冗談ドラゴンクエスト 冒険の書 57
2019.09.10


冗談ドラゴンクエスト


冒険の書 57


コンラッド「ここで議論していても仕方がないですが……どうしたものか」
ナタリー「見て!(指さして)滝のそばに結構丈夫そうな木が生えてます」
リリア「ええ、確かに見えますね」
ナタリー「あれにロープを引っ掛けることができないでしょうか?」
コンラッド「そうか、その手がありましたか」
勇者「どういうことだよ」
コンラッド「あの木にロープを引っ掛けられれば、ロープを伝い川の中を渡ってい
けますよ」
リリア「どうやってロープを?」
コンラッド「弓と矢を使います」
リリア「でもパーティーに弓使いはいませんが」
コンラッド「任せてください。皆さんはそこで待っていて下さい(というと森の中
に分け入った」
ナレ1「森の中から木を切るような音が響く」
ナレ2「やがて戻ってきたコンッドの手には、丈夫そうな竹と蔓そして木の棒が握
りしめられていた」
リリア「それは何ですか?」
コンラッド「弓矢を作るんですよ」
リリア「作れるんですか?」
コンラッド「まあ、見ていて下さい。それから火を起こしてくれませんか?」
リリア「分かりました。木々を拾ってきます」
ナレ1「竹をナイフで適当な長さに切り、3センチ幅に縦割りするコンラッド」
ナレ2「切り揃えた割竹の節を丁寧に削って滑らかにする」
リリア「木々を拾ってきました」
コンラッド「ありがとうございます。火を起こして熱湯を作って下さい」
リリア「わかりました」
ナレ1「言われた通りに火を起こして、飯盒でお湯を沸かすリリア」
ナレ2「その間にも着々と弓矢作りに専念するコンラッド」
リリア「お湯が沸きましたよ、コンラッドさん」
コンラッド「ありがとう」
ナレ1「と言うと、金属製の手付きコップに水を入れて、荷物袋から取り出した乾
燥ニカワを湯煎する」
ナレ2「飯盒の熱湯によって、コップの中のニカワが溶け始めて粘着性を帯び始め
る」
ナレ1「ちなみに、ニカワはバイオリンなどの楽器の組み立てにも使われ、経年劣
化の少ない良質の接着剤として利用されてきた。また止血にも使われる他、主成分
がゼラチンなので食用としても用いられる。旅の必需品である」
コンラッド「よし、いいだろう」
ナレ1「溶けたニカワを使って、数本の割竹を張り合わせ始める。」
ナレ2「用の済んだ飯盒を片付けて、竹を火で炙りながら少しづつ曲げてゆき、適
当な具合で両端に蔓を取り付けて弦を張る」
ナレ1「続いて矢の製作に取り掛かる」
ナレ2「こちらは簡単だ。先を尖らせて、後ろにロープを結ぶだけだ。そして弓矢
が完成した」
リリア「出来たのですか?」
コンラッド「出来ましたが、たぶん一発限りで壊れるでしょう」
勇者「なんだよ、それって……」
コンラッド「あの木に届きさえすれば、一発あれば十分です」
勇者「で、誰が弓を引くんだ?」
コンラッド「君が引きますか?」
勇者「俺は遊び人だぜ。弓を使えるわけないだろ」
コンラッド「でしょうね。私がやりますよ」
ナレ1「と言うなり、弓矢を構えるコンラッド」
ナレ2「きりりと表情を引き締めて、弓矢の投射態勢に入るコンラッド」
リリア「コンラッドさん……(成功しますようにと祈る」
コンラッド「えい!(とばかりに、弓を射る)」
ナレ1「ロープの繋がれた矢は一直線に例の木へと突き進む」


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冗談ドラゴンクエスト 冒険の書 56
2019.09.09


冗談ドラゴンクエスト


冒険の書 56


ナレ2「さらに野山をかき分けること数日」
リリア「水が流れる音が聞こえます」
ナタリー「ほんとだ。どっちから?」
勇者「俺には聞こえねえが」
ナタリー「あんたは邪心しかないから聞こえないのよ」
勇者「女の囁き声なら1キロ先でも聞こえるぞ」
ナタリー「だろうね」
コンラッド「あっちの方から聞こえます(指さす)行ってみましょう」
ナレ1「水音のする方へと急ぐ一行」
ナレ2「水音は次第に大きくなり、やがて雄大な瀑布が現われた」
リリア「これがムース滝ですか?」
コンラッド「そうです」
ナレ1「激しく下り落ちる水流のなんたる荘厳なものだうか。遠く離れていても水
飛沫がかかり衣服を濡らしていく」
ナレ2「足元を流れる水は、清く澄んでいた」
リリア「この水は飲めるでしょうか?」
コンラッド「飲めると思います」
リリア「飲んでみます」
ナレ1「川辺にひざまずいて、両手で水を掬って飲むリリア」
リリア「おいしい!!」
ナレ1「道なき道を長時間歩いてきたので、渇きを覚えていた喉越しの水は美味し
いと感じるには十分だった」
ナレ2「他の者も一緒に飲み始める。ついでに水筒にも補給する」
勇者「しかし、コンラッドさんよお。ここを知ってたんだろ?なんで道が分からな
かった」
コンラッド「何せほとんど人が通らず獣道しかないので、月日が経てば草木が伸び
て道も消え失せてしまいますから」
ナタリー「なるほどね、迷いの森と同じというわけね」
勇者「GPSナビとかないのかよ。今時のスマホには大概付いてるだろ?」
ナタリー「どこの世界の話よ。ここにそんなもんあるわけないでしょ」
ナレ1「その時、コンラッドの荷物袋に入っていた『導きの羅針盤』が反応した」
コンラッド「これはどうしたことか?」
ナレ1「羅針盤の針がムース滝を刺したまま動かない」
リリア「それは何ですか?(不思議そうに覗き込む)」
コンラッド「大神官様が最高導師様から頂いたもので、それを自分に下さったので
す。何でも導師様が近くにいると反応するということらしいです」
ナタリー「じゃあ、あの滝の中にいるということ?」
コンラッド「滝の中というより、その裏側じゃないですか?」
ナタリー「ああ、よくある話しね。滝の裏側に洞窟があるということね。ちょっと
待って透視してみるから」
ナレ1「目を瞑り、呪文を唱えるナタリー」
ナタリー「見えたわ。確かに滝の中腹に洞窟があるわ」
リリア「「だとしても、どうやって洞窟へ行きますか?足場がありませんよ」
勇者「瞬間移動の魔法とかないのか?」
ナタリー「あたし一人だけなら移動できるけどね。全員は無理よ」
勇者「なら、おまえ一人で行って見てこい!」
ナタリー「あのねえ、あんた一人をあそこまで吹っ飛ばすことだってできるのよ」
勇者「あ、肩に枯れ草が付いてる(機嫌取りする)」
リリア「回り道して滝の上側に行って、そこからロープを垂らして洞窟に降りると
いうのは?」
コンラッド「そこまで行くのにさらに日数がかかると思いますし、より凶暴なモン
スターに出くわす可能性もあります」
勇者「滝の上部は見えてるのに、何日もかかるのかよ」
ナタリー「馬鹿ねえ。冬山登山家なんかは、目の前数十メートル先に頂上が見えて
いても、気象や体調を考慮して、登頂を断念することもあるんだから」
勇者「だとしたら滝の側壁断崖を伝ってロッククライミングで渡るしかないじゃな
いか」
リリア「ロッククライミング……って何?」
勇者「ハーケンとかカラビナを使って岩盤に杭を打って、それにザイルを伝わせて
崖を登ったり横断したりするんだよ」
リリア「……??(首を傾げ理解できない表情)」
勇者「はあ……花売り娘には分からないか」
ナタリー「花売り娘はあんたでしょうが」


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銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第四章 新型モビルスーツを奪還せよ XVII
2019.09.08


 機動戦艦ミネルバ/第四章 新型モビルスーツを奪回せよ


                XVII

 水中深く沈んでいくSWS。
 やがて大きな横穴が姿を現わした。
 それは地下水脈であった。
 オアシスは地下水脈を通して、大海へと繋がっていたのである。
「内陸部の湖には、地下水脈で大海に通じているものがあることを知っているのは
俺達だけだ。そして実際に航行できるのもこの艦のおかげだ」
「開発設計者は、士官学校在学中だったフリード・ケースンという人物らしいです
けど……。一体どんな顔してるんでしょうね。機密情報扱いで顔写真が公開されて
いませんので」
「そりゃそうさ。顔写真が公開されたら、拉致・誘拐される危険性が高くなるじゃ
ないか。これだけ優秀な技術者を失えば大きな損失になる」
 地下水脈を流れに任せて航行するSWS。
「まもなく海中に出ます」
「海に出たら、浮力調整を塩水モードに変更」
「海中に出ました。現在、カラコルム海を航行中」
「潜望鏡深度まで浮上」
「潜望鏡深度、深度十八メートルまで浮上」
「メインバラストタンク排水」
 ゆっくりと浮上をはじめるSWS。
 深度計の針が回って、十八メートルを指して止まった。
「十八メートルです」
 潜望鏡を上げて、海上を探査をはじめる艦長。
 海上はおだやかで波一つ見えず、艦影も水平線の彼方まで見られなかった。
「浮上!」
「見張り第一班配置につけ」
 海上に姿を現わすSWS。
 指揮塔のハッチを開けて出てくる艦長と副長、そして見張り要員。甲板からもハ
ッチを開けて乗員が出てくる。全員が大きく深呼吸して新鮮な空気を身体一杯に取
り込もうとしていた。
 換気装置が働いている音が微かにしている。原子力で動いており、空気清浄器を
使って、基本的には一ヶ月は換気の必要はないのだが、やはり外界の空気は新鮮こ
の上ないのである。
「やはり海は良いな。これぞ船乗りという気分がする」
「砂の海とは大違いですね」
「そうだな……。さてと任務を遂行するか」
「はい」
「トライアス発射準備。一番だ」
「トライアス一号、発射準備」
「目標。バイモアール基地。ただし併設のカサンドラ訓練所は外す」
「了解。目標、バイモアール基地、カサンドラ訓練所は外します」
「目標セットオン。一号発射管、上扉開放」
「一号発射準備完了」
「一号発射!」
 ガス・蒸気射出システムによって打ち出されたミサイルは、ある程度の高度に達
したところで、自身のエンジンに点火されて目標へと向かっていく。
「発射確認。目標に向かっています。到達時間二分十五秒」
 のんびりと船乗り気分に酔いしれている艦長。
「いい風だな。戦争をしていることを、つい忘れてしまいそうだ」
「ミサイル、目標に着弾しました」
「基地を完全に破壊」
 その時、見張り要員が声を上げた。
「艦影発見! 十七時の方向です」
 すかさず副長が、双眼鏡を覗いて答える。
「ミサイル発射を探知されたのでしょう。こちらに高速で向かってきます」
「警報!」
 艦の内外に警報が鳴り響く。
 外に出ていた乗員が、一斉に艦内へと戻ってゆく。
「潜航!」
「メインバラストタンクに注水」
「潜蛇下げ舵、十五度」
 艦首を下に向けて、潜航を続けるSWS。
「水平!」
 ゆっくりと水平に体勢を直す。
「全隔壁閉鎖! 無音潜航」
 各ブロックが閉鎖され、息を潜めて身動きしない乗員達。
 その表情からは、
「艦長はやる気だ」
 という雰囲気がうかがえる。


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銀河戦記/鳴動編 第二部 第四章 皇位継承の証 III
2019.09.07


第四章 皇位継承の証(あかし)/土曜劇場


                III

 宮廷楽団の奏でる音楽の旋律が変わって、パーティーのはじまりを告げていた。
 正面壇上にパーティー主催者であるウェセックス公国ロベスピエール公爵が立っ
た。そばには小さな子供、嫡男であり皇太子候補のロベール王子。
「パーティーにご列席の皆様、ようこそおいで下さいました。ご存知の通りに、帝
国に対して謀反を引き起こしていましたマーガレット皇女様が逮捕され、内乱は鎮
圧されました。このパーティーは、それを祝いまして開催いたしました。と同時に、
我が息子のロベール王子が正式に皇太子として認められたことになる記念日でもあ
ります」
 場内に拍手が沸き起こった。
 皇室議会においてロベール王子が皇太子に推されたことは事実ではあるが、皇女
の一人が意義を唱えて内乱を引き起こしたことによって、一時棚上げとされたので
ある。しかし首謀者のマーガレット皇女が捕らえられたことによって、ロベール王
子擁立に反対する者がいなくなって、皇太子として正式に認知されたということで
ある。
 会場に、アレックスとパトリシアが遅れて入場した。
「おお! 今宵の主賓の登場でありますぞ」
 と、アレックスの方に向かって、大きなジェスチャーで紹介するロベスピエール
公爵だった。
「この度の電撃作戦によって、見事マーガレット皇女様を逮捕された功労者であり
ます。銀河帝国客員中将となられたアレックス・ランドール提督です」
 ざわめきが起こった。
「何とお若い……」
「あの若さで中将とは」
「それにほら、あの瞳。エメラルド・アイではございませんこと」
「すると皇室ゆかりの方でいらっしゃられる?」
「でも、お見受けしたこともございませんわ」
 会場に参列した貴族達に、アレックスの第一印象はおおむね良好のようであった。
「さあさあ、飲み物も食べ物もふんだんにご用意しております。どうぞ、心ゆくま
でご堪能下さいませ」
 アレックスのことは簡単に紹介を済ましてしまったロベスピエール公爵。
 その本当の身分が共和国同盟解放戦線最高司令官であることは伏せておくつもり
のようだ。パーティー主催の真の目的がロベール王子の紹介であることは明白の事
実であった。貴族達の間を回って、自慢の嫡男を紹介していた。
 参列者達の間でも、それぞれに挨拶を交し合い、自分の子供の自慢話で盛り上が
る。
 やがてそれらが一段落となり、見知らぬ女性の存在を気にかけるようになる。
「何でしょうねえ……。提督のご同伴の女性」
 パトリシアである。
 中将提督と共に入場してきた場違いの雰囲気を持つ女性に注目が集まっていた。
「何か、みすぼらしいと思いませんか?」
「ドレスだって、借り物じゃございませんこと?」
 蔑むような視線を投げかけ、卑屈な笑いを扇子で隠している。
「それにほら、あの首飾りです。エメラルドじゃありません?」
「あらまあ、ご存じないのかしら。エメラルドは皇家の者しか身につけてはならな
いこと」
「でもどうせイミテーションでしょ」
「噂をすれば、ほら侍従長が気が付かれたようですわ」
「あらら、どうなることやら……。ほほほ」
 侍従長がパトリシアに近づいていく。


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妖奇退魔夜行/胞衣壺(えなつぼ)の怪 其の拾玖
2019.09.06


陰陽退魔士・逢坂蘭子/胞衣壺(えなつぼ)の怪


其の拾玖 美咲魔人


 軍人の幽霊が、腰に下げた軍刀を抜いて斬りかかってきた。
 美咲魔人に操られているようだ。
 切っ先を鼻先でかわすと同時に、懐から取り出した呪符を、その額に張り付ける。
 身動きを封じた幽霊に対して、
「白虎、押さえておいて」
 命じると、白虎は幽霊に覆いかぶさるように押し倒して馬乗りになった。
 零体を押さえるなど人間には無理だが、聖獣の白虎なら可能である。
 白虎の神通力を持ってすれば、咆哮一発消し去ることもできるのだが、この彷徨える
霊魂を成仏させて輪廻転生させたいと願っていたのである。
 無に帰してしまえば生まれ変わりはできないからだ。
「ほう、そう来たか。わたしと一対一で戦おうというわけですね。でもね、こう見えて
も実はわたしは不死身なんですよ」
 不死身と聞いても蘭子は動揺しなかった。
 これまでにも幾度となく不死身の魔人とも戦ってきた経歴を持っていた。
「ところで聞いてもいいかしら?」
「構いませんよ」
「ここで殺人が行われた時に、すでにあなたは覚醒したと思います。それが戦後70年以
上経ってから、活動を始めたのは何故ですか?」
「目覚めても、依り代となっていた壺が土の中だったからですよ。動けなかった。誰か
が掘り起こしてくれるのを待っていた。で、地上に出られたは良いが、これがむさ苦し
い男だったから躊躇していた」
「そんな他愛のないことで?」
「誰かに憑りつくなら綺麗な女性に限りますからね。それにこの娘とは波長が合いまし
てね」
「波長が合う?」
「何故なら、この壺の主であるそこの霊体と、この娘とは血縁同士ですからね」
「血縁ですって?」
「彼には子供がいませんでしたから、叔父叔母とかの血筋ですかねえ」
 意外な展開に考え込む蘭子だった。
 抗争中にそんな余裕あるのかと言えば、魔人は不死身を自認しているだけに、余裕
綽々な態度を見せて蘭子を見守っているというところだ。
「あの夜、この娘がここを通りかかった時に、壺が震えました。共鳴現象という奴です
ね」
「なるほど、良く理解できました」
 緊張した空気の中で続けられる会話。
 事の次第が明らかになったことで終わりを迎える。
「そろそろ決着を付けましょうか」
「そうですね。これ以上の話し合いは無駄のようです」
 懐から虎徹を取り出し鞘から引き抜くと、それは短刀から本来の姿の長剣に変わった。
 中段・臍眼に構えながら念を込める。
 やがて虎徹はオーラを発しながら輝き始める。
 魔人を倒すことのできる魔剣へと変貌してゆく。
 美咲を傷つけることなく、魔人を倒すことができるのか?
 じりじりと間合いを詰め寄りながら、
「えいやっ!」
 とばかりに斬りかかる。
 すると美咲魔人は、ヒョイと軽々とステップを踏むように回避した。
 どうやら動きを読まれている。
「当たりませんねえ」
 不敵な笑みを浮かべる。
 しかし蘭子も言葉を返す。
「どうでしょう、こういう手もあるのよ」


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