メイドカフェレストラン物語〜キャッスルへようこそ!〜
(5)新人ということで
それから数時間後。
「紹介します。今度新しくお仲間になりました。里美さんです」
メイドカフェレストラン【キャッスル】内。
店長(母親)同席のもと、マネージャーの仁美が、店員一同の前で新人を紹介していた。
もちろん新人とは里美のことである。
メイド服に身を包み、うつむき加減で頬を赤らめている里美。
「かわいい!」
「わーお♪ 食べちゃいたいくらい」
異口同音に、里美の可愛らしさに感嘆していた。
「まだ中学生みたいですけど……? いいんですか」
店員の一人が気がついて質問を投げかけた。
公的な条例などもあるが、一般的にレストランなどでは中学生のバイトを雇えないのが普通である。
そのことを尋ねているのであった。
「もちろん中学生のバイトは雇えませんが、この里美は私の妹です。この冬休みの間、家業手伝いということでウェイトレスをやってもらうことにしました」
家族ということで一同は納得したようだった。
「家業手伝いなら問題はありませんね。なるほど、よく見ますと店長に似ていらっしゃいますね」
「でしょでしょ。この娘は箱入りなんですけど、少しは世間に出してみようと思って……」
似ていると言われて、気をよくしている店長であった。
「この娘のメイド姿、どう思います?」
ついと里美を前に押し出して訪ねる店長。
里美に対する店員達の評価が気になるようであった。
「とても似合っていますよ」
「きっと、来客数が増えると思います」
「でしょでしょ。そうよねえ」
顔を紅潮させて、すっかり悦に入っている。
「店長……いいですか?」
こほんと軽い咳をしてみせて、話題を元に戻す仁美。
「あ、ああ。そうね、続きをどうぞ」
と、母親は場を譲った。
一同を見回してから、シフトの説明に入る仁美。
「それでは、里美さんにはキャッシャーからはじめてもらう事にします。フロアリーダー!」
「はい!」
先ほど質問した店員が一歩前に進んだ。
フロアリーダー。
バイトではない数少ない社員の一人で、メイド達の教育係りを担っており、フロアの責任者でもある。
「いつも通りに、里美さんをお願いします。もちろん私の妹であることは一切考慮しなくて結構です。他のウェイトレス達と分け隔てなく扱ってください」
「判りました」
「里美さん。フロアリーダーの言うことをよくお聞きになって、早くお仕事を覚えてください」
マネージャーとして言葉使いも丁寧に、いつも通りの指示を出している仁美であった。
家族である里美を、他の店員達と同じ立場に置いておこうとする仁美なりの考えのようであった。
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