難病(特定疾患)と生活保護・社会保障を考える【携帯/モバイル版】

この場を借りて、難病(特定疾患)と生活保護などの社会保障制度について考えてみたいと思います。

脊髄性進行性筋萎縮症/特定疾患情報

診断・治療指針

1. 脊髄性進行性筋萎縮症とは
脊髄性進行性筋萎縮症とはspinal progressive muscular atrophy:SPMAの訳であり、脊髄性筋萎縮症(SMA)とも呼ばれます。主に脊髄前角の運動神経細胞が変性し、全身の筋力低下と筋萎縮が徐々に進行性に悪化する病気です。SPMAは同じ原因による単一の疾患ではなく、遺伝性のほか非遺伝性のものもあり、発症年齢も乳児から成人まで広範にわたっています。現時点では大きく、・常染色体性劣性遺伝を示し、乳児〜小児に発症する狭義の脊髄性筋萎縮症(I 型:重症型、II 型:中間型、III 型:軽症型)、・伴性劣性遺伝を示し、成人に発症する球脊髄性筋萎縮症、・成人に発症し、下位運動ニューロン徴候のみを示し、筋萎縮性側索硬化症(ALS)とほぼ同一疾患と考えられている群(以下、成人発症のSPMAと呼ぶ)、の3群に分けられます

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
乳児〜小児に発症する狭義の脊髄性筋萎縮症の罹患率は10万人あたり3〜4人です。乳児脊髄性筋萎縮症(別名:ウェルドニッヒ・ホフマンWerdnig-Hoffmann病)は,出生2万人に対して1人前後と言われています。十分な疫学調査はありませんが、球脊髄性筋萎縮症の有病率は欧米に比べて我が国の方が高いと考えられています。成人発症のSPMAは筋萎縮性側索硬化症よりは少ないです。

3. この病気はどのような人に多いのですか
男女差なく20、30歳代の発症が多いが、あらゆる年齢層にみられます。

4. この病気の原因はわかっているのですか
乳児〜小児に発症する狭義の脊髄性筋萎縮症の I〜III 型は、遺伝子座も同じ第5染色体にあることから同じ病因に由来し、脊髄前角細胞ではアポトーシスによる神経細胞死が生じていると考えられています。原因候補遺伝子として神経性アポトーシス抑制蛋白遺伝子と生存運動神経細胞遺伝子の2つが同定され、これらの遺伝子異常と本疾患の病態との関連について研究が進められています。球脊髄性筋萎縮症では、アンドロゲン受容体遺伝子内のCAGという3塩基配列の繰り返し回数が異常に延長しており、この遺伝子異常は蛋白として伸長したポリグルタミンの発現を介して発症に関与すると考えられていますが、なぜ運動神経細胞が特異的に障害されるかについてはなお不明であり、病態解明に向けた研究が急速に進展中です。成人発症のSPMAは筋萎縮性側索硬化症と同じ原因によると想定されていますが、まだ解明されていません(筋萎縮性側索硬化症の項を参照して下さい)。

5. この病気は遺伝するのですか
遺伝するものと遺伝しないものがあります。乳児〜小児に発症する狭義の脊髄性筋萎縮症は常染色体性劣性遺伝形式をとります。球脊髄性筋萎縮症はX染色体性劣性遺伝形式をとりますので男性のみに発病します。ALSの亜型と考えられている成人発症のSPMAは遺伝性ではありません。

6. この病気ではどのような症状がおきますか
脊髄の運動神経細胞の数が進行性に脱落しますので、全身の筋力低下と筋萎縮が進行性に悪化し、四肢腱反射も低下しますが、上位運動ニューロン徴候(錐体路徴候とも呼ばれるもので、四肢腱反射亢進とバビンスキー反射などがみられる)や感覚障害はみられません。

7. この病気にはどのような治療法がありますか
残念ながら現時点では、明らかに症状を改善させたり進行を阻止できる薬は実用化されていません。症状の進行に応じた運動療法とともに、誤嚥予防や感染予防などの生活指導を行います。成人発症のSPMAに対しては筋萎縮性側索硬化症に準じて治療します。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか
未治療の場合、症状が徐々に進行することが多いです。時に症状が進行した後停止あるいは改善することもあります。


情報提供者
研究班名 神経・筋疾患調査研究班(神経変性疾患)
情報見直し日 平成17年5月30日

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