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2021.05.31

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梓の非日常/第三部 神条寺家の陰謀 part-1
2021.05.07

第三部 神崎家の陰謀
ノベルアドベンチャーゲームシナリオ(小説版)


part-1

 目が覚めると、何も見えない暗闇だった。
「ここはどこだ?」
 どうやらベッドの上に寝ているようである。
「くうっ!頭が痛い……」
 どうやら、誰かに催眠剤のようなもので眠らされて、ここへ運び込まれたようだ。
「……」
 思い出そうとするが、何も思い出せない。自分が誰なのか?名前さえも覚えていない。
 いつまでもこうしていても仕方がない。彼は、ベッドを降りて辺りを探り始めた。
「出口はどこだろう?」
 何も見えないので、慎重に足を運ぶ。
「痛い!」
 何かに躓(つまづ)いて転んでしまう。


 ともかく、この現状を打破するためにも、
 調べる以外にないだろう。
 床をまさぐるようにして、
 躓いた何かを触ってみる。
 何か生暖かい物に触れた。
 さらに場所を変えて触っていくと……。
「足だ!」
 人間の足のようだった。
 なんで人間が倒れているのか?
 生きているのか?
「あの、あなた……」
 声を掛けてみるが、返事はない。
 足から胴体へと移っていく。
「服を着ていない?」
 裸のようであった。
 胸のところにきた時、なにかヌメヌメした液体に触れた。
 裸でヌメヌメした液体……。
「血だ! 死んでいる?」
 どうやら、血を流して倒れている。
 驚いて、その身体から離れ引き下がってしまう。


 人死には怖いので、部屋を調べることにする。
 四つん這いで壁際にたどり着いた。
 立ち上がり壁沿いにドアがないか調べはじめる。
 手を一杯に上へ伸ばしたり、
 床付近まで降ろしたりして感触を頼りに、
 丁寧に壁を調べて回る。
 ドアが見つかった。
 しかし鍵が掛かっているようで、
 ドアノブをガチャガチャ動かしてみたり、
 体当たりして開かないかチャレンジしたが、
 びくともしなかった。
 鍵穴らしきものはあった。
「鍵が必要だな」
 念のため四回、部屋の角を回ったが、
 他に出口らしきものは見当たらなかった。
 鍵ならば、床に倒れている人物が持っているかもしれない。
 もう一度、人物を調べてみるしかないようだ。
 人物の所に戻ってみる。
 手探りで調べると、胸にナイフのようなものが刺さっていた。
 やはり死んでいるようだ。
 血液が完全に固まっていないところをみると、
 死んでからそう時間は経っていない。
 結局何も身に着けていないことが分かった。


 他に調べられるとしたら、
「俺の寝ていたベッドか……」
 自分が寝ていたベッドに戻って調べ始める。
 鍵が見つかれば良いが、
 なければせめて明かりが欲しいところだ。
 暗闇の中、手探りでは見つかるものも見つからない。
 布団を退けたり、枕の下を探ったりしたが、何も見つからない。
 つと、つま先にコツンと何かが当たった。
 コロコロと転がる音。
「何だ?」

 音を頼りに、その何かを探し求める。
「確か、この辺で止まったような気がするが……」
 手探りで床をくまなく探すと、それは見つかった。
「百円ライターか!」
 千載一遇(せんざいいちぐう)の好機。
 これの火が点けば現場がはっきりと見渡せるはずだ。
 ただし、遺体の惨状も目に飛び込んでくることになる。
 しかし躊躇していられない。
 ここから出るためには、そんなことは言っていられないのだ。

 無臭の引火性ガスが漂っていたら一巻の終わりだが……。
 しかし、明かりがなければ解決の糸口を見つけることも叶わない。

 ライターの火を点ける。
 真っ暗闇の中に、ライターの火が辺りを照らした。
 床に倒れている人の姿が浮かび上がる。
 どうみても裸で死んでいるとしか思えない。
 人の方には意識しないようにして、周囲を見渡す。
 部屋の中は、殺風景なまでにベッドしかなかった。
 窓はなく、出入り口はあのドアだけなのか?
 そのドアの壁際に照明用のスイッチらしきものがあった。
 暗闇で調べた時には気がつかなかった。

 スイッチを入れて照明が点いたら、 犯人に察知されるかも……。
 そう思ったが、心細いライターの灯りだけでは、物を探すのは辛い。
 スイッチを入れてみると点かなかった。
「電気が通じていないのか?」
 天井の照明に向けて、ライターをかざしてみる。
 蛍光管が入っていなかった。

 ずっとライターを点けていたので、手元が熱くなってきていた。
 ガスが無くなっては大変だ。
 火を消し、ベッドに腰かけて考えることにする。
 これまでのことをまとめてみる。

・そもそも、自分がここに運ばれた理由や経緯。
・そして何より、床に倒れている遺体。
・遺体のナイフはいずれ役に立つかもしれない。
・ドアを開けるには鍵が必要。
・部屋をくまなく捜索するには、やはり天井の照明が重要だろう。
 点くかどうかは不明だが。
・ライターのガスには限りがある。


 考えても分からないので、捜索を再開することにする。
 ライターを点けて、もう一度部屋の中を見渡した。
 ベッドと遺体の他は何もない。
「……? ちょっと待てよ」
 彼は気が付いた。
 遺体から流れ出た血液が、一部途切れていたのだ。
 それも直線的にだ。
 まるで吸い込まれるように……。
 よく見ると床に正方形の溝があり、埋め込み半回転式の取っ手が付いていた。
 台所によくある床下収納庫のようなものではないのか?
 遺体のナイフを不用意に抜いて、さらに血が流れていたら、溝を埋めて気付かなかったかもしれない。
「もしかしたら、この下に何かあるのか?」
 遺体に怖がって注視していなければ、完全に見落としていた。
 ただ、遺体が上に乗っているので動かさなければ、蓋を開けられない。
 触るのは怖いが……。
 遺体を動かして、床下収納庫を調べることにする。

 蛍光管と懐中電灯があった。

 懐中電灯のスイッチを入れると、点いた!
「やったあ!」
 思わず声を出して喜ぶ。
 さらに天井の蛍光灯が点けば、この部屋全体をくまなく調べられそうだ。
 蛍光灯を点けたまま床に置いて、ベッドを蛍光灯の真下に動かし、蛍光管を取り付けた。
 そしてドアそばの照明スイッチを入れた。
「点いたぞ!」
 蛍光灯の明かりが、こんなにも頼もしく感じたことはない。


 ライターに比べれば、眩いばかりの光によって、捜索は捗るかと思われる。
 今まで気づかなったことも明らかになるだろう。
 もう一度念入りに部屋の中を探し始める。
 壁に色が変わっている場所があった。
 手のひらを当てて、右にスライドさせると、中は戸棚となっていた。
「鍵だ!」
 十本くらいの鍵の束が入っていた。
「これで扉が開くか?」
 小躍りしてドアの所に駆け寄る。
「だめだ! 合わない」
 いずれの鍵もドアの錠前には合わなかった。
 消沈するが、鍵は後で役に立つかもしれないと持っていることにした。

「待てよ。床下収納庫って確か……」
 思い出した。
 床下収納庫は、ボックスが外せるようになっていて、
 床下に入れるようになっているはずだ。
 ここにはもう何もないようだ。
 床下に降りることにする。
 ボックスを枠から外して床下に降りる。
 遺体に突き刺さったナイフが目に入った。

 そうだ!
 自分を閉じ込め、殺人を行った犯人がまだどこかにいるかもしれない。
 身を守るためにも、武器は必要かも知れない。
「なんまんだぶ……」
 ナイフを引き抜いた。
 血液がいくらか流れたが、広がるほどではなかった。凝固が始まっていた。

 懐中電灯片手に、床下へと降りる。
 念のために床下収蔵庫の蓋を閉めておいた。
「ここにも遺体がありませんように」
 殺人事件ではよくある話で、床下や天井裏に隠すものだが。
 上の方で、ドカドカと大勢の人間の足音が聞こえて来た。
 どうやら警察官が入ってきたみたいだ。
「人が倒れています! 死んでいます。 なんだこれは! 毒ガスだ、一旦退避しろ!」
 そんな叫び声が聞こえてきた。
「危なかったな。いずれここも見つかるだろうが、しばらくは時間稼ぎができる」
 祈りながら、床下を懐中電灯で照らす。
 這いずり回っていくが、本当に別の出口があるのか心配になってくる。
 そもそも、今は何時なのだろうか?
 昼なのか夜なのか……。
 今のところ完全に閉ざされた空間ばかりなので、外からの光が入ってこないから、判断不能であった。

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梓の非日常/第二部 第二章・宇宙へのいざない(四)衛星追跡管理センター
2021.05.06

続 梓の非日常/第二章・宇宙へのいざない


(四)衛星追跡管理センター

「ははは、ものは試しです、やってみましょう。まずはここに手をついてください」
 所長が示した場所には、ガラススクリーンが輝いている。
「指紋照合機ね」
「指紋照合の後に自動的に網膜パターン照合が始まります。まっすぐ正面を向いていてください」
 梓が指紋照合機に掌をかざすと、ガラススクリーンに揮線が走ってスキャンされ、続いて顔の目の位置にレーザー光線が当たって網膜パターン照合が行われた。
 パネルスクリーンに照合結果が表示された。
「真条寺梓-AFC代表。無監査、進入OK」
 同時に通路に続くゲートが開いて、地下の施設へ降りるエレベーターが現れた。
「地下なんですか?」
「はい」
「ん……」
 梓は、地下施設に閉じこめられた火災事件を思い起こし、足がすくんでいた。あの日以来閉鎖された地下へは降りられなくなっていたのだった。
「お嬢さま、どうなさいます。止めますか?」
 そのことに気がついた麗香が、やさしくささやいた。
「大丈夫、麗香さんが一緒ならね」
 といいながら麗香の手を取り、握り締めてきた。
「わかりました。一緒に参りましょう」
 麗香がその手をそっと握りかえしてやると、安心したように笑顔を見せる梓だった。
 手をつないでエレベーターに乗り地下施設の衛星追跡コントロールセンターに降りる二人。
「網膜パターン照合によるゲート通過承認は、それぞれのゲートごとに登録された者だけが通過できるのですが、お嬢さまだけは無監査承認となっておりますので、すべてのゲートを通過できます」
「研究所の正面ゲートの時みたいに?」
「はい。代表として当然でしょう」
 エレベーターのドアが開いて、目の前に追跡コントロールセンターの全貌が広がった。正面にはメルカトル図法で描かれた世界図に数多くの軌跡が走っている。

「お嬢様、いらっしゃいませ」
 センター長が駆け寄ってきて、挨拶もそこそこに説明を始めた。
「ここではAFCが打ち上げたすべての衛星と、協力関係にあるその他の衛星も追跡しています。なお衛星が地球の裏側などに回っても大丈夫なように、ここ以外にも、スイスのAFCチューリヒ事業部およびブロンクスの航空管制センター内の地下にも同様の中継施設があり、AFCの光ファイバー通信網及び通信衛星『あずさ』の中継で連絡されています。画面をご覧ください。青の軌跡が通信衛星の『あずさ』と赤の軌跡が資源探査気象衛星『AZUSA』です」
『こちらの太陽系が描かれているスクリーンは?』
『惑星探査ロケットの軌道を追跡していますが、こちらのコントロールはブロンクスの方で行っております。一応ここからでもコントロールは可能ですがね』
「そうですか。しかし……平仮名の『あずさ』にローマ字の『AZUSA』って、いちいち紛らわしいわねえ。これって、お母さんが名付けたの?」
「その通りです。ついでに言いますと、漢字表記の『梓』という原子力潜水艦もありますけど」
「あ、それ。乗ったことあるよね。ハワイへ行くときに」
「そうですね。まあ、お嬢さまを思う渚さまの母心とお思いくださいませ」
 センター長は、どうやら太平洋の事件のことを知っているようだ。鍾乳洞に落ちた梓を探すためや、ハープーンミサイル誘導で「AZUSA 5号B機」が使用されているので、当然その運用には追跡センターが関与しているだろう。

「それでは、資源探査気象衛星『AZUSA』に搭載された地表探査カメラを操作してみましょう。丁度六号F機が日本上空を通過中ですので、それを使用します。正面のスクリーンをごらんください」
 宇宙から鳥瞰された日本列島が、スクリーンに大写しされている。
「解像度をあげましょう」
 まるでカメラが地上に接近しているかのような錯覚をふと覚えながら、どこかで見たような町並みと、その中に飛び抜けて広大な敷地を抱えた邸宅が映しだされた。
「あ! あたしの屋敷ですね」
「はい。比較しやすいでしょうから」
 ふと見ると、正面門の前をうろうろと動き回っている怪しげな影に気づく。
「ああ、ここ。もう少し大写しできませんか」
「わかりました」
 やがてスクリーンに拡大投影された人物。
「これで最大です」
 それはまぎれもなく梓につきまとうあの男。
「慎二だ」
「お知り合いですか」
「そんなところです」
 慎二は正面から脇道に回り、しばし壁を見つめていたが、やおら壁をよじ登りはじめた。
「あ、あの馬鹿」
「不法浸入ですね。警察に通報しますか」
「その必要はないでしょう。どうせ、すぐつまみ出されると思うから」
 数分後、正面門からガードマンに襟首をつかまれるようにして慎二が放り出されていた。
「屋敷のセキュリティーが完璧なことは知っているくせに、なんで侵入しようとするかなあ。あの、馬鹿は。ガードマンが慎二の顔を知っているから、追い出されるだけで済んでるけど」
「馬鹿……なんですか?」
「でなきゃ、真っ昼間から塀をよじ登ったりしないでしょ」
「そりゃそうですね」
 と納得している研究員。
「しかし、すごい技術ですね。宇宙のかなたから個人の表情まではっきりと識別できるカメラが開発されていたなんて」
「お嬢様のお名前を頂いている衛星ですからね。技術陣も生半可な気持ちでは開発できません。もちろん打ち上げに際しても、百パーセント自信を持っていました」
 梓と研究員との会話を傍聴しながら、麗香は内心冷や汗ものだった。梓の事を四六時中監視していることは、今なお秘密にしていたからである。
「もう結構ですわ。通常業務に戻してください」
「かしこまりました。では次の場所に移動しましょう」

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梓の非日常/第二部 第二章・宇宙へのいざない(三)野次馬達
2021.05.05

続 梓の非日常/第二章・宇宙へのいざない


(三)野次馬達

 玄関に向かう途中の通路が人ごみで溢れかえっていた。
「こら。おまえら何をしておるか」
「い、いえ。真条寺梓さまがお見えになられていると聞きまして。丁度、休憩中なんで、遠巻きにでも野次馬しようと。はは……」
 さすがに梓の人気は圧倒的なものだった。
 グループの代表に会えるというのは、重役連中でさえそう滅多にあるものではない。ましてや華麗で清楚な十六歳のお嬢さまという噂を聞きつけて、誰しもが一目でも拝見しようと、あちらこちらの部署から集まってきたのである。
「わかった。しかし、あまり騒ぐなよ」
 そんな彼らに愛想うよく、手を振って答える梓。
 さながら敬宮愛子さまがご来訪されたような風景にも似て、カメラまで持ち出してきて撮影しようとする者もいた。
「おい、おまえら。許可なくお嬢様の撮影は禁止だぞ」
「どうしてですか?」
「それは、お嬢様が天使だからだ」
「何ですか、それ?」
「要するにだ。お嬢様はアイドルはじゃないということだ。真条寺グループの総帥たる人物の素顔が世に出ることは避けなければならない。写真に撮れば万が一にも、そのお姿が漏洩する可能性もあるじゃないか。今の世の中、パソコンにデータを置いておけば、いつハッキングされるか判らないからな」
「セキュリティーは万全なのでは?」
「それにだ……。この研究所は、カメラの持ち込み禁止ということを忘れているだろう」
「あ……」
 あわててカメラを隠そうとする研究員。
「遅い! 没収する」
「ああ……」
 カメラを没収されて消沈している。

 梓に近づいて行く研究所所長。
「お嬢様。ようこそ、いらっしゃいました。当研究所所長の角田です」
「はじめまして」
 ぺこりと頭を下げる梓。
「今日はどのようなご用件でお訪ねになられたのでしょうか?」
「いえね。近くを通ったものだから、寄ってみたの」
「そうでしたか、せっかくだから所内を視察されていかれますか? ご案内致します」
「そうですね。お願いします」
 人ごみの中をかき分けて玄関フロアーに現れた人物がいた。篠崎重工社長の姿をみとめて、軽く礼をして話し掛ける梓。
「篠崎のおじさま。おひさしぶりです」
「やあ、お誕生日いらいですな」
「絵利香ちゃんとは何度も会いに伺っているのですが、いつもおじさまはいらっしゃらなくて」
「はは、何かと忙しくてなかなか家によることができませんのですよ」
「絵利香ちゃん、寂しがってますよ。たまの日曜くらい、父娘で食事にでもお出かけになっては?」
「そうですね。いずれそうすることにしましょう。ところで、今日は梓グループの代表として、視察にみえたのですか?」
「いえ。ほんとは近くを通ったついでに寄ってみただけで、視察なんてつもりじゃなかったんですけど。何か大袈裟になっちゃって」
 と、人だかりに視線を移してみせる梓。
「いいんじゃないですか。梓さまに身近でお会いできるのは、グループ内でも重役クラスの大幹部だけですからね。確か、この研究所では所長と副所長だけじゃなかったかな。梓さまにお会いしてるのは。これを機会に、研究職員との親睦を深めるのも一興かと」
「ふふ、そうかも知れませんね。ところで、おじさまは、どのようなご用事でこちらに?」
「財団法人AFCが来年四月に、大容量・超高速通信用の人工衛星『あずさ三号C機』を静止軌道上に打ち上げるのはご存じですか?」
「あずさ三号C機? ですか。知りませんでしたわ」
「代表になられる以前からの計画ですし、相談役の渚さまが推進していますので、お嬢さまがご存じでないのも仕方がありませんかな」
「今は学業の方を優先しなさいって、母はAFCのことをあまり話してくれないんです」
「ははは、とにかくですね。三号C機は改良と最新技術の導入で、先代の三号B機に比べて二十パーセントもペイロードが増えちゃったんですよ。それで打ち上げロケットもこれまでのものが使用できなくなったため、推進力のより大きなロケットが必要になったのです。今後のことも考えあわせて、現在の二倍の推進力を持つロケットエンジンの設計を、この研究所の所員と一緒に開発しているのです」
「エンジンの設計って、大変なんでしょうね」
「そうですね。一ミリにも満たないほどの誤差が原因で、燃焼実験において大爆発、数十億の施設が一瞬でパーになったことがあります」
「へえ!」
「社長、そろそろ」
「ああ、そうですね。お嬢さま、もっとお話ししたいですけど、仕事がありますので、これで失礼します」
「あ、はい。こちらこそ、お時間とらせてしまってすみません。今度機会があったら続きをお話ししてくださいませんか」
「いいですとも。では」
「はい」
 ゆっくりと元来た通路を戻って行く篠崎社長と副所長。
「それでは、お嬢さま。研究所内をご案内いたしましょう。おい! おまえらもそろそろ部署に戻れ」
 所長が、野次馬を追い返し、梓を所内視察へと案内する。

 応接室に戻った篠崎社長が質問する。
「ところで皆さん、梓さまのことをお嬢さまと呼ばれてたようですが、よろしいのですか。仮にも、AFCの代表ですよ」
「篠崎さんこそお嬢さまと呼ばれてらしたじゃないですか」
「はは、私の場合はいいのです。お嬢さまが『篠崎のおじさま』と個人的な呼び方をされたのでね」
「おじさまですか。いいですね、それ。あの可愛い声で、私もそう呼ばれたいですな。ともかく、お嬢さまは、まだ高校生ですし、これから大学にも進学されるでしょう。ご結婚されるか、相談役の渚様が完全引退されるまでは、お嬢さまでいいんじゃないですか」
「なるほどね」


 梓の行く先々では、梓の来訪を知った幹部や研究所員の熱烈な歓迎を受ける。
 それらに笑顔で接して応対を受ける梓だった。
 そして、研究所の中核施設へと入って行く。
 本来なら一般研究員は入ることの出来ない隔離されたブロックだ。
「ここからは、第四セキュリティーレベルです。指紋照合と音声照合が必要です」
 指示されたとおりにセキュリティー認証装置のチェックを受けて、その先に進んで行く梓。
 そこは企業秘密の厚いベールに覆われた人工衛星の開発設計室だった。
 資源探査気象衛星「AZUSA」の六分の一ミニチュアを前に、所員の熱い説明を受けている梓。
「このAZUSAシリーズは、稼動中の三基と予備の二基が軌道上を順次回っています。各種のレーダーで、地表及び地下を探査して資源を調査するのが任務です。その一方では、大気の雲の分布状況や海洋表面温度などの気象観測も守備範囲としています」
「ねえ、あずさって通信衛星じゃありませんでした?」
「ああ、一号機から三号機がひらがなで呼称される通信衛星の『あずさ』で、四号機から六号機がアルファベットで呼称される資源探査気象衛星の『AZUSA』ということになっております。なお、号数の後にBとかCとついているのは、故障したり改良されたりして世代交代した機体であることを意味しています」
「電源は太陽電池ですか?」
「一部補助で太陽電池を使っておりますが、主電源は燃料電池です。ほらこれです」
 所員がミニチュアを指し示して解説してくれる。
「寿命は?」
「そうですね。だいたい電池寿命は三年を目安としておりますが、姿勢制御用噴射ガスの残量も衛星の寿命に影響します。衛星は、ジオイドの変動、塵の衝突、太陽フレアによる地磁気のぶれ、地球自転の章動などによって、軌道や姿勢が変えられてしまいます。そこでガスを噴射して姿勢を元に戻します」
「こらこら、お嬢さまが首を傾げているぞ。難しい専門用語はよせ」
 所長が研究員の話しを止めた。
「あ、申し訳ありませんでした」
 確かにジオイドだの章動だのと言われても、十六歳の少女には理解できない天文知識だった。

「ここは、これくらいでよろしいでしょう。次ぎは衛星の追跡コントロールセンターを紹介しましょう」
「追跡センター?」
「ここから先は第五セキュリティーレベルになります。網膜パターン照合にパスした者だけが、通過できることになっています」
「網膜パターン?」
「お嬢さま、実際にやってごらんになさいますか? すでにお嬢さまの網膜パターンは登録されていますから」
「そうだっけ?」
「十六歳の誕生日に代表に就任した時、ブロンクスの屋敷のセキュリティーセンターで登録したではありませんか」
「ん……そうだったかな」

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梓の非日常/第二部 第二章・宇宙へのいざない(二)若葉台研究所
2021.05.04

続 梓の非日常/第二章・宇宙へのいざない


(二)若葉台研究所

 ファントムⅥは、若葉台工業団地入り口と書かれた案内板のそばを通過し、やがて財団法人AFC衛星事業部若葉台研究所に入っていく。
「正面ゲートに到着しました」
 ゲート前で一旦停車するファントムⅥ。
 ゲートの側には警備員詰め所があって、出入りする者をチェックしているが、停車したまま動かない車に不審そうに窓から身を乗り出して確認しようとしているようだった。
「お嬢さま、わたしの申します通りに、携帯を操作してください」
「え? はい」
「まずは、O*8118#と入力してください」
 言われた通りにボタンをプッシュする梓。
「0*8118#、と。あら、何か数字が出てきたわ。3759よ」
「では、その数字の位ごとに5963を足してください。8・16・11・12となりますよね。その数字の一位の数字である、8612に#を加えて入力しましょう」
「8612#ね。画面に確認って文字が出たわ」
「では、指紋センサーを人差し指で触れてください。指紋照合ですので、第一関節部全面を押す感じで、お願いします」
「指紋照合なんかするの?」
「はい。携帯を盗まれて悪用されないよう、間違いなく梓さま本人かどうかを確認するためです」
「ふーん。そういえば麗香さんにこれを渡された時に、指紋登録しますから指紋センサーに指を触れてくださいって言われたっけ。はい、指紋を押したわ」
 すると目の前の通用ゲートが自然に上がっていった。
「お嬢さま、ゲートが開きました。進入します」
「お願いします」
 ファントムⅥを発進させる白井。
 ゲートが開いて驚いた表情を見せる警備員。
「最初に入力した0*8118#が、通門ゲートの解錠コードで、次の画面に表示された数字と5963とから導きだされる四桁の数字が暗証コードです。そして指紋照合の三つで入場審査が完了します。これはAFCが所有するあらゆる施設の通門ゲートで共通です」
「つまり、0*8118#と5963という数字を覚えておけばいいのね」
「はい。『お米はいいわ、ごくろうさん』と覚えておけばよろしいかと」
「はは、御用聞きみたい。アスタリスク(*)を米と読ませるのね」
「念のために申しておきますが、その手続きができるのは、今お持ちの携帯電話だけですので、お間違えのないようにお願いします」
「これが壊れたり失くしたら?」
「またお作りします」

 ファントムⅥが研究所の玄関前に到着する。
 白井が後部座席のドアを開けて、梓がゆっくりと降りて来る。
「ところで、ここは大丈夫でしょうねえ」
「煙草でしたら、心配ありません。灰皿一つ置いてませんし、喫煙者もおりません」
 それもそのはず衛星事業部は、地球軌道上を回っている『あずさシリーズ』を開発・製造している部門である。煙草の煙は無論、極微小な塵一つ許されない精密な部品で構成された衛星なのだ。玄関内に入るにも二層のエアカーテンを潜らねばならず、空気は完璧なまでに清浄化されている。
 そもそも『あずさシリーズ』は麗香が管理している。当然としてこの研究所には何度も足を運んでいるので、禁煙の勧告令はもとより、屋内の整理整頓と清掃を徹底させ、トイレにいたっても男子・女子共々ぴかぴかに磨き上げられている。清潔好きな梓が気に入らないと感じるような状況はなに一つないはずである。
「突然来訪して迷惑じゃなかったかな」
「大丈夫ですよ。私も、時々アポイントなしで訪れることがありますから」
「麗香さん、時々来てるんだ。ここに」
「ええ、まあ……」

 その頃、当研究所の所長室に、受付嬢からの一報が伝えられていた。
「つい先程玄関先に到着したロールス・ロイスから、十六歳前後の髪の長い女の子が降り立たれました」
「ロールス・ロイスに乗った十六歳前後の女の子か。わたしの知る限りでは、そのような要人はたった一人しかおられない」
「はい。もしかしたらあの真条寺梓さまじゃないかと」
「うむ……正門ゲートの守衛に連絡してみるか。あそこの受け付けを通らねば入ってこれないからな」

「それが不思議なんです。車の中で、女の子が携帯かなんかを操作していたかと思うと、ディスプレイに、無監査・進入OKという表示が出て、自動的にゲートが開いてしまって、そのまま車は入っていきました。通常は、来訪者に読み取り装置のカード挿入口にICカードを入れてもらってから、ディスプレイに表示される来訪者の所属・性別・年齢そして写真画像を確認した後で、守衛室内にあるゲート解錠ボタンを押して、はじめてゲートが開くはずなのですが」
「そうか、わかった。後のことはこちらで処理する。君はそのまま職務を遂行したまえ」
「わかりました」

「直ちに部長クラス以上に全員招集をかけろ。接客中の者を除いて、至急玄関先に集合だ。梓さまをお出迎えする」
「かしこまりました」
 所長の指令のもと、秘書から全役員に対して招集がかけられた。

 とある一室。篠崎重工の社長と研究所の副所長が、設計図を広げ部下達の説明を受けながら会議を開いている。
「外が騒がしいですね」
 会議室のドアがノックされ、所長の秘書が入室してくる。
「会議中のところ、失礼いたします」
「外が騒がしいようだが、一体何事だ」
「はい。真条寺梓さまがお見えになられていて、接客中以外の部長以上の役員は玄関先に集合です」
「梓さまが、見えているのか。接客中以外のものとなると」
「いえ。篠崎社長様には、梓さまとはご懇意だそうですので、お差し支えなければ、お会いなさってはいかがですかと、所長の角田が申しておりました。それでお呼びに伺ったのです」
「いかがされますか。社長」
「もちろん、お会いするよ」
「では、ご一緒に」

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