機動戦艦ミネルバ/第六章 新造戦艦サーフェイス
II  海底基地司令部。  正面の各方面ごとに配置されたスクリーンを見つめながら、 「ラグーン地域が手隙になっていますね」  レイチェルが呟くと、 「あそこは砂漠地帯のようですね。地上からは何も見えないですが、地下には防空ミサイ ル・サイトが隠れています」  すかさず副官が答える。 「今のうちに叩いておいた方が良いでしょう」 「ミネルバを向かわせましょうか?」 「そうしてください」  指令を受けて、ラグーン地域へと転戦してきたミネルバ。  フランソワが指令を艦橋要員に伝える。 「この砂漠の地下を掘り抜いて、防空ミサイル・サイトが建設されています。今回の任務 はそれを破壊します」 「また流砂爆雷の絨毯爆撃でもしますか?」 「それではサイロの破壊程度が確認できません。どこかに物資搬入口があるはずです。そ こからモビルスーツ隊を突入させて、中から破壊します」 「それではこの際、例の二人を投入しますか?能力は高いですから何とかやってくれると 思います」 「そうですね。いつまでも訓練生のままでもいられないでしょう」 「それはさておき、地下にあるものをどうやって探り出しますか?」 「磁気探知機と重力探知機を使いましょう」 「赤外線探知も追加しますか?」 「ええ、よろしく」  ミネルバの探知機能のすべてを総動員して、流砂砂漠の地下施設を探り始める。 「地下施設の位置情報を、ウィング大佐の方でも把握できなかったのでしょうか?」  そもそも旧共和国同盟軍の施設であるならば、第十七艦隊所属のミネルバ情報部でも知 っていてよさそうであるが。 「国家における最終防衛施設ですからね。これが発動する時は、宇宙艦隊が全滅もしくは 反乱を起こした時なので、宇宙艦隊司令部から独立した惑星警備軍の配下にあります」 「なるほど、納得しました」  管理組織が違うからということにしたようだ。  バーナード星系連邦軍のタルシエン要塞の機密情報を奪ったくらいの手腕からして、警 備軍の地下施設の情報くらいは簡単に取得できただろう。それを伝えないのは、何らかの 目的があるはずだ。  ミネルバには未熟兵が多数乗艦している。反攻作戦本番の前にして、練熟度を上げるた めに、周辺基地潰しを命じている風がある。 「地下施設、発見しました!」  正面パネルスクリーンに地上付近の地図が映し出され、地下施設が赤く点滅している。 「さらに入り口らしきポイントはここです」  示した部分は青く点灯していた。 「総員起こし、戦闘配備!」 「サブリナ中尉とナイジェル中尉をここへ」  招聘されて艦橋にやってきた二人の中尉に、 「例の二人を連れて地下施設を攻略してください」 「自分達に、あの二人をですか?」  サブリナが確認する。 「お願いできますか?」 「判りました。二人を連れて攻略の任に着きます」  カッと踵を合わせて敬礼するサブリナ。 「よろしくお願いします」  退室するサブリナ中尉を見届けて、副官が尋ねる。 「どうして二人をサブリナ達に任せるのですか?」 「だからですよ。二人はカサンドラ訓練所の件で、多少なりともサブリナに恨みを抱いて いるようですからね、いざという時に問題が生じるかも知れません。Xdayの全面反攻作戦が始まる前に、軋轢を解消させておかなければなりません。今回の作戦で、それが可能かどうかを判断するためです」 「なるほど」  納得する副官。
     
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