響子そして(二十一)帰宅
2021.07.25

響子そして(覚醒剤に翻弄される少年の物語)R15+指定
この物語には、覚醒剤・暴力団・売春などの虐待シーンが登場します


(二十一)帰宅

 祖父の迎えのリムジンで屋敷に向かうわたし。
 が……。なぜか里美が付いて来ている。
 わたしを迎えに来たリムジンを見て、乗り込んでしまったのである。
 どうしても資産家の祖父の屋敷を見たいとか言ってね。
 せっかく両親が迎えに来て水入らずの時間を楽しみにしていたろうに……。
 ともかく今夜一晩うちに泊めて、明日自宅にお送りするということにした。月曜代休を含めて三連休なので、一日くらいならいいでしょう。
 里美は車内装備の冷蔵庫やらTVなどいじり回している。座椅子のクッションの具合を確かめようとぴゅんぴょん跳ねたり、かと思ったら窓から首を出したりしている。
「里美、少し落ち着いたら?」
「だって、リムジンだよ。リムジン。一生に一度乗れるかどうかって車だよ」
 そんな里美の様子を、祖父はにこにこと微笑んで眺めている。
 二人が姉妹のように生活していることを聞いて、どうぞご一緒にと誘ってくれたのである。
「ところでおじいちゃん、お父さんはあれからどうなったの?」
「ああ、愛人のところへ行ったのはいいが。所詮、金の切れ目が縁の切れ目。お母さんの財産援助がなくなって、愛人は別の金持ちの男へ鞍替えしたそうだ。酒に溺れたあげくに急性アルコール中毒で死んだよ。馬鹿な男だ。血液違いで離婚訴訟に勝って慰謝料を踏んだくるつもりだったんだろうが、お母さんの貞操が証明されて敗訴して一文も手に入らなかったんだからな」
「以前から愛人を作っていたというのは、本当なの?」
「ああ、そうだ。裁判に勝つために、興信所で調べさせた。間違いない」
「そっか……」
「どうした、あんな奴に同情か?」
「ううん、ちっとも。お母さんの言う事を信じなかったのは、わたしも怒ってるから」
「おまえはお母さんっ子だったからな」
「そ、身も心もお母さん似だからね」
「そうだな……あんな奴に似ているところが一つもなくて良かったよ」
「一つだけあるよ」
「なんだ」
「血液型」
「ああ……仕方がないな……」
「でもわたしの子供はちゃんとしたのが産まれるよ。わたしの卵巣は、Bo型なんだ」
「そうか、奴の血が繋がっていないと考えれば、他人の卵巣というのもいいかも知れないな」
 ゆるゆるとした坂道を登って行った丘の上。
 やがて屋敷が見えてきた。
「ねえ、ねえ。あれがそうなの?」
 里美が車窓から身を乗り出して尋ねた。
「そうよ」
「すごーい」
 花崗岩造りの荘厳な正門を通って広大な前庭から噴水ロータリーのある車寄せへ。
 里美は瞳を爛々と輝かせて雄大な屋敷を見上げている。
「迎賓館みたい!」
「お帰りなさいませ!」
 ずらりと並んだメイド達にびっくり顔の里美。
「すごいね」
 メイド達の中に見知った者はいなかった。
 執事だけが見知っている唯一の人物だった。
「お嬢さま、お帰りなさいませ」
 うやうやしく執事の礼をする。
 もちろん母親の顔を知っているので、母親似のわたしと来賓の里美を間違えるわけがない。
 どうやらわたしが性転換したことを知らされて、女性として扱う事を命令されているようだ。そのためにもわたしが男だったことを知っている古参は暇をだされたようだ。
「お嬢さまだって……」
 里美が、わたしの小脇を突つきながら、囁いていた。
 そういえば、子供の頃はお坊ちゃまとか呼ばれていたような気がするが……。どちらかというと、お嬢さまの方が響きが良いね。お坊ちゃまというのは成り金主義とわがまま坊主というイメージがあるけど、お嬢さまならどこか清楚でおしとやかな雰囲気がある。
「そちらのお方は?」
「わたしの親友の里美よ。同じ部屋で一緒のベッドに寝るから」
 いつも一緒のベッドで寝ているし、別の部屋にすると戸惑うだろうとの配慮だ。
「かしこまりました」
「わたしのお部屋は?」
「はい。弘子様がお使いになられていたお部屋でございます」
 弘子とはわたしの母親だ。その部屋ということは、祖父に次ぐ最上位の部屋になる。つまり正当なる後継者たる地位にあることを意味していることになる。
 一人のメイドが前に出てきた。
「紹介しておこう。響子専属のメイドの斎藤真樹くんだ」
「斎藤真樹です。よろしくお願いします。ご用がございましたら、何なりとお気軽にお申しつけくださいませ」
 とそのメイドはうやうやしく頭を下げた。
「こちらこそ、よろしく」
「響子、公開遺言状の発表は午後十時だ。ちょっとそれまでやる事があるのでな、済まぬが夕食は里美さんと二人で食べてくれ。それまで自由にしていてくれ」
「わかったわ」
 そういうと執事と一緒に奥の方に消えていった。

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11
特務捜査官レディー(二十一)行動開始
2021.07.25

特務捜査官レディー
(響子そして/サイドストーリー)


(二十一)行動開始


「さて仕事だ! そいつの機能説明しよう。と言っても、俺も聞きかじりだから詳しく説明できないがね。真樹ちゃんのことだから、試行錯誤ですぐに覚えてしまうだろうね」
「そうそう。課内にあるパソコンの接続設定とかインストールとかできちゃうんだから」
 確かに言われるとおりにパソコンとかPDAとかの扱い方には強い真樹だった。
 初心者にありがちなのは、ソフトを動かしてパソコンを壊したりはしないか? とか、下手にファイルを削除して動かなくなったとか、余計な心配したり懲りて触るのが怖くなってしまうことである。パソコンは落としてハードディスクなどの機械部分を壊すとかでなければ、ソフトを操作したぐらいでは壊れるものではない。ファイルの削除でも、ゴミ箱の中身を元に戻したり、WINDOWSならシステム復元を実行すればある程度元に戻るものだ。
「たいしたことありませんよ。毎日のようにパソコンに触れている、今時の女の子なら誰でもできますよ」
「まあ、そうだけど。時代の隔世を感じるね」
 ともかくも一応、機能説明を受けて一通りのことは理解できた。
「それで肝心の奴の顔を知っているのは、我々の中にはいないので……」
「いないんですか!? それじゃあ、どうやって」
「まあ、最期まで聞け。以前に覚醒剤の売人を捕らえていて、刑を軽減するから仲買人を教えろということで、協力してくれる奴がいる。その端末にそいつの写真画像がインプットしてあるから、顔を覚えておくんだ」
 端末を操作して売人の写真を表示する真樹。
「ああ、これね。女の人」
「前から言っているように、奴に近づけるのは女性だけだ」
「そうだったわね。この女性に接触すればいいの?」
「いや、逆に知らぬ振りをして、そいつが奴と接触するまで待つんだ。いわゆる泳がせ捜査で、覚醒剤を買い付けることで奴と接触するように手筈が整っているはずだ。そいつが奴と接触し、覚醒剤を受け渡したその瞬間を、麻薬取引の現行犯で押さえるのだ」
「捜査に協力する振りをして、その人が逃げたり逆に相手と結託したりしたら?」
「それはない。彼女が覚醒剤の売人になったのは、奴の属する組織に子供を人質に捕られていて仕方なくやっていたのだ。現在子供はこちらで保護している。今回の件が成功したら、執行猶予処分が付くことになっていて、収監されることもなく子供と一緒に暮らせる」
「司法取引というやつですね。でも日本ではまだ法整備が整ってないですが」
「まあな、いわゆる裏取引というやつだよ」
「なるほどね……結局、当局も彼女を利用しているというわけね。それじゃ、組織と同じじゃない」
「ち、違うぞ! これは……」
 と反論しようとした時だ。
「あ、待って! 挙動不審な女性がいるわ。きょろきょろあたりを窺っている。あ、この写真の人だ!」
「来たか!」
「じゃあ。あたし、行きます」
「おお、気をつけてな。何かあればすぐに連絡するんだ」
「判りました!」
 車を降りて、ホテルに向かって歩き出す真樹。
 胸元には、麻薬取締官を示す目印のブローチを付けている。
 相手もそれに気づいて、おどおどしながらも中へ入っていく。
「さあ、これからが勝負よ」
 と、振り向きざまに指を二本立てて、後方のバンの中にいる同僚にピースサインを送るのであった。
「あの、馬鹿が……遊びじゃないんだぞ」
 頭を抱えて、これからのことを不安に感じる主任取締官なのであった。

囮捜査や泳がせ捜査は、一般の日本警察官には認められていないが、麻薬取締官には例外として認められている。
日本の司法取引については、2014年9月18日に法制審議会で審議されて、2016年5月に改正刑事訴訟法で成立、2018年6月1日より施行。


 売人の後を追うようにしてレディースホテルに入る真樹。
 泳がせ捜査の始まりだった。
 売人を追跡しつつ、近寄る不審人物をチェックする。
「さあて、どんな奴だろうね」
 仲買人の顔を知っているのは、売人だけである。
 まだ時間があるのか、ロビーの応接セットに腰掛けていた。
 彼女が観察できる位置の応接セットに腰掛け、ホテルを出入りする人物をチェックすることにする。
「あたしの知っている人物は来るかな」
 女性警察官時代に担当した麻薬課の犯罪者リストの顔写真が思い起こされる。もちろん自分自身で逮捕した容疑者もいるが、そういう人物に顔を覚えられているとやっかいだ。
「ばれたりしないよね」
 顔を整形しているとはいえ、どことなく面影が残っているかも知れないし……。
 この泳がせ捜査に関わらず、今後の麻薬取締においても、警察官なり麻薬取締官なりの顔を覚えられると、逃げられる確立が高くなって問題なのだ。
 もっとも女性警察官時代においても、実は男性だったことを知る容疑者たちはいないはずだが。
 彼女はまだ動かない。
 その間も、ネット手帳を使って、同僚達と連絡を取り合う。
 まあ、他人目にはインターネットで調べものしている風に見えるだろう。
「あ、動いた!」
 席を立ち、階段を昇りはじめる売人
 エレベーターがあるのに階段を使うのは、精神を落ち着かせるためであろう。エレベーター内は閉鎖空間であり、息が詰まるものである。犯罪に関わるものは、すぐに逃げられるような行動を無意識にとるものだ。
『今、移動をはじめました』
 電子手帳に入力して、同僚たちに知らせる。
『仲買人がどこかで監視しているかも知れないから、慎重に行動してくれ。何かあったらすぐに連絡してくれ』
 すぐに返信メールが返ってくる。
『了解しました』
 電子手帳を閉じて、ショルダーバックに納めて、売人の後を追いかける。
 警察時代にも囮捜査に何度も借り出された経験もある。尾行の方法とか注意点とかを叩き込まれた経緯があるから、その経験をここでも発揮すればいいのである。
 まず一番大切なことは、それぞれの階の見取り図をしっかりと把握しておくこと。
 取引の行われる化粧室を中心として、エレベーターや階段(非常階段含む)の位置関係。通路がどのように繋がっているかなど。犯人の逃走ルートは確実に押さえておく。

 化粧室は、その名の通りに化粧をする所である。
 一般的にはトイレも併設してあるが、化粧室だけというホテルもあるので、要注意である。
 敬とニューヨーク観光してた時に、急に用がしたくなってホテルに駆け込んで化粧室に入って驚いたことがあった。
 化粧とトイレは、はっきり区別しておいた方が良い。上品ぶって化粧室はどこですかと聞いたりなんかすると、ほんとにトイレのない化粧室に案内される。トイレに行きたければトイレとはっきりと尋ねるべきである。
 おっと横道にそれた。
 何にせよ。トイレではなく化粧室でよかった。
 化粧直しに念入りに時間を掛けられるから、売人や接触してくるはずの仲買人の観察もそれだけじっくりと行えるからである。三十分くらい化粧直しに専念する女性なんかざらにいる。
 もちろん直接眺めたり、化粧室内の大鏡で見ることはしない。あくまで観察は化粧用のコンパクトの鏡を使って、こっそりとばれないように気をつける。
 鏡の中の売人はおどおどとし続けであった。
(あーあ……。あれじゃあ、仲買人に何かあると察知されちゃうじゃない)
 こりゃあ、それと判明しだい即座に行動に出ないと逃げられちゃうかも。
 と思った時だった。
 売人の表情が変わった。
 来たみたいね……。
 コンパクトの鏡の角度を変えて、入ってきた人物の顔を捉える。
(へえ、彼女が仲買人か……)
 ちょっと背が高めの冷たい感じのする女性。
(化粧が濃いわね……)
 一目そう思った。それだけでなく、着ている服にもどこかアンバランスで、今時の女性はこんな着方はしない。ファッションに敏感な女性の目には異様な雰囲気だった。
 まさか……女装してる?
 緊張している売人は気づかないのかも知れないが、明らかに男性が女装しているようだ。

 間違いない! 仲買人は女装した男性だ。

 女性の服を着て化粧し、かつらを被っていれば、人は中身も女性だと思い込む。
 よほどの男性的な顔や姿をしていなければ、堂々と正面を向いて歩いていると、意外と気づかれないものだ。これが女装に自信がなくおどおどとしていると、注目の視線を浴びてしまって気づかれてしまう。
 この仲買人も、気をつけて見ていなかったら、見落としてしまうところだった。

 取締りの現場に駆り出される麻薬課の警察官や麻薬取締官は男性ばかりである。危険な仕事に女性を従事させることはできない。真樹のように志願でもしない限りは。
 女装して、レディースホテルの化粧室を利用することで、安心して麻薬取引ができる。

(考えたわね)

 ゆっくりと注意深く売人に近づいていく仲買人。
「ひさしぶりね」
「は、はい」
「金は持ってきたわね」
「もちろんです」
 バックを開けて中身を見せる売人。
「いいわ」
 二人は小さな声で商談をしている。
 仲買人は、声のトーンを高くし女性らしく振舞っているが、やはり男性の声だ。
 売人は気づいていない。
「どうしたの? 震えているじゃない」
「そ、それは……」
「まさか! サツを呼んだわね」
 気づかれてしまった。
 仲買人は、バックを開けて中から拳銃を取り出した。その際に紙包みがこぼれ落ちる。
 覚醒剤だ!
 これで証拠は挙がった。
「さては、あなたね」
 その銃口がわたしを捉える。
 この化粧室には、その二人を除けばわたししかいなかった。
「言いなさい! あなたは誰?」
 ばれてはしようがない。

 彼女の持っている拳銃は、ベレッタのM1919(25口径)のようだ。小型ながらも装弾数は8発の自動拳銃。対してこちらの持っているのはレミントン・ダブルデリンジャー(41口径)の二発だけ。
 破壊力はデリンジャーだが、弾数と命中精度はM1919の勝ちである。

 絶体絶命のピンチ!

 ……かしら?

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響子そして(二十)遺産
2021.07.24

響子そして(覚醒剤に翻弄される少年の物語)R15+指定
この物語には、覚醒剤・暴力団・売春などの虐待シーンが登場します


(二十)遺産

「どうやら君は、いずれ響子が相続する遺産を狙っているような人間じゃなさそうだな」
「おじいちゃん! 秀治はそんな人じゃありません」
「判っているよ。今まで、お母さんやおまえに言い寄ってくるそんな人間達ばかり見てきたからな。懐疑的になっていたんじゃ。だが、彼の態度をみて判ったよ。真剣だということがな。まあ、たとえそうだったとしても、響子が生涯を共にすると誓い合った相手なら、それでもいいさ。儂の遺産をどう使おうと響子の勝手だ」
「遺産、遺産って、止めてよ。おじいちゃんには長生きしてもらうんだから」
「あたりまえだ。少なくとも、曾孫をこの手に抱くまでは死なんぞ」
「もう……。おじいちゃんたら……」
 ゆっくりと祖父が立ち上がる。腰が弱っているので、わたしは手を貸してあげた。
「秀治君と言ったね」
「はい」
「孫の響子をよろしく頼むよ」
「もちろんです。死ぬまで、いや死んでもまた蘇ってきますから」
「やだ、ゾンビにはならないでよ」
「こいつう……」
 秀治に額を軽く小突かれた。
 わたしの言葉で、部屋中が笑いの渦になった。
「あ、そうだ。遺産って言ったけど、わたしには相続権がないんじゃない? 法定相続人のお母さんをこの手で殺したんだもの」
「遺言を書けばいいんだよ」
「あ、そうか」
「儂の直系子孫は、娘の弘子の子であるおまえだけだ。遺産目当ての傍系の親族になんかに渡してたまるか。まったく……第一順位のおまえの相続権が消失したと知って、有象無象の連中がわらわら集まってきおったわ」
「でしょうね。お母さんが離婚した時も、財産目当ての縁談がぞろぞろだったもの」
「とにかく、今夜親族全員を屋敷に呼んである。やつらの前で、公開遺言状を披露するつもりだ。儂の死後、全財産をおまえに相続させるという内容の遺言状をな。だから屋敷にきてくれ、いいな」
「わたしは、構わないけど。女性になっているのに、大丈夫なの? 親族が納得するかしら。それに遺留分というのもあるし」
「納得するもしないも、儂の財産を誰に譲ろうと勝手だ。やつらに渡すくらいなら、そこいらの野良猫に相続させた方がましだ。それに遺留分は被相続人の兄弟姉妹には認められていないんだ。遺留分が認められている配偶者はすでに死んでいるし、直系卑属はおまえしかいない。遺言で指名すれば、全財産をおまえに相続させることができるんだ」
「へえ……そうなんだ。でも、やっぱり納得しないでしょね。貰えると思ってたのが貰えないとなると」
「だから、儂が生きているうちに納得させるために生前公開遺言に踏み切ったのだ」

「さて、みなさん。全員がお揃いになったところで、もう一度はっきりと申しましょう」
 英子さんが切り出した。全員が注目する。
「響子さん、里美さん、そして由香里さん。三人には、承諾・未承諾合わせて真の女性になる性別再判定手術を施しました。それが間違いでなかったと、わたしは信じております。もちろん秀治さんのお言葉ではありませんが、将来に渡って幸せであられるように、この黒沢英子、尽力する所存であります。わたしは、三人を分け隔てなく平等にお付き合いして参りました。今後もその方針は変わりません。そこで提案なのですが、三人同時に結婚式を挙げてはいかがでしょうか? もちろん里美さんの縁談がまとまり次第ということになります」
「賛成!」
 里美が一番に手を挙げた。そりゃそうだろうね。
「しかし俺達の日取りはもう決まってるんだぜ」
 と、これは英二さん。
「延期すればいいわよ。あたしも賛成です。あたしだけ先に挙式するの、本当は気が退けていたんです。三人一緒に式を挙げれば、何のわだかまりもなくなります。だってあたし達仲良し三人娘なんですから。いいわよね、英二さん」
「ま、まあ、おまえがいいというなら……英子の発案でもあるし」
 相変わらず英二さんは、由香里のいいなりね。
 で、わたしはと言うと……。
「わたしも、秀治さえよければ、三人一緒で構いません」
「ああ、俺はいつだっていい。明人として、一度は祝言を挙げているから」
 というわけで三人娘の意見は一致した。
「それでは、親御さん達は、いかがでしょうか?」

「わたし達は構いませんよ。どうせ縁談が決まるのはこれからです。反対にみなさんにご迷惑をかけるのが、心苦しいくらいです」
「儂も構いませんよ。秀治君の言った通りです」
 というわけで、わたし達の三人同時の結婚式が決定した。
「はい」

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