難病(特定疾患)と生活保護・社会保障を考える【携帯/モバイル版】

この場を借りて、難病(特定疾患)と生活保護などの社会保障制度について考えてみたいと思います。

重症筋無力症/診断・治療方針(公費負担)

特定疾患情報認定基準

■定義
重症筋無力症の臨床的特徴は、骨格筋の筋力が運動の反復により低下すること(易疲労性)、夕方に症状が憎悪すること(日内変動) である。主な症状は眼瞼下垂、複視などの眼症状、四肢・前頸筋の筋力低下、構音障害、嚥下障害、さらに呼吸障害である。症状の程度を示すものとしてMGFA分類が用いられる。

神経筋接合部の後シナプス膜に存在するアセチルコリンレセプター(AChR)に対する自己抗体により神経筋伝達が障害される自己免疫疾患である。胸腺腫や甲状腺機能亢進症を合併することがある。

■疫学
重症筋無力症の有病率は、人口10万あたり5.1人(1987年)で、男女比は1:2である。発症年齢は女性で10歳以下と30〜40歳代にピークがある。男性では10歳以下と40〜50歳代にピークがある。胸腺腫合併例は女性20%に対し、男性32%である。特定疾患治療研究受給者証交付件数は平成14年度13,785件である。欧米と異なり、わが国では小児発症例が多いことが特徴である。

■病因
重症筋無力症は、神経筋接合部の後シナプス膜に存在するニコチン性アセチルコリンレセプター(AChR)に対する抗体が生じ、この抗体により神経筋伝達がブロックされる自己免疫疾患である。本症患者の85%に抗AChR抗体が証明される。
眼筋型では抗体が陰性のことが多い。AChRの分子構造も解明され、アセチルコリン結合部位、抗体反応領域など詳細に解析されている。更に胸腺 細胞の病的な役割、抗体産生B細胞の活性化機構へと研究が進んでいる。

抗AChR抗体価と疾患の重症度とは必ずしも相関しないことに留意する。

最近、抗AChR抗体以外に骨格筋やイオンチャンネルに対する抗体の存在が明らかになってきており、特に骨格筋の一部の蛋白質(リアノジン受容体)に対する抗体は胸腺腫合併患者に高い陽性率が示されている。また、最近抗MuSK抗体が抗AChR抗体陰性例の一部に認められることが明らかとなった。抗AChR抗体以外の病的因子の解明が今後の課題である。

■症状
眼症状として眼瞼下垂、眼球運動障害による複視がみられる。四肢の筋力低下は近位筋に強く、髪を梳かしたり、歯ブラシを使う途中、あるいは階段などで異常に疲れやすいことに気付く。ベッドサイド検査では上肢挙上時間の短縮、握力計では3回目に著明な低下がみられ、しゃがみ立ちも数回しかできないなどの特徴がある。

顔面筋、咀嚼筋も障害され頬をふくらませない、食事の途中で噛めないことがある。前頸筋の障害のため臥位から頭を挙上できない。
軟口蓋、咽喉頭筋、舌筋の障害により嚥下障害、構音障害が生じる。長い会話や電話の途中で言葉が鼻声になり聞き取れなくなる。  重症例では呼吸障害をきたす。

合併症としては甲状腺機能亢進症や全身性エリテマトーデス、関節リウマチなどの膠原病を伴うことがある。

■検査
(1) エドロホニウム (テンシロン) 試験陽性 (症状軽快)
(2) Harvey-Masland試験陽性 (誘発筋電図によるwaning現象)
(3) 血中抗AChR抗体陽性

■治療
(1) 胸腺腫例は全例、摘除術を施行する。
(2) 眼筋型はコリンエステラーゼ阻害薬とステロイド療法
(3) 全身型は胸腺摘除術、ステロイド療法
(4) 難治例は血漿交換療法、タクロリムスなどの免疫抑制薬併用

■予後
上記の治療により80%の症例は軽快又は寛解する一方、ADL、QOLの観点からは、なお30%の患者が不満を訴え、社会生活に困難をきたしている症例も少なくない。


免疫性神経疾患に関する調査研究班から
重症筋無力症 研究成果(pdf 39KB)
この疾患に関する調査研究の進捗状況につき、主任研究者よりご回答いただいたものを掲載いたします。

この疾患に関する関連リンク
免疫性神経疾患に関する調査研究班ホームページ


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