銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第四章 新型モビルスーツを奪還せよ XVⅢ
2019.09.15


 機動戦艦ミネルバ/第四章 新型モビルスーツを奪回せよ


                XVⅢ

「高速推進音接近! 魚雷です」
 聴音機(パッシブソナー)に耳を傾けていたソナー手が報告する。
「急速浮上! デコイ発射」
 魚雷が急速接近してくる。SWSは急速浮上してこれを交わしながら、デコイ
(囮魚雷)で魚雷の目標を反らしてしまおうというのだ。
「アクティブ・ソナー音が強くなってきます。敵艦接近中」
 超音波を出して、その反響音から敵艦の位置を探るのがアクティブソナーである。
敵艦を補足して、頭上から爆雷を投下するのが、攻撃の手順である。
 敵艦を探知するには確実であるが、逆に言えば音源を発していることから逆探知
されることを意味して、隠密を前提とする潜水艦側から使用することはまれである。
「爆雷です!」
 イヤフォンを急いで外しながら、再び叫ぶソナー手。
「取り舵十度! 深度百メートル」
 逃げ回るしかなかった。
 水上艦対潜水艦の一対一の戦闘の場合、圧倒的に水上艦の方が優位だとされてい
る。艦の速度差、探知装置の充実性、攻撃力の相違など、水中にある潜水艦は劣勢
に立たされる。よって水上艦と接触したら逃げ回るしかないのが現状である。
 最上の方策が、敵の攻撃や探知の届かない深深度潜航で逃げるのが一番である。
 しかしこの艦長は、反撃を企んでいるのか、浅い水域を逃げ回っていた。
 一回目の爆雷攻撃を終えた水上艦は一旦離れていった。が、やがて引き返してき
て攻撃を再開するだろう。
「もう一度魚雷がくるはずだ。それを交わして次の爆雷攻撃の直後に、潜望鏡深度
に急速浮上して、魚雷攻撃を敢行する。狙いはつけられないが、必ず当てられるは
ずだ」
 予想通りに魚雷が襲い掛かってくる。
「アンチ魚雷発射! 五十まで浮上」
 迫り来る魚雷を直接破壊する迎撃魚雷である。
 難なく魚雷を交わして、次の攻撃を待つ。
「さて、次にくる爆雷攻撃の後が肝心だ。艦尾魚雷発射管に魚雷を装填。発射角度
を三度で調整」
 逃げ回ってはいるが、余裕綽々の艦長であった。そもそも潜砂艦として建造され
た構造上、通常の潜水艦に比べて外壁に格段の相違があったのだ。その厚さだけで
も二倍以上あるし、砂の中を進行する為に非常に滑りやすくできていた。仮に爆雷
が炸裂してもビクともしないし、魚雷もつるりと滑って反れてしまう確率が高い。
 ソナー音が近づいてきた。
「おいでなすったぞ」
 やがて水上艦からの爆雷攻撃が再開された。
「よおし。潜望鏡深度まで浮上! 魚雷発射準備」
 爆雷の雨の中を上昇するSWS。
 すでに水上艦はすれ違いを終えている。
「今だ! 魚雷発射!」
 艦尾魚雷が発射される。
 扇状に開きながら、敵艦に向かう魚雷。
 そして見事に敵艦に命中した。
 火柱を上げながら沈んでいく水上艦。
 SWSの艦内にも、きしみ音を上げて水没していく様子が、水中を渡って響いて
くる。
「撃沈です」
「よし。皆、よく耐えて頑張ってくれた。これより基地に帰還する」
 乗員達の表示に明るさが戻ってくる。
 久しぶりの基地帰還である。
 艦内ではできなかったシャワーを浴びたり、豪勢な肉料理にかぶりついたり、そ
して何より、しばしの休暇が与えられるの一番の喜びだった。

 第四章 了


11
銀河戦記/鳴動編 第二部 第四章 皇位継承の証 IV
2019.09.14


第四章 皇位継承の証


                 IV

 パトリシアの前に立ち、神妙な表情で話しかける。
「ちょっとよろしいですかな?」
「何か?」
「その首飾りを見せて頂けませんか?」
「え? ……ええ、どうぞ」
 パトリシアの首に掛けたまま、首飾りを手にとって念入りに調べていたが、警備
兵を呼び寄せて、
「あなた様は、この首飾りをどこで手にお入れなさりましたか?」
 と、不審そうな目つきで尋ねる。
「ランドール提督から、婚約指輪の代わりに頂きました」
「婚約指輪ですか?」
 今度はきびしい目つきとなり、アレックスを睨むようにしている。
「申し訳ございませんが、お二人には別室においで頂けませんか?」
 警備兵が銃を構えて、抵抗できない状況であった。
「判りました。行きましょう」
 承諾せざるを得ないアレックスだった。
 ほとんど連行されるようにして別室へと向かう。
 首飾りも詳しい調査をするとして取り上げられてしまった。
 案内されたのは、元の貴賓室であった。犯罪性を疑われているようだが、帝国の
恩人で摂政から客員提督として叙された者を、無碍にもできないというところであ
った。それでも警備兵の監視の下軟禁状態にあった。
 しばらくして、首飾りを持って侍従長が戻ってきた。
「さてと……。改めて質問しますが、提督にはこの首飾りをどちらでお手に入れら
れましたか?」
 という侍従長の目つきは、連行する時の厳しいものから、穏やかな目つきに変わ
っていた。
「どちらで……と言われましても、私は孤児でして、拾われた時に首に掛けられて
いたそうです。親の形見として今日まで大事に持っていたものです」
「親の形見ですか……。提督のお名前はどなたが付けられたのですか」
「それも拾われた時にしていた、よだれ掛けに刺繍されていたイニシャルから取っ
たものだそうです」
「よだれ掛けの刺繍ですね」
「はい、その通りです」
「なるほど、良く判りました。それでは念のために提督の血液を採取させて頂いて
もよろしいですか?」
「血液検査ですね」
「はい、その通りです」
「判りました。結構ですよ」
 早速、看護婦が呼ばれてきて、アレックスの血液を採取して出て行った。
「結果が判るまでの二三日、この部屋でお待ち下さいませ。それからこの首飾りは
提督の物のようですから、一応お返ししておきます。大切にしまっておいて下さ
い」
「イミテーションではないのですか?」
「とんでもございません! 正真正銘の価値ある宝石です」
「これが本物?」
 言葉にならないショックを覚えるアレックスだった。
 これまで偽造品だと信じきっていて、親の形見だと思って大切にはしてきたが…
…。まさかという気持ちであった。
「そう……。銀河帝国皇家の至宝【皇位継承の証】です」
 重大な言葉を残して、侍従長は微笑みながら部屋を出て行った。


11
妖奇退魔夜行/胞衣壺(えなつぼ)の怪 其の廿
2019.09.13


陰陽退魔士・逢坂蘭子/胞衣壺(えなつぼ)の怪


其の廿 魔法陣


 蘭子が、トンと地面を踏むと、地鎮祭に使用された縄張りを中心として、敷地全体に
魔法陣が出現した。
「ほう、奇門遁甲八陣図ですか」
「その通りよ。もう逃げられないわよ」
 今日のこの日を予想して、縄張りを片付けずに、魔の者には見えない魔法陣を描いて
いたのである。
「なるほど、そういう手できましたか。弱りましたね」
 と言いながらも、不死身ゆえに余裕の表情を見せていた。
 しかしながら、自由を奪われて身動きできないようだった。
「白虎!」
 言うが早いか、霊魂から離れて美咲に飛び掛かった。
 白虎が爪を立てて狙ったのは?

 胞衣壺だった。

 その鋭い爪で、魔人が抱えていた胞衣壺を弾き飛ばした。
 胞衣壺は宙を舞って、蘭子の方へ飛ぶ。
 それをしっかりと受け取る蘭子。
 白虎は再び霊魂の押さえに戻っている。
「さて、それをどうする? 壊すか?」
 意味ありげに尋ねる美咲魔人。
 胞衣壺は、単なる依り代でしかない。
 壊したところで、別の依り代を求めるだけである。

 さあどうする、蘭子よ。

「そうね……こうします」
 というと呪文を唱え始めた。

「こ、これは、呪縛封印の呪文かあ!」
 さすがに驚きの声を上げる美咲魔人。
 蘭子の陰陽師としての能力を過少評価していたようだ。
 不死身という身体に油断していた。
 不死身ならば封印してしまえば良いということに気が回らなかった。
*参考血の契約

 一心不乱に呪文を唱えながら、胞衣壺の蓋を開ける蘭子。
 美咲の身体が輝き、白い靄のようなものが抜け出てくる。
 やがて白い靄は、胞衣壺の中へと吸い込まれるように消えた。
 すかさず蓋を閉め、呪符を張り付けて封印の呪文を唱える。
 無事に胞衣壺の中に魔人を閉じ込めることに成功した。
「ふうっ……」
 と深い息を吐く。
 後に残された霊魂も、魔人の呪縛から解かれている。
「白虎、もういいわ」
 静かに後ずさりするように、霊魂から離れる白虎。
 怨念の情は持ってはいても、蘭子の手に掛かれば浄化は容易い。
 浄化の呪文を唱えると静かに霊魂は消え去り、輪廻転生への旅へと出発した。
「さてと……」
 改めて、魔人が抜け出して放心して、地面にへたり込んでいる美咲を見つめる。
 白虎がクンクンと匂いを嗅ぐような仕草をしている。
「大丈夫よ。気を失っているだけだから」
 血の契約を交わしたとはいえ、精神を乗っ取られた状態であり、本人の承諾を得たと
は言えないので契約は無効である。
 美咲に近寄り抱え上げると、白虎の背中に乗せた。
「運んで頂戴ね」
 白虎としては信頼する蘭子以外の者を背に乗せることは嫌だろうが、優しい声でお願
いされると拒否できないのだ。
「土御門神社へ」
 霊や魔人との接触で、精神障害を追っているかも知れないので、春代に霊的治癒を行
ってもらうためだ。
 蘭子と美咲を背に乗せながら、夜の帳の中を駆け抜ける白虎。


11
冗談ドラゴンクエスト 冒険の書 59
2019.09.12


冗談ドラゴンクエスト


冒険の書 59


勇者「で、洞窟の先には何があるんだ?」
コンラッド「進みます。行けば分かります」
勇者「同じこと言うんだな。訳ありか?」
ナタリー「いいじゃない、行けば分かるというんだから」
ナレ1「というわけで、ともかく洞窟内を前へと進みだす一行だった」
ナレ2「ピトピトと地下水が染み出る洞窟を突き進んでいくと、前方に光が見えて
きた」
リリア「出口だわ!」
ナレ1「出口が見えたということで、自然足早になるのだった」
ナタリー「出たわ!」
リリア「何よ、これは!」
ナレ1「目の前には、見渡す限りの原野が広がっており、周りは崖が取り囲んで中
心には大きな湖が青い水をたたえていた。いわゆる外輪山に囲まれたカルデラ地形
の中だろうか」
リリア「凄いですね」
勇者「滝の中のトンネルを抜けると、そこは別世界だった」
ナタリー「なんか聞いたような言葉ね」
リリア「このどこかにクアール最高導師様がいらっしゃるのでしょうか?」
コンラッド「大神官様から頂いた、導きの羅針盤が反応しています」
リリア「それは何ですか?」
コンラッド「どうやら魔力に反応するようでして、最高導師様の居場所を指し示す
そうです」
リリア「魔力ならナタリーも持ってますよね」
ナタリー「あたしなんかクアール様の足元にも及びませんよ」
勇者「だよな、羅針盤も全然反応しねえし、そもそも売春婦だろ」
コンラッド「売春婦にこだわるんですね」
勇者「日本軍性奴隷制被害者と言わないだけましだろ」
コンラッド「とにかく、羅針盤が指し示している方角に向かいましょう」
リリア「クアール様は本当にいらっしゃるのでしょうか?」
ナタリー「ここまで来たんだもの。信じて進むしかないでしょ」
ナレ1「羅針盤の示す方向へと歩むこと5時間、日が暮れ始めた来た」
コンラッド「今日はここで野宿しましょう」
勇者「ちょっとおかしくないか?」
リリア「なにがですか?」
勇者「足が棒になるほど歩いたというのに、反対側にたどり着かないってのはよお。
そんなに広い窪地じゃないだろ?」
コンラッド「気づいてましたか」
勇者「気づくさ。見た目、1時間もあれば端まではおろか、周囲をぐるりと回れる
はずだぜ」
ナタリー「だって結界の中を進んでいるんだものね」
勇者「結界だって?」
ナタリー「隠遁していらっしゃるクアール様が、そうそう簡単に人里の者と会うは
ずがないでしょ。この結界は、私達の本気度を試してらっしゃるのよ」
リリア「本気度ですか?」
ナタリー「そうよ。今日は歩かされるだけだったけど、明日からは強力なモンス
ターをぶつけてくるかもね」
勇者「分かった!引き返そうぜ」
コンラッド「さあ、今日はもう休んで明日に備えましょう」
勇者「おい、聞いてんのかよ」
ナタリー「さあ、寝よう寝よう」
ナレ1「勇者を無視して、野宿の支度をはじめる一行だった。やがて夜が更け、朝
が来る」


11
冗談ドラゴンクエスト 冒険の書 58
2019.09.11


冗談ドラゴンクエスト


冒険の書 58


ナレ2「コンラッドが放った矢は、見事滝のそばの木に絡まった」
ナタリー「やったね!」
コンラッド「さてと、ここからが大変ですよ(ロープを軽く引いて、しっかりと木
に掛かっているのを確認する)」
リリア「どうするんですか?」
コンラッド「このロープを伝って向こうの崖に渡ります(言いながら、ロープのも
う片端を近くの木に結び付けた)」
ナタリー「大丈夫ですか?」
コンラッド「見ていてください(とロープを伝って渡り始める)」
ナレ1「弛んだロープは川面に浮かび、コンラッドはそれを伝って慎重に川の中を
渡ってゆく」
ナレ2「やがて滝の真下脇にたどり着くと、真上の木に向かって登り始めた」
ナレ1「木にたどり着くと、掛かっているロープをピンと張るようにしっかりと結
びなおした」
ナタリー「大丈夫ですか?(大声で)」
コンラッド「大丈夫です(大声で返す)ちょっと中を見てきます」
ナレ1「コンラッドのいる木から洞窟の穴までは、少し距離があったが、ロープの
残りを身体に縛り付けて安全を確保して、慎重に壁伝いに洞窟へ渡った」
ナレ2「危なげにも無事に洞窟にたどり着いたコンラッドは、身体に縛り付けてい
たロープを外して、洞窟内にまで根を張っていた木に結び付けた」
コンラッド「さてと、洞窟は……だいぶ先まで続いているようだな」
ナレ1「残した者達のことも気になるが、まずは洞窟内を調べることが肝心だ。行
き止まりだったら全員で来ても意味がない」
ナレ2「30分ほどして、コンラッドが洞窟入り口に出てきた」
リリア「コンラッドさん!どうでしたか?」
コンラッド「今から戻りますよ」
ナレ1「レスキュー隊よろしく、するするとロープを伝って一行のいる対岸へ戻る
コンラッド」
勇者「すごいな、まるで猿だな」
リリア「勇者さん、失礼ですよ」
コンラッド「いいんですよ。気にしません」
ナタリー「それで洞窟の中はどうでしたか?」
コンラッド「行けば分かりますが、ビックリしますよ」
勇者「なんだ、意味深だな」
リリア「このロープを渡るんですか?(怖気づいている)」
コンラッド「大丈夫ですよ。ここにもう一つのロープを用意します。張ったロープ
を通すように輪っかを作ってもう一方を勇者さんの身体に巻き付けます。そしてグ
イと押し出すと」
勇者「な、何をするんだ。あ、ああ!」
ナレ1「スーっと勇者は、ロープを伝って前へ進んでいく」
ナタリー「これが本当のロープウェイね」
勇者「馬鹿野郎!なんてことすんだよお(大声で叫んでいる)」
コンラッド「そこから洞窟へ入って下さい。入ったらロープを外して(大声で)」
勇者「分かったよ。こんなところにいつまでもぶら下がってられっかあ!」
ナレ1「言われた通りに洞窟へ飛び移り、身体のロープを外す勇者。それを見届け
て、ロープに括り付けていた補助紐を引くと、移動用ロープは戻ってくる」
コンラッド「リリアさん。今のように渡って下さい」
リリア「ええ!あたしもですか?」
ナタリー「行くしかないでしょ。元の身体に戻りたければね」
リリア「(じっと考え込んでいたが)分かりました。行きます」
ナレ1「おっかなびっくりだが、意を決してロープを巻き付け飛び出した」
ナレ2「見事無事に洞窟へ渡り、続いてナタリー、そしてコンラッドと全員が洞窟
へ渡るのに成功した」


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