1. 硬化性萎縮性苔癬とは
外陰性器、会陰部に激しい痒みや灼熱感を伴った硬化局面を生じる疾患ですが、躯幹・四肢にも発症します。通常初発するときは潜行性であるために本人はなかなか気づきません。躯幹に生じた場合は自覚症状を欠くことが多く、角化した白い扁平な丘疹が生じます。これらの丘疹が寄り集まって角化性の白い硬化した局面となります。
2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
1年で2〜3人までの新患が大学病院に訪れている位で比較的珍しい疾患ですが、全国でも数百人程度と思われます。
3. この病気はどのような人に多いのですか
女性は男性に比べて約10倍の発生率を示しています。また女性の外陰部の病変は40〜70歳に好発します。この病気の約半数は外陰部に、残りの半数は外陰部以外にも病変を有しています。外陰部以外の病変を来す場合は若年者に多い傾向があります。男性の場合は再発性亀頭包皮炎、包茎の人に多い傾向があります。皮膚の病理組織の所見から診断します。
4. この病気の原因はわかっているのですか
家族内発症例やある特定の主要組織適合抗原との相関から遺伝因子、閉経後に多く発症することから女性ホルモンの消長との関連、また、内分泌異常や免疫学的機序が推測されていますが、原因は不明です。
5. この病気は遺伝するのですか
ある特定の主要組織適合抗原を有している人に発症が多いとされていますが、この抗原を持つ人のすべてに起こるとは限りません。主要組織適合抗原HLAは遺伝的に支配されていますが、この病気は遺伝病ではありません。
6. この病気ではどのような症状がおきますか
激しい痒み、疼痛、灼熱感を伴った白い皮膚硬化局面が陰部に好発します。四肢・躯幹にも発症しますが、この部位ではあまり自覚症状がありません。女性の場合、膣を中心とした部位に境界がはっきりした皮膚硬化が見られます。粘膜に及ぶこともあります。出血性の水疱を形成したり、表面がただれることもあります。男性の場合は亀頭包皮の内側や亀頭に生じやすい傾向にあります。尿道口に及びますと尿道狭窄をおこします。ときに女性ではサイロイド、ミクロゾーム、サイログロブリン等に対する抗体が検出されることもありますが、この病気は全身症状を伴い他の臓器を侵すことはありません。
7. この病気にはどのような治療法がありますか
現在まで、様々な治療が試みられてきましたが、なかなか充分に満足できる治療法がないのが現状です。しかし、強力なステロイド外用剤が効果的な場合があります。またステロイドの局所への注射が効果的であったという報告もあります。しかし、長期間のステロイド外用剤の塗布は、皮膚の真菌症を引き起こしたりする場合もありますので、定期的な診察を受ける必要があります。
8. この病気はどういう経過をたどるのですか
この病気は慢性に経過します。若年者では陰部以外の部位に生じた場合には思春期頃に自然寛解も見られます。慢性に炎症性の変化が持続しますので、時にその部位から、特に外陰部の皮疹からは悪性の変化が起こることがあります。半年に一度は定期的に受診して経過を観察して貰う様に務めて下さい。
情報提供者
研究班名 皮膚・結合組織疾患調査研究班(強皮症)
情報更新日 平成20年4月29日
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