難病(特定疾患)と生活保護・社会保障を考える【携帯/モバイル版】

この場を借りて、難病(特定疾患)と生活保護などの社会保障制度について考えてみたいと思います。

特発性血栓症/特定疾患情報

診断・治療指針

1. 特発性血栓症とは
 生まれつき血栓症(血管の中で血液が固まり、血液がうまく流れなくなる病気)を起こしやすい、あるいはなんらかの病気と密接に関連して血栓症が起こりやすいということがあります。しかし、その原因がはっきりとわからないものを特発性血栓症といいます。若い年令で血栓症が起こる、何度も血栓症をくり返しなかなかな治らない、血のつながった近親者の中に血栓症の方が多い、何でもないはずのことがきっかけになって血栓症が起こるなどということでこの病気が見つかることがあります。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
 現在のところ正確な数は不明で、調査が進められています。

3. この病気はどのような人に多いのですか
 生まれつき血栓症を起こしやすい場合には、男女ともほぼ同じ比率で罹り、生まれつきの素因があっても実際に血栓症を起こすのは20〜30歳代以降が多いようです。また、病気が発症する引き金としては、他の疾患で手術を受けた際や長期に臥床する場合、車内や飛行機で長時間座っている場合(いわゆるlong flight症候群、エコノミークラス症候群とも呼ばれる)妊娠、感染症、避妊薬内服などが挙げられます。

4. この病気の原因はわかっているのですか
 一部のものについては原因がわかってきました。血液は血管が破れ、血管の外に出る(出血する)と固まって、それ以上血液が血管の外に漏れ出ないようにする働きをもっています。一方では、血管の中を流れているときに血液が固まってはいけないので、固まらないようにする働きもあります。これらの一見矛盾する働きが体の中ではうまく調節されています。血管の中を流れているときに血液が固まらないのは、いくつかの血液中の特殊なたんぱく質(凝固阻止因子)や血管の内側を覆っている血管内皮細胞の働きによるものと考えられています。生まれつきこれらの働きに障害があるために血栓症を起こしやすくなることがあります。また、ある種の病気では血栓を起こす物質が大量につくられ、体に備わった力ではこれを押さえきれないために血栓症が起こることがあります。

5. この病気は遺伝するのですか
 すべてではありませんが遺伝するものがあります。

6. この病気ではどのような症状がおきますか
 血栓のできる場所によって、症状はさまざまです。最も多いのは下肢の太い静脈の血栓(下肢深部静脈血栓症)です。足がむくみ、靴や靴下の跡がつく、正座できない、痛みを伴って赤紫色に腫れてくるなどです。下肢深部静脈にできた血栓の一部が流れて肺の血管につまる(肺血栓塞栓症)ための胸痛、呼吸困難などです。

7. この病気にはどのような治療法がありますか
 血栓を取り除くために、ウロキナーゼ、遺伝子組み替え組織プラスミノゲンアクチベーターなど血栓を薬で溶かす治療、外科的な血栓除去術などが行われます。同時に、新たな血栓ができてこないようにヘパリンやワーファリンなどの抗凝固薬が用いられます。血栓がなんらかの病気によりひき起こされていると考えられる場合には、それに対する治療が必要になります。凝固阻止因子の欠乏に対しては、それを補充することが可能なものもあります。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか
 重篤な血栓症を発症しない限り、予後は良好です。しかし肺血栓塞栓症を併発すると症状が重篤で死に至ることもあります。また原因がある場合はその原因を取り除かないと(治療しないと)血栓症を繰り返すことがあります。生まれつき血栓症を起こしやすい場合は、血栓症を起こしやすいきっかけ(手術、妊娠、感染症、避妊薬内服など)に注意して日常生活を送ることが必要であり、医師の管理を受けることが勧められます。


情報提供者
研究班名 血液系疾患調査研究班(血液凝固異常症)
情報更新日 平成20年5月3日

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