことがなかったからな」 「ここで休憩しましょう」  コンラッドが勧める。 「賛成!泳ごう、泳ごう!」  ナタリーがはしゃぐ。 「裸になるんですか?」 「馬鹿ねえ、水着があるじゃない」 「水着?あたし、持ってませんし、泳げませんから」 「これ、なーんだ!」  何かを高く掲げた。 「ジャーン!!」  それは【あぶないみずぎ】であった。 「安心して、リリアの分もあるわよ。と言ってもスクール水着だけど、これなら男 の娘のあなたでも着れるでしょ」 「さすが売春婦。それを着て男どもをだぶらかしていたのだな」 「残念ながら、あんたの分はないわ」 「大丈夫。俺はこれで十分だ」  と着替えた姿は、ふんどし一丁であった。  もちろん胸もあらわにプルルンと。 「ちょっと待った!仮にも女の子がそんなもん着るんじゃないわ」  あわてて駆け寄り、勇者のバストをタオルで隠した。 「そうよ。やめてください(悲鳴にも似た声)」  リリアが驚愕するのも当然だ。その身体は自分自身なのだから。 「そっかあ……。俺は全然気にしないが」 「あたしが気にするんです!」 「…………」  コンラッド、固まったまま動かず、声も出せないでいた。  というよりも、目のやり場に困っているようだ。 「ほら、コンラッドさんも目のやり場に困ってるじゃないの」 「なに、見たのか?おいコンラッド。10000Gよこせ!」 「自分で裸になっておいて、それはないでしょ。コンラッドさん気にしないでね。 こいつの病気だから」 「は、はあ……(ため息)」 「しようがねえなあ……。じゃあ、これでいいんだろ」  と着替えたのは、【あぶないビスチェ】だった。 「どうだ!」  と腰に両手を当てて威張るようにしている。 「そんなもの、どこで手に入れたのよ。売ってないわよね」 「大聖堂の隠し部屋のタンスの中で見つけた」 「大聖堂に隠し部屋なんてあったの?」 「盗賊のスキルも持っているからよ。どんな隠し部屋も見つけ出せる得意技だぜ」 「早い話が、盗んだのね」 「何のことはない。宝箱はもちろんのこと、家の中のタンスを開けて、中身を頂戴 するのはRPGゲームの常道じゃないか」 「しかし遊び人のあんたが、なんで盗賊のスキル持ってるのよ」 「簡単だ。女の子の部屋に忍び込むのに必要だから習得したのさ」 「呆れたわね……」 「にしても、大神官も男よのお。女子下着収集癖があるようだ。それとも女装趣味 か?」 「たとえそうであっても、あんたよりはましよ」  とにもかくにも海水浴をエンジョイする一行だった。  そうこうするうちに日が落ちて、適当な場所を見つけて野宿することとなった。  簡易釜土を作って火を焚き、途中で捕まえた獲物を串刺しにして、その周りに刺 して炙る。 「はい、焼けましたよ」  と焼き肉を一向に手渡す。 「ありがとうございます」  それを受け取って礼を言うリリア。 「ところでよお、龍峡谷までは、後どれくらいなんだ」 「そうですねえ……ざっと32万マイラってところですか」  距離感を掴むことも騎士の修行のうちに入っているのだろう。 「32万マイラだとお!もしかして地球一周できる距離じゃないか」 「ちきゅう……ってなんですか?」 「地球を知らないのか?」 「知りませんが……ここはファンタジア大陸ですよね。周りを果てしなく広がる海 に囲まれているという」  解説しよう。この世界の1マイラは、地球世界の1マイルと似ているが、基準は まったく違うので比較はできない。もちろんこの世界は地球ではない。  ここは仮想世界であり、地球平面説が常識となっている世界だ。  いや、こんな話はよそうぜ!ファンタジーに地球物理学を持ち出すな。  というわけで、話を元に戻して先に進めよう。 「まあ、十日くらい歩けば着きますよ」 「いきなり元に戻したな」 「そろそろ眠りましょうか。明日も早いですから」 「そうですね。今夜の見張りは私がやります」 「お願いします」  というわけで、焚火を囲むようにして、見張りのコンラッドを除いて、それぞれ 雑魚寝することとなった。  夜が明けて、目覚める一行。 「久しぶりに良く眠れたわ」  ナタリーがチラと横を見ると、ロープでぐるぐる巻きにされた勇者が横たわって いた。 「おいこら!早く解放しろ!!」 「どうやら今回は、縄ぬけできなかったようね」 「身動きできないように呪縛の魔法かけたんだろうがあ」 「あら、バレてた?」  というと解縛の呪文を唱えた。 「まともに寝返りがうてなくて腰が……痛いぜ」 「朝食が出来てますよ」  夜明け頃から準備良く、飯盒炊爨(はんごうすいさん)をしていたようである。  ちなみに飯盒炊爨とは、おかずなどのさまざまな素材の調理を含めており、ご飯 だけを炊く飯盒炊飯(はんごうすいはん)とは区別される。 「さすがは騎士ね。野戦とかの宿営地などで身に着けたんでしょうね」 「ええ、まあ。そういうことです」 「ご苦労様です」  リリアも起きてきて挨拶を交わす。 「さあ遠慮なく頂きましょうか」  というわけで、早速朝食となった。 「コンラッドさん、眠くないですか?」 「大丈夫です、鍛えていますから。48時間でも起きていられますよ。戦争に駆り 出されれば眠る時間さえ無くなりますからね。 「戦争に出られるのですか?」 「それが騎士の役目の一つですから。侵略者から国や国王を守るためには立ち上が らなければ。 「さすがは騎士ですね。どこかの遊び人には言えないセリフね」 「うるせいやい!」  食事を終え、後片付けも済んで出発することとなった」 「さあ、出発しましょう。目指すは龍峡谷!」  コンラッドが立ち上がり促した。

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