難病(特定疾患)と生活保護・社会保障を考える【携帯/モバイル版】

この場を借りて、難病(特定疾患)と生活保護などの社会保障制度について考えてみたいと思います。

ペルオキシソーム病/特定疾患情報

診断・治療指針

1. ペルオキシソーム病とは
ペルオキシソームは細胞内にある直径0.1〜0.5ミクロンの球形の細胞内小器官です。ペルオキシソームには様々な酵素が含まれ、活発な代謝を行っています。ペルオキシソームが正常に形成され、機能するためには多種類の遺伝子(PEX遺伝子群)が必要です。ペルオキシソーム病には、ペルキオシソーム内に存在する酵素を作る遺伝子の異常症(副腎白質ジストロフィーなど)とPEX遺伝子の異常症(ペルキオシソーム形成異常症)が含まれます。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
副腎白質ジストロフィーは出生男子2〜5万人に1人の割合で発病します。これは代謝異常症の中では比較的多い部類に属します。ペルオキシソーム形成異常症は数十万人に1名と考えられています。

3. この病気はどのような人に多いのですか
特定の生活習慣や地域などで発病することはありません。原因は遺伝子の異常で、その遺伝子異常は家族から受け継がれる場合(遺伝)と突然変異による場合があります。副腎白質ジストロフィーは原則的に男性のみが病気になりますが、他は男女差はありません。ペルオキシソーム形成異常症は乳幼児期に発病しますが、副腎白質ジストロフィーの約半数は学童期、半数は成人発病です。

4. この病気の原因はわかっているのですか
副腎白質ジストロフィーはX染色体にあるALD遺伝子の異常が原因で、極長鎖脂肪酸が体内に蓄積し、神経の変性や副腎不全が生じます。ペルオキシソーム形成異常症は13種類のPEX遺伝子のうちの1つに異常が生じるとペルオキシソーム全体の機能が低下して発病します。

5. この病気は遺伝するのですか
前述したように遺伝子異常は家族から受け継がれる場合(遺伝)と突然変異による場合があります。ペルオキシソーム形成異常症は常染色体劣性遺伝なので、両親は病気の遺伝子を1つずつ持っていますが健康です。そのようなカップルからペルオキシソーム形成異常症の患者が生まれる確率は25%です。副腎白質ジストロフィーはX連鎖劣性遺伝形式なので、父親が患者の場合、娘はみな保因者となり、息子はみな健康です。母親が保因者の場合、息子は50%の確率で発病し、娘の50%は保因者となります。女性の保因者は通常発病しません。家族に同じ病気の人や保因者がいなくても、突然変異で遺伝子異常が生じ、発病することがあります。

6. この病気ではどのような症状がおきますか
ペルオキシソーム形成異常症では、特徴的な顔つき(額が広い、両眼が離れている、鼻が低い、顎が小さい)、筋力が弱い、乳を飲まない、発達の遅れ、痙攣、視力や聴力の低下などが共通してみられます。副腎白質ジストロフィーは小児の場合、学業低下、運動能力の低下、視力・聴力低下などの症状で発病し、数年で寝たきりになります。成人では、歩行障害、痴呆、精神障害などで発病します。副腎機能の低下で皮膚や唇、歯茎が黒くなることがあります。

7. この病気にはどのような治療法がありますか
ペルオキシソーム形成異常症については、有効な治療法がありません。小児の副腎白質ジストロフィーについては、骨髄移植が有効と考えられています。骨髄移植が成功した12人の小児患者の長期観察で、神経障害と脳MRI所見の進行停止あるいは改善が示されました。しかし神経症状が進行した例では効果はあまり期待できません。血中の極長鎖脂肪酸を正常化するロバスタチンやロレンゾ油の効果については今のところ未確定です。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか
ペルオキシソーム形成異常症の多くは乳幼児期に死亡します。副腎白質ジストロフィーは小児の場合は数年で寝たきりとなり死亡します。成人で発症した場合、予後の良い人と進行する人がいます。


情報提供者
研究班名 神経・筋疾患調査研究班(運動失調症)
情報見直し日 平成19年6月27日

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