思いはるかな甲子園~練習試合~
2021.06.21

思いはるかな甲子園


■ 練習試合 ■

 河川敷き野球グランド。
 練習を続ける野球部員達。
 副主将の武藤が指揮を執っている。
「よし、六四三のダブルプレー!」
 おお! という内野手の返事。
「順平、内角低めに投げろ!」
「はい!」
 ピッチャーマウンドに立つ順平が、指示されたコースへ投げ入れる。
「いくぞ、ショート」
「よっしゃー」
 順平が投げ入れたボールを確実にヒットしてショートへ運ぶ武藤。ボールを確実にヒットし、打ちわけのできる武藤ならではの練習方法であった。もっとも相手がバッティングピッチャーであり、コースも判っているからできる芸当である。順平にしても、指示されたコースに放りこむことのできる技力が、かなり備わってきていた。

 グランドの隅で投球練習している梓。その相手役の捕手を務めていた田中宏にむかって、そばで見ていた山中主将が伝える。
「宏! 梓ちゃんをマウンドに上げろ」
「あいよ」
 宏ボールを梓に軽く投げ返して、
「梓ちゃん、出番だよ」
 それを受け取って答える。
「はーい」

 それまでバッティングピッチャーをやっていた順平がマウンドから降りながら、声をかけてくる。
「頑張ってください」
「うん」
 軽く答える梓。
 そして熊谷相手に投球練習を開始する。
「梓ちゃん、しっかりね」
「ファイト!」
 部員達からも声援がかかる。
 それに軽く手を振って答える梓。
 順平は、球拾いのため外野の奥に回る。
「うーむ……梓ちゃんがマウンドに登ると、みんなの表情がしまってくるなあ」
 バッターボックス後方で梓の投球を見ている武藤に山中主将が語りかける。
「梓ちゃんにいいところ見せようって魂胆みえみえですけどね」
「まあ、それでもいいさ。練習に身がはいってさえいればな」
「しかし、ほんとにいいんですかねえ。女の子に投げさせて」
「しようがないだろう、梓ちゃん以外にまともにピッチャーつとまる奴、いねえんだからな。ピッチャーなしでどうやって練習しろってんだよ」
「そりゃそうですが……一応、順平はピッチャーなんですけどね」
「ありゃ、だめだ。まだまだ、バッティングピッチャーにしか使えん」
「やっぱし……」
「スピードとコントロールはまあまあになってはきているが、バッターとの駆け引きでは、梓ちゃんの足元にも及ばない」
「そうですね。梓ちゃんはスピードはないですが、コースを的確についてきます。相手が打ち気を起こさせるようなコースなのでつい手を出してしまいますが、手元で急激に変化します。あれじゃ、なかなか打てませんよ」
「そうだな。相手の好きな打撃ポイントを知り尽くしていなければできない芸当だ」
「ええ。仮に当てても、球速がないですから真芯で捉えない限り、ぼてぼてのゴロか、内野フライがせいぜいです」

 がやがやとグラウンドに入ってくる城東学園野球部選手達。
 その中には超高校級スラッガーと称される沢渡慎二の姿もあった。
 今日は城東学園との練習試合だったのである。
「キャプテン。城東の連中がきたようです」
「おう、やっと来たか」
 城東学園野球部は、マウンドにいる梓を見て怪訝な顔をしている。
「見てください、キャプテン。マウンドのピッチャー、女の子みたいですよ」
「おい、おい。まさか、女の子が投げるってんじゃないだろうな」
「……みたいですよ」
「ちっ。なんてところだ」
 山中主将が出迎えて、挨拶する。
「わざわざお越しいただき、恐縮です」
「ところで女子が投げておるようですが」
 城東の金井主将が質問する。
「はあ、何せ部員不足でして……お許し願えませんか」
「まあ……、練習試合ですから、それは構いませんが。大丈夫なんでしょうなあ、あの子」
「その点でしたら、ご心配なく。選手としては部員の中でもピカ一ですから」
 それを聞いていた部員達が陰口をたたいていた。
「ピカ一だとよ。女の子がピカ一なら他の男はなんなんだよ。くずってことじゃないのか」
「ははは」
 その時、沢渡が進み出てくる。
「いいじゃないですか。やらせてみたら」
「沢渡」
「男にまじって女の子がどこまでやれるか、見てみましょうよ。どうせ練習試合だし、せっかくやってきたんですから」
「まあ、そりゃそうだが」

 城東の会話を聴いていた武藤が、山中主将に耳打ちする。
「やつら、梓ちゃんのことさんざん言ってましたよ」
「ふん。そのうちほえづらをかくことになる」
「といってもうちの守備がねえ……」
 ぽろぽろと球をこぼしている内野手達。
 頭をかいている山中主将。
「あったくう……みんな緊張しているな」
「仕方ありませんよ。部員不足でまともな試合してないんですから」
 武藤が言う通り、部員が多ければ紅白試合として、実戦に即した練習ができるのだが、総勢十三名ではどうしようもない。他校との練習試合が唯一の実戦経験となっている。
「しかしまだ試合もはじまっていなんだぞ。今からこれでどうする」
「相手は、甲子園優勝高校ですからねえ……」
「馬鹿いえ、浩二が生きていれば、本当はうちが甲子園優勝していたかも知れないんだぞ」
「といっても浩二君一人で勝ち進んでいたみたいなもんですから。全体的な実力はどうも……」
「言うな!」
「何にしても、城東がよく遠征の練習試合を受けてくれたものです。優勝高ですから、他の高校からの申し出が殺到していて、スケジュールが一杯でしょうに。本来ならこちらから相手校に遠征するのが常識なはずですがね」
「う……ん。俺も不思議に思っていた。マネージャーとして試合を申し込んできた梓ちゃんの可愛さで押し切っちゃったのかな」
 といいながら梓に視線を送る山中主将。

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思いはるかな甲子園~父親の助言~
2021.06.20

■ 父親の助言 ■


 J.シュトラウス2世「美しく青きドナウ」

 とあるホテルのレストラン。静かなクラシックの音楽が流れている。
 食事をしている梓親子。
 フランス料理のフルコースに舌鼓を打つ梓。
 父親は、社長令嬢としてふさわしいマナーや、身のこなし方などを経験させるためにホテルのレストランでの食事や、社交パーティーなどにドレスアップした梓を連れ出していた。
「野球部に入ってマネージャーをやっているそうだな」
「うん」
「部員達とはうまくやっているかい?」
「うん。みんなやさしくしてくれるよ」
「だろうなあ。梓は可愛いからな」
「そんな……」
 娘が野球部に入ったと、母親から知らされて少し驚いた父親であったが、野球のことに関しては理解があるので、マネージャーならと許していた。
「ところで今年の栄進高校は行けそうかな?」
「ん……、どういうこと?」
「ほら去年は決勝戦まで行ったじゃないか。マネージャーならその辺のことも把握しているんだろう?」
「うん。でも、どうかなあ……」
「問題があるのかい」
「そうなの。ピッチャーがいないのよ。一年生の順平君にはまだ荷が重すぎるだろうし」
「そうか……。一年生じゃ、夏の大会を乗り切るだけの体力もついていないからなあ。夏の大会は、技術力以前に体力が勝負を分けることも多いんだ」
「あたしが投げられれば、継投策で何とかなるかもしれないけど。女子は選手にはなれないから」
「もちろんだよ。去年のピッチャーがあまりにも強すぎて、控え投手を育てるのを怠ったつけが、今になって回ってきたというところだろう」
「そうなのよ。お父さん、どうしたらいいと思う?」
 梓は、甲子園に出場した事もある父親に、何かにつけて相談していた。野球には造詣の深い父親であり、可愛い娘の相談には真剣に答えてあげていた。
「ただこれだけは言えるよ。野球は九人でやるものだ。まともなピッチャーがいなければ、他の野手全員でカバーしてやればいいんだよ」

 その夜。
 自室で勉強している梓。ドアがノックされる。
「お父さんだよ。入っていいかい?」
「うん。いいよ」
 許可を得て、父親が入ってくる。
「こんな時間になあに?」
「お父さんが出場した高校野球県大会決勝と、甲子園一回戦の記録ビデオを持ってきたんだ」
「記録ビデオ?」
「ああ、参考になるかと思ってね。よかったらそれを見て、今後の練習に使えないかと思ったのさ」
「ありがとう、お父さん。じっくり見させてもらうね」
「でも、夜更かししちゃだめだぞ」
 といって念を押しながら部屋を出る父親。
「はーい」
 娘の部屋には居づらいものだし、長居をして気分を害されてもいけない。用件を済ませばすぐに出ていって上げるのが、エチケットみたいなものだ。
 父親が退室して、早速ビデオデッキにセットしてみる梓。
「お父さんの好意は受けてあげなくちゃね」

 ところで受け取ったものは「ベータ方式ビデオカセット」であった。
 今時の若者はベータってなに?
 と、なるだろう。
 父親の高校生時代、今から30余年まえには、スマートフォンはおろかデジタルカメラすらなかった。
 家庭用映像記録媒体といえば、VHS-Cかベータないしは8ミリビデオである。
 重いカメラを抱えながら、子供の成長記録を撮っていた。
 時代の変化には驚かされるものだ。

 さて、ベータカセットであるが、これを再生できるビデオデッキはちゃんとある。
 父親が無類のベータ信奉者だったので、書斎には豊富な映画ライブラリーがベータで揃っている。
 梓は、たまにそれらを借りて鑑賞するために、ベータデッキを自室に置いていた。

 梓は、甲子園に出たという父親に対して、尊敬の念を抱いていた。もちろん浩二としても、自分が成し得なかったことで、思いは同じである。

 TVの画面には、ピッチャーズマウンドに立つ高校時代の父親と、グランドを駆け回る野球部員達が映し出されていた。
「ふーん……。お父さんは、打たせてとるタイプね」
 ランナー一塁で、三遊間へのゴロの場面であった。
 サードが球を拾って、二塁は間に合わないと判断したピッチャーの支持に従って、ファーストへ送球する。
 そこまでは当然の動きであるが、その他の野手達の動きに驚かされる梓であった。
 ライトは一塁送球がそれた場合に備えて一塁ベース後方に回りこんでいるし、センターは二塁送球の際のカバーに入っている。そしてレフトもサードがボールを処理するのを見届けてから、一塁ランナーを三塁で刺すためのカバーに入っている。ファーストはランナーが一塁ベースを踏んだのを確認してから、離塁したランナーの後を追う。
 立ち止まっている野手は一人もいなかった。全員がボールを処理する守備のカバーに走りまわっている。ランナーがいない時には、捕手までが打者が球を打つごとに、全速力で一塁カバーに走っているのだ。これは相当疲れるはずなのだが。
 内野安打にしろ外野飛球にしろ、打球が飛んだコースと飛距離、ランナーとの位置関係、それぞれに即応した完璧な動きを、すべての野手が見せていた。
 ヒットを打たれるのはしようがないとしても、三塁打となるところを二塁打に、二塁打を単打にするべき守備陣の動きであった。
 プロなら当然の動きだろうが、高校生レベルでこれだけの動きは中々できるものではない。
「うーん。相当の練習を積んでいるんだろうな……」
 さすがに甲子園に出場するチームだけのことはあると感心した。
「全員野球か……」
 ふと時計を見ると午前二時を回っていた。
「おおっと、いけない。今日は、これくらいにしておこう」
 朝になって、寝不足の顔を父親に見せるわけにはいかない。夜更かしはだめと念押しされている。
 父親は、朝食時に娘の顔色などの健康状態を確認してから出社している節がある。社長だから出勤時間には余裕があるのだ。

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思いはるかな甲子園~お邪魔虫2~
2021.06.19

思いはるかな甲子園


■ お邪魔虫2 ■


 校庭の片隅にあるベンチに梓と絵利香、そして順平が座っている。
「なあんだ。そういうわけだったの」
 順平からことの成り行きの説明を受ける梓と絵利香。
「その神谷さんていうのが、キャプテンの幼馴染みでね、表面的には喧嘩ばかりしていますが、内心だかは好き合っているというもっぱらの噂ですよ」
「へえ、そうなんだ」
「仲がいいほど、喧嘩もよくするってよく言うわよね」
 絵利香が右指を頬に軽くあてて空を仰ぐように呟いた。
「でもさ。ボクが来る以前はそんなに汚かったんですか?」
「え、まあその通りです。」
「ふうん……ヌードポスターとかが壁に貼ってあったりとか?」
 順平の顔色を伺いながら尋ねる絵利香。
「そ、そうです」
「ポスターくらいならいいんじゃないかなあ。普通の男の子なら当然のことじゃないの」
 かつての野球部部室の実情を知っているし、男の子の気持ちを痛いほどに理解している梓ならではの言葉である。
「まあ、いろいろと部員で相談して決めたことです」
「そっかあ……」
 ふと空を見上げ、片手で掻きあげた長い髪からほのかな香りが漂う。


 部室でたむろしている部員達。
「しかし梓ちゃんがマネージャーになって、本当によかったなあ。俺達運がいいよ、この間の風紀委員会の部室検査の時だってさ」
「ああそうだ。かわいい声でボクなんていうところが、ぞくっとして快感だよな」
「スタイルもまあまあだし、おめめぱっちりでかあいいしなあ。ちょっと胸が小さいけど……」
「馬鹿野郎! 本人の前でそれだけは絶体に言うなよ。怒ってやめられたらたいへんだ」
「女の子は胸の大きさじゃねえ」
「妹にしていつでも一緒にいたいよ」
「おめえの妹、ひでえもんな」
「ああ、ひでえ」
「あ、こいつ梓ちゃんの写真持ってやがる」
「何! 見せろ」
「いつのまに取りやがったんだ」
「おい、いつまでさぼっているんだ。練習時間はとっくに始まっているぞ」
 いつのにか入ってきていた主将が一喝した。
「それがこいつ、梓ちゃんの生写真を隠し持っていたんだよ」
「馬鹿やろう。俺にも焼増してくれ」
「キャプテン!」
「冗談だよ。さあ、はじめるぞ」
「はい!」

 数週間後のファミレス。
 端末を持ってオーダーを受ける梓。
 その表情は暗くて硬い。なぜなら……。
 テーブルには常連客となった野球部員達がいるからだ。
 今日の面子は、武藤・熊谷・安西、そして郷田である。家が金持ちで財布に余裕がある武藤は必ず来ている。反対に一度も顔を見せないのが、家がすし屋のため手伝いで、配達・集金の出前持ちに駆けずり回っている山中主将。もちろん家業手伝いのために、彼にはバイク乗車許可証が学校側から発行されている。
「あ、俺は、ハンバーグステーキ。ライス大盛りね。あと、やまかけそば」
「俺は、ギョウザとオムライス。天ぷら味噌煮込みうどん」
「チャーシューラーメンに牛丼大盛り」
「カツカレーにちゃんぽん麺」
 何度か通って、梓達のタイムスケジュールや担当テーブルを把握してしまった部員達。あまり迷惑を掛けないようにとの配慮で、昼食時間帯を外してくれているとはいえ、迷惑なことには違いない。がしかし、お客様はお客様。丁寧至極に応対する梓達。
 しかし食べ盛りの男子野球部員。そのオーダーはライス物と麺類という組み合わせで、ほとんど二人前である。さすがにこれには驚かされる梓だった。実は、梓が浩二だった頃には、三人前をぺろりと平らげていたのだが、すっかり記憶から消えている。
(どうでもいいけど、懐具合は大丈夫なのかしら? コンビニでバイトしてる先輩も多いけど)
 ファミレスだから、お値段はわりとお手頃価格になっているとはいえ、数日に渡って来店していりゃ、財布も底をつく。それでバイトの日数を増やして、稼いでいたとしたら本末転倒である。そんな暇があったら野球の練習でもしたほうが良い。

 お邪魔虫ではあるが、彼らもコンビニなどでバイトしている者もいるせいか、仕事中の梓達に話し掛けてはいけないという節度はわきまえているし、
「ウェイトレスさん! スプーン落としたので取り替えてください」
 というように、「梓ちゃん」などと馴れ馴れしく個人名で呼んだりもしない。
 ただ素敵なユニフォームを着て、かいがいしく働く可愛い姿を見るだけで満足しているようだ。


■ 梓、投げる ■


 梓がきてからというもの、身をいれて練習に励むようになった部員達。
 梓にいいところを見せようという不純な動機はみえみえだが、それはそれでよしとして、あえて問わないことにされた。
 グランドの隅で、控え捕手の田中宏と投球練習している順平のそばに梓が歩み寄ってきた。
「ねえ、順平君」
「何でしょう?」
「ボクにも投げさせてくれない?」
「え! 梓ちゃんが?」
「うん」
 とにっこりと微笑んでみせる。
「しかしねえ……」
 その時、山中主将が歩みよってくる。
「どうした?」
「梓ちゃんが投げてみたいっていうんですよ」
「梓ちゃんがか」
「一度投げてみたかったんだ、ボク。おねがい」
 と、両手を胸の前で合わせて拝むようなポーズを取る梓。
「まいったなあ」
 山中主将、頭をかいている。
 いつのまにか、他の部員達も集まってきていた。
「キャプテン。いいじゃないですか、投げさせてみたら」
「うん。どうせならマウンドから打者を入れて投げさせて欲しいな」
「バッティングピッチャーやりたいの?」
「うん。お願い」
 精一杯の笑顔を見せる梓。
「しょうがないなあ。でも三球だけだよ」
 可愛い顔でお願いされては、山中主将もかたなしといった表情で許可せざるを得なかった。
 バッターボックスに打者を立たせて、マウンドに登る梓。
 山中主将が、打者の安西清に耳打ちする。
「いいか、相手は女の子なんだからな」
「わかってますよ。間違っても梓ちゃんのところには打ちませんよ」
「ああ、万が一でもかわいい顔にボールをあてて傷つけたら大変だからな」
「まかせてくださいよ」
 といってバッターボックスに入る。
 捕手の熊谷大五郎がおおげさなジェスチャーでミットを構えて見せる。
 正捕手は山中主将であるが、バッティングピッチャー相手には熊谷が受け止める。
「梓ちゃん。ここだよ、ここね」
 ミットを構えて右手でそのど真ん中を指し示す熊谷。
「はーい」
「おい、安西」
 そして打者に声を掛ける。
「なんだよ」
「わざと空ぶりなんかするなよ」
「馬鹿、そんな梓ちゃんの機嫌をそこねるようなことするわけないだろ」
「それならいい」

 梓、ゆっくりと投球モーションに入る。
「ん……?」
 投球モーションを見て驚く山中主将。
 右手投げ、アンダースローの体勢は、しっかりとしたフォームをしており、プレートを踏んでいる右足を支点としての重心移動には、実に滑らかで寸分のよどみもなかった。
 梓の手を離れて、ボールは円弧を描いて捕手のミットに吸い込まれた。
「馬鹿な!」
 驚いたのは山中主将だけではない。捕手も打者もが魔法を見せられたように呆然としていた。
「おい、今の……」
「あ、ああ」
 ボールの返球を催促する梓に返球する熊谷。
「じゃあ、後二球ね」
 第二球目。
「やっぱり、カーブか?」
 第三球目。
「三度も見逃す俺じゃねえ」
 しかし、バットは宙を切り、ボールはミットに吸い込まれていく。
「スライダー!」
「馬鹿なこの俺が三振だなんて」
 信じられないという表情でバッターボックスから離れる安西。

 全員が狐につままれたような表情をしている。
「ねえ。梓ちゃん、もう少し投げてみてくれないかなあ」
 我に返った山中主将が進言した。
「いいよ」
 代わってバッターボックスに入る郷田。
「おい。今度は、ちゃんとミートして打ち返してみろ」
 山中主将が声を掛ける。
「わかりました」
「ただし、梓ちゃんのところだけには飛ばすなよ」
「わかってますよ」

 ゆっくりとしたモーションで投球する梓。
 球はまっすぐど真ん中コースを進んでいく。
 球速が遅いのを見越してじっくりためてからバットを振り降ろす郷田。
 バットは真芯をとらえ、球は梓めがけて直撃する。
「しまったあ」
「いかん!」
 打球は梓を直撃するコースで飛んでいく。
「梓ちゃん、よけて!」
 全員が悲鳴のような声を出して叫ぶ。
 内野手全員が、梓をかばうがために一斉にマウンドに駆け寄っていく。

 梓は、迫り来る球に対して、目をカッと見開いたかと思うと、パシッとそれをグラブで受け止めて、軽やかなフォームでボールを一塁へ送球しようとする。がしかし、一塁はがら空き、ファーストはすぐそばにいた。これでは投げようにもなげられない。
「しようがないなあ……」

 日が暮れはじめている河川敷き野球部グランド。
 帰り支度をはじめている梓。
「じゃあ、キャプテン。後よろしくね」
「ああ、ごくろうさま」
「なんだ、もう帰るのか」
 武藤が尋ねた。
「うん。今日はお父さんとホテルで食事なんだ」
「ふうん。親娘水入らずってやつか」
「それに最近うるさいんだ。女の子があんまり遅くまで部活するのよく思ってないみたい」
「そうか、一人娘だもんな」
「うん。じゃあね」
「またな」

 グランドを立ち去る梓に視線を送っている部員達。
「女の子はいいですね。早引けできるから」
「あたりまえだ。風紀委員長の神谷さんに知れたら、また一悶着ものだぜ。生徒会規則のえーと……何条だったかな」
 頭を抱える木田に、順平が答えた。
「第二十二条の第四項、クラブ活動における女子生徒に関する条項ですよ」
「おお、それそれ。女子生徒は午後六時以降は顧問教諭の許可を受け、なおかつ午後八時以降の活動を禁止する……てやつだ」

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思いはるかな甲子園~お邪魔虫なお客
2021.06.18

思いはるかな甲子園


■ お邪魔虫なお客 ■


J.シュトラウス二世「喜歌劇・こうもり」序曲

 軽やかな曲の流れる店内。
 かいがいしく客の接待を続ける梓と絵利香。
 今日はファミレスのバイトの日である。
 ファミレスの表で、窓から中を覗いている栄進の野球部の面々がいる。
 武藤、城之内、木田、郷田の四人である。
「おい、本当にここで梓ちゃんと絵利香ちゃんが、アルバイトしているのか?」
 武藤が郷田に確認している。
「間違いないですよ」
 女子生徒に関しては、独自の情報網すら持っているという郷田ならではのこと、梓達のことはすでにお見通しである。
 特に可愛いユニフォームで有名なこの店は、軟派野郎の重要チェックポイントなので、ウェイトレスが新しく入ったなどというニュースは、逸早く情報網を通じて多くの男共の知れ渡るところとなる。

「いらっしゃいませ!」
 武藤達が入ってくるなり、一斉にウェイトレスが挨拶する。
「今、梓ちゃんと絵利香ちゃんの声が聞こえたが……」
 きょろきょろと店内を物色するように入ってくる武藤達。
「いたあ!」
 三園先輩がそばで見守るなか、一所懸命にキャッシャーを務めている梓。
 キャッシャーの操作に夢中で、武藤たちのことには気づいていない。武藤たちが耳にした声も、他のウェイトレスが掛けた挨拶に同調して出したものである。
 釣り銭を間違えないように慎重に、声ははっきりと明瞭にだして、かつ笑顔は絶やさずに、応対は素早くしてお客さまを待たせない。
「梓ちゃんは、レジ係りか」
 正確にはレジ(レジスター)ではない。携帯端末によるオーダー時点で、すでに注文商品から清算金額まで、ホストコンピュータ側で処理されているので、端末から打ち出されたオーダー伝票のバーコードを、読み取り機にかざすだけで清算金額及び参考釣り銭がディスプレイに表示される。システムダウンした時のために一応レジスター機能は持っているが、通常は釣り銭ボックスの開閉釦ぐらいしか使用しない。だからレジとは言わずにキャッシャーと呼び慣わされている。
「絵利香ちゃんもいますよ。ほらあそこ」
 フロアの片隅で、大川先輩のレクチャーを受けながら、オーダー用の携帯端末の操作の確認をしている絵利香。この端末、液晶タッチパネル方式で、一台が二十万円するというから、落としては大変とついつい慎重にならざるを得ない。
 もっともこの店では、顧客自らがスマートフォンを利用して直接注文が出せるようになっている。
 メニューに印字されているQRコードをバーコードリーダーで読み取ると、店舗の注文システムに直接アクセスできる。
 注文メニューには、
【注文する】【注文履歴を見る】【店員を呼ぶ】
 などが並んでおり、クリック一つで注文や何を注文したかを確認できる。

「絵利香ちゃん、こっちに来ないかなあ」
「どうですかね。テーブルごとに担当が分かれていると思いますから」
「へたに声を掛けない方がいいですよ。何せ仕事中ですからね。それに入店したばかりで、右も左も判らない状態で緊張の連続のはずです」
「そうそう。黙って遠くから見守ってあげなきゃ」
「それにしても、似合ってますね。二人のユニフォーム姿」
「ああ、ふりふりのミニドレスだけに、可愛い二人にはぴったりだよ」
「女の子って、制服のデザインの善し悪しで、アルバイトとか学校を選ぶ風潮があるといいいますけど、二人の好みに合ったのでしょうかね」
「少なくとも、俺達の目には合っているのは確かだ」
 結局、絵利香は来なかった。
 別のウェイトレスがオーダーを取りにきた。とはいっても、その彼女だって梓や絵利香ほどではないが、結構可愛かったりする。
 この店のウェイトレスの選考基準は、ユニフォームが似合う可愛い女の子というポリシーがあるようだった。


■ 部室検査 ■


 数日後。
 部室に入ってくる山中主将。
「お! ずいぶん部室がきれいになっているな。ごみ一つ落ちていないじゃないか」
「そりゃ、梓ちゃんに汚い所を見られたくありませんからね。梓ちゃんにも部室に入ってもらえるように、一所懸命きれいにしました」
 郷田が答える。どうやら率先して部室の清掃を言い出した本人のようだ。
「ほう、どうりでヌード写真ポスターもかたずけられているわけか」
 ポスターを剥がした後が壁に残っているのを見て言った。
「可愛い女の子を迎えるためには、清潔一番ですよ。清純なイメージの梓ちゃんにはそぐわないとの全員一致の意見で、すべてのポスターからロッカーの中の雑誌に至るまで、すべて処分しました。もちろん机や椅子もぴかぴかに磨いて、梓ちゃんが腰掛けても制服が汚れないようにしました」
 女の子を口説く事にかけては野球部一の軟派男の郷田だ。身ぎれいにしていなくちゃ女の子を誘う事はできないことを良く知っている。
「はん……そういうわけか。まあ、よしとしよう」

 昼休み。一年A組の教室。
 並んで弁当を広げている梓と絵利香。
 そして何故か、山中主将が尋ねてきている。
「……というわけで、順平と一緒に練習試合の相手校を探して欲しいんだ」
 山中主将は、何かにつけて直々に梓に頼み込んでいた。順平に話しをするのはいつも梓の後である。
「いいですよ」
「ありがたい」
 そこへ血相変えた野球部員の木田が飛び込んでくる。
「キャプテン! やっぱり、ここにいたんですか」
「何だ、あわてて」
「風紀委員会による、一斉抜き打ち部室検査ですよ」
「抜き打ち部室検査だとお」
「はい、今野球部の部室をチェックしています。それでキャプテンに部室まで来ていただきたいと」
「ったくう……正子の野郎、風紀委員長になったのをいいことに、権限を笠に着やがって……しかも校長に取りいって生徒会規則の第23条・第3項とかに部室使用許可の取消しに関する条項を加えやがった」
「それって、クラブ部室に風紀違反となるようなものを持ち込んだり、不正使用したりした場合には、風紀委員長の意見具申をもとに、校長がその使用を禁ずることができる。ってやつでしょう」
 木田が確認する。
「その通りだ。この間それで柔道部が二週間の使用不許可の決定を下されたよ」
「なんですか? その部室検査って」
 梓が尋ねると、
「いや、梓ちゃんが心配する事はないよ。ゆっくり、ごはんを食べていてくれ」
 といって、足早に教室を出ていった。

 野球部部室前。
 腕に腕章を付けた数人の風紀委員が扉の前にたむろしている。
 山中主将が駆けつける。
「山中君。遅いわよ」
 風紀委員長の神谷正子が口を開いた。
「また、あくどいことをしているな」
「あら、あくどいだなんて変な言いがかりはよしてよね。私達は学校の風紀を守るために日夜努力しているのだから。感謝されることはあっても、悪態をつかれる筋合いはないわ」
「何が感謝されるだ。だれもおまえになんか感謝しているものなんか一人もいないぞ」
「あらそうかしら。女子生徒の間では、これでも尊敬されているほうなんだけど」
 風紀を乱すのは圧倒的に男子が多い。それを取り締まるのだから、女子から頼りにされるのは当然と言えた。
「はん、勝手にほざいてろ。いつか天罰がくだるぞ」
 部室の中から数人の風紀委員が出てくる。
「委員長。さしあたって風紀を乱すようなものは、何一つ見つかりませんでした」
「なんですって! 何一つ?」
「はい。ポルノ雑誌の類からタバコ類にいたるまで、一切です」
「そんなばかな! ちゃんと見たの」
「隅から隅まで確認しましたが、何一つ発見できません」
「どういうことよ」
「わかりません」

 木田が山中主将に耳打ちしている。
「先日、大掃除したかいがありましたね」
「ああ……大正解だ。たまには郷田も良い事をするな」
 神谷、爪を噛むしぐさで悔しがっている。
「いいわ。次のクラブにいくわ」
「おい、たったそれだけかい。他人の部室を掻き回しておいて、他にもっと気のきいたセリフはないのかよ。しかもこの昼飯どきにわざわざ」
「お騒がせ致しました! 引続き部室をお使いください。今後ともこのようにお願いします」
「当り前だ。俺達はいつも潔白だ。なあ」
 山中主将が同意を求めると、
「はい、そうです」
 木田が、きっぱりと答えた。
「失礼します」
 きびすを返すように去っていく神谷とその配下の風紀委員達。
 それとすれ違いざまにやってくる梓と絵利香。
「キャプテン、何かあったのですか? あの人達が、風紀委員ですか?」
 心配するなと言われたが、やっぱり気になって部室を訪れたのである。
「ああ、なんでもない。それもこれも、君のお蔭だよ」
「え? ボクが何かしましたか」
「いやいや、君がいるだけで充分なんだよ。我々の救いの女神さまだ」
「なんかわかりませんけど……」
「いいんだ、深く考えなくても」
 きょとんとしている梓。

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思いはるかな甲子園~野球部へ~
2021.06.17

思いはるかな甲子園


■ 野球部へ ■

 野球部部室。
 練習開始前のミーティングで、部屋の中に集まっている部員達。
「今日も来るかな、あの子達」
「来るんじゃないかなあ」
「いっそマネージャーになってくれたらいいのにね」
「ああ、何にもしなくてもいいから、じっと見守ってくれるだけでもいいよ」
「おまえら、何いってんだ」
 その時、部室のドアがノックされる。
「誰か、来たみたいですね」
「どうぞ、入ってください」
 戸口そばに座っていた二年生の木田孝司が返事をする。
 しかしドアを開けて入ってくる気配がない。
「ん、どうしたのかな。木田、おまえ見てこい」
 木田に向かって命令する山中主将。
「はい」
 木田がドアの所へ行って、扉を開け外を確認する。
 そこには微笑んでいる梓が立っていた。
「き、君は!」
「こんにちは」
 一斉に振り向く一同。
「今の声は!」
「梓ちゃんじゃないのか?」
「なに、梓ちゃん!」
 木田を押し倒してドアに殺到する部員達。
「やっぱり、梓ちゃんだ」
「絵利香ちゃんはきてないの?」
「うん。今日はテニス部の練習」
「あ、そうかテニス部って言ってたっけ」
「で、梓ちゃんは、何しに来たの?」
「うん。キャプテンいますか?」
 部屋の中をちらりとのぞく梓。
「ああ、キャプテンね。いますよ」
 山中主将に視線が集中する。
「キャプテン、梓ちゃんが面会ですよ」
「梓ちゃんだとお。こっちに呼んでこい」
「なにいってんですかあ。かわいい女の子が、こんなむさ苦しい部室の中に、入ってこれるわけがないじゃないですか。キャプテン出てきてくださいよ」
「ったくう……」
 山中主将、しぶしぶ外に出てくる。
 梓を囲むようにしている部員達。
「おまえらなあ……ぼさっとしている暇があったらグラウンドへ行け!」
 右手の拳を振り上げて怒鳴り散らす山中主将。
 蜘の子を散らすようにグラウンドに駆け出す部員達。
「ほれほれ、早く行かんか」
 とろとろ歩いている部員の尻を蹴飛ばして、グランドに押しやる武藤。
「ったく、しょうがない連中だ」
 ぶつぶつ呟きながら、副主将の武藤の采配で一同が練習を始めるのを見届けてから、梓に話しかける山中主将。
「で、キャプテンの山中だけど、僕に何か用かい?」
 部員達に対しては怒声を上げる山中主将であるが、可愛い顔で微笑む梓を前にしては、さすがに口調もやさしくなる。
「はい」
 鞄を開けて中から一通の書状を取り出して主将に渡す梓。
「これは?」
 梓、にっこりと微笑んでいる。


■ マネージャー ■


 しばらくして。
 山中主将に連れられて梓がグランドに入ってくる。
 武藤のノックを受けている部員達。
 梓に気づいた部員の一人。
「おい見ろ、キャプテンだ。あの子を連れてくるぞ」
「もしかしたらさ」
「ああ、たぶんそうじゃないかな」

「みんな集まれ!」
 山中主将が声を掛けると、電光石火の素早さで部員が集まってくる。
「紹介する……といってもおまえらのほうが良く知っているのかもしれんが。今度野球部のマネージャーをやってくれることになった、新入生の梓ちゃんだ」
「やったー!」
「騒ぐな!」
 静まる一同。
「それでだ。うちの野球部のこまごまとしたことを、覚えてもらわねばならんのだがね……」
 一同を見回す主将。
「それだったら、僕が教えましょうか」
 郷田が一番に手を上げた。
「おまえはだめだ、女の子を見るとすぐ手を出す悪い癖があるからな」
「そんなあ……」
「順平!」
「はい!」
 部員の後方から一年生の白鳥順平が出てくる。
「おまえが教えてやれ。同じ一年生同士のほうが連絡をとりやすいし、何かと都合がいいだろうからな」
「は、はい」
 神妙な表情で答える順平。
「以上だ! 練習をはじめろ」
「ちょっとお、自己紹介とかはないんですか?」
「馬鹿野郎! そんな時間があったらノックの一球でも多く練習しやがれー」
「ひゃあ!」
 再び蜘蛛の子を散らすようにグランドに駆け出す部員達。
 くすりと笑う梓。
「とまあ、こういう野球部だけど、よろしくたのむ」
「はい。キャプテン」
「順平、梓ちゃんの入部届けだ。後で学校側に提出しておいてくれ」
 山中主将、入部届けを手渡す。
「じゃあ、後をたのむぞ。やさしく教えてやれ」
 と、言うなりグランドの方へと歩いて行く。
「わかりました」

 二人きりになる梓と順平。
 そばのベンチに腰を降ろして話しはじめる。
「一つ聞いていいですか?」
「なあに」
「どうして野球部のマネージャーなんかになったんですか」
「野球が好きだから。理由にならない?」
「そんなことないと思うけど」
「順平君は野球をどうしてやるの?」
「僕ですか?」
「やっぱり甲子園出場かな?」
「それもありますけど、僕が甲子園を目指すのはもう一つ理由があるんです」
「聞かせてくれるかなあ」
「僕には尊敬する先輩がいたんです」
「尊敬する先輩?」
 空を仰ぐ順平。
「夏の選手権大会県予選準決勝で、優勝候補西条学園をノーヒットノーランで抑えた、長居浩二投手を知ってますか?」
(俺のことじゃないか)
「知っているよ。でも決勝を目前にして死んじゃったんでしょ」
「そうです。僕は中学の時に、長居先輩から投手の手ほどきを受けたんです。ボールの握り方から、変化球の投げ方。セットポジションの構え方とかいろいろとね」
(そういえば、そうだったなあ)
「するとその長居さんという方の意志をついで甲子園を目指しているわけね」
「そうです。でも……ピッチャーとしての能力に自信を持てなくて……長居さんとはまるで才能が違うから」
「そんな弱気でどうするの。才能なんて元々備わっている人なんかほんの一握りしかいないんだから。ほとんどの人が血のにじむような練習を重ねてうまくなっていくんだよ」
「長居先輩と同じ事言うんですね」
「え? あ、いえ」
「まあ、それが道理だと判っているんです。でもね……」
 それきり黙り込んでしまう順平。
(あーあ。しようがないなあ……。浩二だったら「馬鹿野郎! そんな弱気でどうする」とか言って、怒鳴りちらしてやるんだけど)

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