難病(特定疾患)と生活保護・社会保障を考える【携帯/モバイル版】

この場を借りて、難病(特定疾患)と生活保護などの社会保障制度について考えてみたいと思います。

不応性貧血(骨髄異形成症候群, MDS)/特定疾患情報

診断・治療指針

1. 不応性貧血(骨髄異形成症候群, MDS)とは
 赤血球、白血球、血小板といった血液細胞(血球)は骨髄の中で造血幹細胞といわれる細胞より作られます。血球の寿命は短いため、骨髄の中では生涯にわたり大量の血球が作り続けられていますが、何らかの理由で十分に血球が作られなくなると、血球減少(貧血、好中球減少、もしくは血小板減少)がおこります。不応性貧血というのは、造血幹細胞に異常が生じ、十分な量の血球を作ることができなくなり、その結果血球減少を起こす病気です。異常な造血幹細胞から作られた血球は、形態も異常となります。このように、造血幹細胞に内在する異常の結果、血球形態にも異常を生じることを異形成と呼びます。最近では、血球形態の異形成と血球減少を認める疾患群ということから、骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome; MDS)という名称が一般的に用いられています。骨髄異形成症候群の患者さんは経過中に急性骨髄性白血病になる危険性が高いことも知られています。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
 年齢とともに発症率が増加しますので、対象とする集団の違いにより報告されている発症頻度は様々です。欧米における患者年齢中央値は70歳で、1年間に10万人あたり3-10名がこの病気を起こすといわれています。発症頻度の違いは、再生不良性貧血や急性白血病との鑑別が難しいことも影響しているのかもしれません。日本では、平成10年度の調査で患者数は7100人、有病率は10万人あたり2.7人と推定されていますが、次第に増加傾向にあると考えられます。

3. この病気はどのような人に多いのですか
 男/女比は1/0.66で男性が女性よりも多く、年齢別では高齢者に多く認められます。しかし、日本を含むアジアでは、欧米に比べ比較的若年発症(40-50歳代)の患者さんが多いことが知られています。この病気を起こす環境因子や遺伝背景は知られておりませんが、放射線治療や抗がん剤治療を受けられた方では、この病気を発症する危険が高まることが知られています。

4. この病気の原因はわかっているのですか
 実際の発病に関わる原因は現在もなお全く不明です。年齢とともに発症率が高まること、ならびに抗がん剤や放射線治療を受けた患者さんで発病率が高いことから、自然界を含む放射能被曝、化学薬物ならびに天然の発がん物質への曝露との関連が示唆されています。老化現象や有害物質により、造血幹細胞の遺伝子損傷がおこり、修復できないままに損傷が蓄積されていった結果、異常な造血幹細胞が生まれ、骨髄異形成症候群を発症するのでないかと考えられています。

5. この病気は遺伝するのですか
 生まれつきみられる血液疾患には遺伝する可能性のある病気が知られています。そのような病気を持つ患者さんの一部の方は骨髄異形成症候群を起こすことがあります。ただし、このような方は小児期に発症するこの病気の患者さんのなかでも一部を占めるにすぎません。成人期以降に発症する患者さんに限ってみたとき、この病気が特に多く見られる地域や人種、また家系は知られておりません。すなわち、小児期に発病される患者さんのごく一部を除いては、この病気が遺伝するという証拠はありません。

6. この病気ではどのような症状がおきますか
 頻度の高いのは血球減少に伴う症状ですが、白血球異常に由来する症状が見られることもあります。血球減少による症状としては、貧血症状、つまり、顔色不良、息切れ、動悸、全身倦怠感、脱力感、労作時の易疲労感が見られます。高度の白血球減少がおこれば、細菌やかびなどの病原体に対する抵抗力が低下し、肺炎、腸炎、さらには敗血症といった感染症を起こします。血小板が少なくなるとささいなことで出血しやすくなり、軽度の打撲で大きなあざをつくる、歯磨き後の歯肉出血が止まりにくい、鼻出血を繰り返す、といった症状が見られますが、外傷や感染症を契機として頭の中や胃腸などに重大な出血を起こすこともあります。また、機能が異常の白血球が作られることで、原因のわからない熱が続いたり、関節が腫れたり、広い範囲に皮疹がでることもあります。

7. この病気にはどのような治療法がありますか
 骨髄異形成症候群の患者さんは、血球減少による種々の症状以外にも、急性骨髄性白血病になりやすいという問題点があります。骨髄異形成症候群を経て生じた急性骨髄性白血病に対して、抗がん剤治療の効果は十分でありません。そこで、末梢血や骨髄の検査所見に基づいて、白血病へのなりやすさを予測し、治療法を決めています。白血病になる危険性が低い患者さんでは、主に血球減少に対する治療を行います。血球減少に伴う症状がなければ経過を観察するのみですが、貧血症状が強くなれば赤血球輸血を、血小板減少のため出血傾向が見られる場合には血小板輸血を行います。頻回の輸血が必要となった患者さんには同種造血幹細胞移植(骨髄移植、末梢血幹細胞移植、臍帯血移植)も検討されます。

 白血病になる危険が高いと推測された患者さんに対しては、慎重に経過観察をおこない、必要に応じて抗がん剤治療や同種造血幹細胞移植を行います。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか
 経過に個人差が大きいことはこの病気の特徴の一つです。偶然健康診断などで見つかったと仮定したとき、ほとんど自覚症状のないまま長期間経過することもあれば、徐々に貧血が進行し定期的な輸血が必要になることもあります。高度の好中球減少や血小板減少のため生命に関わるような感染症や出血症状をきたすこともあります。また、約半数の患者さんが5年以内に急性骨髄性白血病になるといわれています。


情報提供者
研究班名 血液型疾患調査研究班(特発性造血障害)
情報見直し日 平成20年5月1日

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