銀河戦記/鳴動編 第二部 第九章 共和国と帝国 Ⅲ
2020.10.10

第九章 共和国と帝国




 アレックスは統合艦隊総司令部に全幕僚を招集した。また帝国側から、マーガレット皇
女とジュリエッタ皇女、そしてその配下の提督達を呼び寄せていた。
「ところで座ったらどうだい。マーガレット」
 皇太子であるアレックスにたいしては、いかに実の兄妹であろとも最敬礼をつくさねば
ならない。同盟の提督達が着席しているのもかかわらず帝国の諸氏は不動の姿勢で立って
いたのだ。
「いえ。同盟の方々はともかく、我々は銀河帝国の人間です。皇太子殿下の御前において
は着席を許されません。どうぞお気がねなく」
「皇太子といっても、帝国ではまだ正式に承認されていないのではないかな」
「殿下はすでに宇宙艦隊司令長官に任命されております。皇室議会での承認はまだなされ
ておりませんが、これは事実上の皇太子として認められているからであります」
「宇宙艦隊司令長官は皇太子の要職だったな」
「さようにございます」
「私の皇太子の地位はともかく、共和国同盟最高指導者としての地位もあるのだ。そして
ここは共和国同盟下の首都星トランターだ。帝国の法律やしきたりは無用だ」
「ですが……」
「とにかく座ってくれ。こっちが話しずらいじゃないか。トランターにある時は、トラン
ターのしきたりに従ってくれ。最高司令官の依頼と皇太子の命令だ」
「は。ご命令とあらば……」
 皇太子の命令には絶対服従である。仕方なしに着席する帝国の諸氏。
「それよりも、殿下。私共をお呼びになられたのは、いかがな理由でございましょうか」
 マーガレットが尋ねた。
「先の同盟解放戦線では、解放軍と皇女艦隊が連携してことにあたったのだが、これをさ
らに推し進めて、正式に連合艦隊を結成するつもりだ」
「連合艦隊!」
 一同が驚きの声をあげた。
「誤解を招かないように先に念を押しておくが、これは連邦にたいして逆侵略をするため
に結成するのではないということだ。強大な軍事力を背景にして、連邦に容易には軍事行
動を起こせないようにし、平和外交交渉の席についてもらうためである」
「ミリタリーバランスと呼ばれるやつですな」

「ところでネルソン提督」
「はっ」
「現在の帝国の正確な艦隊数はどれくらいかな」
「帝国直属の艦隊が四百万隻と、国境警備隊及び公国に与えられた守備艦隊としての百万
隻を合わせて、都合五百万隻ほどになります」
「五百万隻か……だが、五百万隻といっても、同盟・連邦が相次ぐ戦闘で次々と新型艦を
投入してきたのに対し、長年平和に甘んじてきた帝国のものは旧態依然の旧式艦がほとん
どだということだが」
「さようにございます」
「しかも、乗員も戦闘の経験がほとんどないに等しいと。どんなに艦隊数を集めても、旧
式艦と未熟兵ばかりでは戦争には勝てない」
「確かにその通りですが、既存の艦隊を新型艦に切り替えるにも予算と時間が掛かり過ぎ、
また資源的にも短期間では不可能で問題外でありましょう」
「そうだな、不可能なことを論じてもしかたがないだろうが、将兵を再訓練する必要はあ
るだろう。今のままでは帝国軍五百万隻をもってしても、同盟・連邦軍二百万隻にはかな
わないだろうな」
 アレックスの言葉は、すなわち今帝国が同盟ないし連邦と戦争する事態になれば、かな
らず敗れることを断言したことになる。しかしこれまで数倍の敵艦隊にたいして戦いを挑
み勝ち続けてきたアレックスの実績を知るものには、信じて疑いのない重き言葉となって
いた。ネルソンにしても、完璧な布陣で艦隊を率いていたにもかかわらず、十分の一にも
満たない艦数でいとも簡単にマーガレット皇女を奪われてしまった、その実力を目の当た
りにしていては反論する余地もなかった。

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銀河戦記/鳴動編 第二部 第九章 共和国と帝国 II
2020.10.05

第九章 共和国と帝国



フィッツジェラルド家


 軍事的にも政治的にも、着々と改革を推し進めていくアレックスであったが、どうあが
いてもままならぬ一面があった。
 経済である。
 そしてそれを一手に掌握するフィッツジラルド家とどう対面するかである。
「死の商人」
 と揶揄される一族だった。
 一般市民達は平和であることを望む。
 しかし、武器商人達は平和であっては、飯の種がなくなってしまう。
 次々と最新鋭戦艦を開発生産する大造船所と、死の商人達を傘下に擁する彼らにとって
は、太平天国の世界よりも戦乱動地の世界の方が、居心地がいいはずだ。いずれ彼らの手
によって戦乱の世に導かれていくのは目にみえている。
 たとえばだが……。

 地球日本史において、真珠湾攻撃と呼ばれる奇襲攻撃があったが、米国は事前に察知し
ていた?という陰謀論説がある。
 大日本帝国海軍の真珠湾攻撃を、アメリカ合衆国大統領のフランクリン・ルーズベルト
が、「事前察知をしながらそれをわざと放置した」という説である
 戦争になれば、戦闘機を製造するロッキード・マーチン社やマクドネル・ダグラス社、
、航空母艦ではニューポート・ニューズ造船所などが潤うのだ。
 短期戦では日本に一時的にも追い込まれるだろうが、長期戦に持ち込めれば経済力で日
本に逆転できるとの判断がなされた。

 そういった戦争を望む商人達が、大統領を裏で手を引いていたというのだ。
 ちなみに、幕末に活躍した長崎のトーマス・グラバーも武器商人として来日していた。
 数ある資産家の中でも、その名前を知らぬ者はいないといわれるフィッツジラルド家は、
全銀河の経済覇権を実質上握っていた。共和国同盟内はもちろんのこと、銀河帝国との通
商貿易の九十五パーセントを独占し、連邦側とも闇貿易で通じていると噂されていた。 
 戦時下においては、最も利益を生み出すのが武器の輸出である。そこに暗躍するのが死
の商人と呼ばれる武器輸出業者である。金さえ出してくれれば、敵であろうと誰であろう
と一切関知しない。必要なものを必要なだけ調達して、指定の場所へ運んでやる。
 そしてそれらの死の商人達を影で操っているのが、フィッツジラルド家なのである。

 かつて第二次銀河大戦が勃発し、統一銀河帝国からの分離独立のために立ち上がった、
トランター地方の豪族の中でも最大財閥として、当時の独立軍に対して率先して最新鋭戦
艦の開発援助を行っていたのがフィッツジェラルド家である。

 その総資産は銀河帝国皇室財産をも遥かに凌ぐとも言われており、資本主義経済帝国の
帝王と揶揄されている。
 ことあるごとにランドール提督を目の敵としていた、かのチャールズ・ニールセン中将
もまた彼らの庇護下にあったのだ。
 政治や軍事には直接介入しないが、実力者を懐柔して裏から支配する。

 そんなフィッツジェラルド家の当主が、アレックスに面会を求めてきた。

 トリスタニア共和国は解放されたものの、銀河にはまだ平和は訪れていない。
 バーナード星系連邦との戦争は継続中である。
 そのためにも、軍備の増強も必要であろう。
 あらたなる戦艦の建造は無論のこと、被弾した艦船の修理には彼らの協力を得なければ
ならないことは明白である。
 武器商人との取引も避けては通れないのである。


「アンジェロ・フィッツジェラルドです」
 と名乗った相手は、恰幅のよい体系の50代半ばの男性だった。
 機動戦艦ミネルバを造った造船所を所有している。
 トランターが連邦軍によって陥落された後には、何の躊躇いもなく総督軍にくみして、ミ
ネルバ級2番・3番艦を建造して、メビウス部隊掃討の手助けをした。
 その時々の権力者に媚びへつらって、財力を蓄えて経済面から支配するということだ。
「アレックス・ランドールです」
 差し障りのない挨拶を返す。
「それにしても……。さすがですなあ。総督軍との戦いぶり、じっくりと鑑賞させていた
だきましたよ」
 解放軍及び帝国軍混成艦隊と総督軍との戦いは、TV放映を許可していたから、当然共
和国でも視聴できたということだ。
 それから、軍事や経済に関わる話題が交わされる。
 二時間が経過した。
「どうも長らくお邪魔致しました。今後ともお付き合いよろしく御願いします」
 共和国の軍部最高司令官と、経済界のドンとの会談は終わった。
 何が話されたかは、想像に容易いことだと思われる。

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銀河戦記/鳴動編 第二部 第九章 共和国と帝国 I
2020.09.26

第九章 共和国と帝国




 トランターに君臨していたバーナード星系連邦軍は壊滅した。
 ついにトランターは解放されたのだ。
 取り急ぎ、臨時政府が置かれることとなり、暫定政権の首班として艦隊政務本部長のル
ーミス・コール大佐が就任することとなった。
 首班としては、アレックスが推挙されていたのであるが、銀河帝国皇太子としての問題
もあるので、事を荒げたくないとして辞退したのであった。

 アレックスは、かつてマック・カーサー総督がそうしたように、枢密院議会議長席から
同盟の解放が達成されたことを政権放送で全世界に流した。総督府を廃止して、臨時の暫
定政府を置き、正規の政府が機能するまでの間、これを軍部が代行することを宣言した。
 アレックスが銀河帝国皇太子ということで、同盟所領が帝国の属国となることを危惧す
る民衆に対してこれを断固として否定した。その一環として、追従してきた帝国自治領主
達が、自分の領土権を主張したり略奪に走る気運があるのをとがめて、同盟所領には一切
手を出さないように厳命するとともに、帝国へ強制的に引き返させた。
 共和国同盟を連邦から解放したアレックス達が、まず成さねばならないのは、解放軍と
総督軍を取りまとめ新生共和国同盟軍として再編成することであった。
 まず連邦総督軍として再編成された時点において、特別昇進した将兵にたいしての勧告
が出された。共和国同盟の規定によらない昇進のあったものはすべて、規定通りの階級に
戻されることとなった。ただし、将軍職にたいしては特別な処置がとられることになり、
規定通りの階級に戻るか、将軍職のまま任意退役するかを選択できるようにされた。これ
は、将軍とそれ以下の階級では、退役後の恩給に格段の差があるためで、人情的な処置で
ある。結局将軍職にあるものは全員退役の道を選び、共和国同盟の将軍はすべて解放軍か
らそのまま引き継がれることとなった。解放軍最高司令官であったアレックス・ランドー
ルは実質的に共和国同盟軍の最高司令官となったのである。にしてもアレックスは中将で
ありその上の大将や元帥が空席のままなのを、いぶかしげに思うものもいたが、同盟では
将軍職には定員があって、欠員が出ない限り昇進できないので、職をわざと開けておくこ
とで、戦績さえ上げれば誰でも昇進できる余地を残し、将兵達の士気は大いに上がったの
である。実情は恩給を出せる経済状態ではなかったというのが真相であったのだが。
 先の総督軍総司令だったニコライ・クーパー中将は、元の官位が准将であり総督に取り
入って現在の地位についたことと、戦略家としての知名度も低いために、正式な中将の官
位にあり数多くの実績を持つアレックスの足元にも及ばなかったことから、結局彼も中将
の官位のまま任意退役することとなった。

 その一方で暫定政府を開いて政治と経済の復興を目指すことも必要であった。総督軍を
破ったとはいえ、依然として連邦とは戦争状態にあり、一刻も早い復興を図るために軍部
指導による政治改革を断行した。
 まず最初に行ったのは、かつての全権区代表選挙による枢密院議員議会制度を廃止した
ことである。全権区を選挙活動するにはあまりにも莫大な財力が必要であり、財力・権力
のある実力者による事実上の世襲議員となり腐敗政治の温床となっていたからである。替
わって全権区を三十六のブロックに分けた中選挙区代表による任期五年非解散の上院議員
議会と、各星系ごとの小選挙区代表による任期四年有解散の下院議員議会との二院議会制
度を発動させた。世論をよりよく反映させるために、解散総選挙のある下院議員に立法的
優先権を与えた。
 両院議員の最初の選挙は、準備期間を考慮して四年後に行われることとなった。両院議
員が選出され、議会政治が機能するまでの間、暫定政権として軍部が代行して執り行うこ
ととした。
 アレックスは、アルサフリエニ方面軍最高司令官の職はそのままに、トリスタニア共和
国同盟軍最高司令官に就任した。

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銀河戦記/鳴動編 第二部 第八章 トランター解放 X
2020.09.19

第八章 トランター解放




 惑星トカレフの顛末を、アレックスに報告するジュリエッタ。
「以上のごとく、殿下のご意思に反して、混乱に乗じ自身の領地を広げようと策謀した貴
族は自国に帰還させました。引き続き、同様の行為者に対し厳罰に対処します。殿下にお
かれましては、心置きなくトランター解放に専念してください」
 通信が途切れて、パネルスクリーンの映像が切れた。
「さてと……」
 参謀達の方に向き直って、
「そろそろ始めるとするか」
 と声を掛けると、
「やりましょう!」
「祖国を取り返しましょう」
 参謀達はもちろんのこと、オペレーター達からも声が上がった。
「メビウスのレイチェル・ウィング大佐に繋いでくれ」
 電波妨害されていたが、守備艦隊を蹴散らしたうえに、トランター軌道上までくれば、
もはや妨害は不可能だろう。
「ウィング大佐が出ました」
 パネルスクリーンにレイチェルが映し出された。
「提督、お久しぶりです」
「そちらも元気なようだな」
「作戦発動ですね」
「その通りだ。準備状況は?」
「万端整っております。号令一過いつでも突撃できます」
「わかった。待機して指令を待て」
「かしこまりました」
 通信が終了し、映像は途切れた。
 アンディー・レイン少将に向かって、
「作戦通りに降下作戦に入ってください」
「了解しました」
 アレックスの指令を受けて、レイン少将の指揮による降下作戦が始まった。
 これまでトランターの防衛としての任務に当たっていた艦隊である。
 惑星における連邦軍の配備状況など、すべての情報を知り尽くしているのだ。
 適材適所に部隊を派遣して、次々と攻略していった。


 その頃、地上ではメビウス部隊による反抗作戦が繰り広げられていた。
 かつての統合総参謀本部である総督府を取り囲む艦船の群れ。
 地上では戦車や装甲車が、敵地上部隊との壮絶な戦いを続けている。
 その間を縫うように、モビルスーツが進軍する。
 それらの戦いざまを、後方のミネルバ艦橋から指揮統制するフランソワ・クレール大尉
の元には、続々と報告が届いている。
「地上部隊、総統府を取り囲みました」
 適時的確に指令を下すフランソワ。
「白兵部隊を突入させて下さい」
 ミネルバには強靭な白兵部隊が編制されている。
 かつての士官学校模擬戦闘において、ミリオン・アーティス率いるジャストール校が守
る第八番基地を攻略した白兵部隊。その時に従軍した士官たちが、昇進しながらもより強
い部隊へと鍛え上げてきたのである。
 *参照/模擬戦闘
 戦車の砲撃一発、正面玄関が吹き飛ぶ。
 戦車や装甲車の後ろに隠れて進んでいた歩兵が、一斉に総統府へとなだれ込んでゆく。

 空中では敵空戦部隊を壊滅して、制空権を確保したミネルバの空挺部隊から、降下兵が
舞い降りてゆく。
 その一部は、総統府の屋上へと降下して、階下へと突き進む。
 上からと下からと挟撃を受けた総統府は、数時間後には白旗を上げた。
 ちなみに、地球日本国で白旗を上げるという正式な降伏(戦時国際法による)が認めら
れたのは、江戸末期ペリー艦隊が幕府に、『開国しないなら攻撃するから、降参するなら
掲げよ』と白旗を送り付けたのが最初と言われている。
 1899年、第1回万国平和会議で採択されたハーグ陸戦条約第三章第32条には、白旗を掲
げて来た者を軍使とする規定があり、これを攻撃してはならないこととなっている。

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銀河戦記/鳴動編 第二部 第八章 トランター解放 IX
2020.09.13

第八章 トランター解放


IX


 惑星トカレフに近づく艦隊があった。
 ジュリエッタ皇女が坐乗するインヴィンシブル率いる第三皇女艦隊である。
 自国領エセックス侯国の伯爵が、先走って共和国同盟への簒奪に走ったとの報を受けて、
自ら説得のために足を運んだのである。
 今後とも同じような轍を踏まないように、きっちりとした態度を見せねばならない。
 カーペンター伯爵艦隊を取り囲むようにして、第三皇女艦隊の配備が完了した。
 インヴィンシブル艦橋に玉座するジュリエッタが発令する。
「トカレフを包囲する艦隊に威嚇射撃を行います」
 ホレーショ・ネルソン提督は、その意を察して下令する。
「威嚇射撃用意!艦に当てない至近に設定」

 伯爵艦隊では、突然の攻撃に右往左往していた。
「今の攻撃はなんだ?」
 軌道待機の艦隊を預かっている指揮官が尋ねる。
「味方艦、帝国艦隊です」
「味方だと?何故、攻撃する」
「巡洋戦艦インヴィンシブルを確認。ジュリエッタ様の艦隊です」
 皇女艦隊だと知って狼狽える指揮官。
 まさか皇女相手に反撃するわけにもいかず、そもそも艦船数で敵うはずもなかtった。
「今の攻撃は威嚇だけのようです」
「入電しました。インヴィンシブルからです」
「伯爵様に繋げ」
 それが精一杯の指令だった。

 通信は伯爵の元へと中継される。
「ジュリエッタ皇女様から通信が入っています」
「皇女様から?繋いでくれ」
 副官が通信端末を開いて受信操作をする。
 壁際のパネルスクリーンにジュリエッタ皇女の姿が映し出される。
「これはこれは皇女様。こんな辺鄙なところに何用でございましょう」
 川の流れを受け流す柳のように、平然至極のように尋ねる伯爵。
「それはこちらが聞きたい」
「何をでしょうか?」
「では聞くが、殿下がこの共和国同盟領に進撃した趣旨は理解しておろうな」
「はい。バーナード星系連邦から解放するためです」
「ならば問う。連邦を追い出したまでは良い。代わりに占領政策を行うとは、殿下の意志
に反するとは思わなかったのか?」
「そ、それは……」
 さすがに言葉に詰まる伯爵だった。
 一惑星の城主という身分では飽き足らないと感じていた。
 もっと大きな権限や領地が欲しかったのである。
 その気持ちが先走りして、大胆にも同盟領の占領という行為になったのだ。
 窓の外には、ジュリエッタが派遣したと思われる部隊が次々と降下していた。
 やがて、伯爵の居室に銃を構えた兵士がなだれ込んできた。
 そこへ悠然と姿を現す一人の文官。
 ジュリエッタ艦隊の中でも、戦闘に関わらずもっぱら政務に従事することを任としてい
た。
「政務次官補のレイノア・ロビンソン中佐です」
 と名乗った。
「この惑星トカレフの解放政策のために派遣されました」
「解放政策?」
「はい。アレクサンダー殿下のご意思のままに、このトカレフを元の共和国体制に復帰さ
せるためにです」
「帝国の領土にするのではなく、共和国制度に戻す……それが殿下のご意思なのか?」
「御意!伯爵、あなたを拘禁させて頂きます」
 配下の兵士に指令する政務次官補。
 兵士に両腕を掴まれ、うなだれる伯爵。

 ほどなくして伯爵配下の艦隊はサセックス侯国へと帰還することとなった。

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