機動戦艦ミネルバ/第五章 ターラント基地攻略戦


 時間を遡ること、オーガス班が全滅した時点。

「攻撃、中止!」
「攻撃中止!」
 耳を劈くような発砲音が一斉に止んだ。
「オーガス班、全滅のもようです」
「作戦通りだ」
「この勢いに乗ってハイネのC班を料理しに行きますか」
「いや、その前に一旦陣地に戻って補給をしておこう」
 陣地に戻って補給を受けるサブリナ班。
 オーガス曹長の班への遠距離ミサイル攻撃で、ほとんどの弾薬を使い果たしていた。
 補給を受けながら、次なる作戦の構想を練っているサブリナ。
 副隊長のカリーニ少尉が尋ねた。
「よろしいのですか?」
「なにがだ?」
「こうしている間にも、B班がC班を撃滅に成功すれば、功績点は全部B班のものになり、A班を全滅させた功績点の分配率6割と合わせれば、仮に我々D班がB班を全滅させても総合点で追いつけません」
「いいじゃないか。いかに功績点を挙げようとも死んでしまっては元も子もない。ランドール提督の口癖だよ。生きて帰ることこそが勝利者だとね。我々はB班を全滅させればいいんだ」
「ではB班を倒す算段があるということですか?」
「ともかくB班とC班に存分に戦ってもらうことだ」
「つまりハイネ上級曹長とナイジェル中尉とが戦って消耗するのを待つわけですね」
「漁夫の利というやつだ」
「どちらが勝っても戦力低下は否めないですよね」
「まあ、どちらが勝つかは想像がつくがな」
「ナイジェル中尉ですね」
「たぶんな」

 やがて、C班の敗北という情報が入った。
「小隊を指揮させるには、まだまだ経験不足か……」
 思案に暮れるサブリナだった。
 そんな様子を見つめているカリーニ少尉。
「ん、どうした? 顔に何かついているか?」
 見つめられているのに気が付いたサブリナがたずねる。
「いえね。考えていたんですよ。中尉殿がC班のリーダーに副隊長の私ではなく、ハイネ上級曹長を推薦したのか」
「それで?」
「ハイネは、中尉殿が小隊の隊長として任官した時に付いた初めての部下の一人ですよね」
「まあな。当時は伍長だったが」
「いろいろと経験させてみるのも、本人の隠れた能力を引き出す可能性を見出すことになります。中尉殿は、チャンスを与えられたのですね」
「直属の部下に対する、えこひいきだと思うか?」
「そんなことはないでしょう。部隊を指揮できる者が一人でも多いほうが、作戦の幅が広がりますからね。目先のことではなく、将来を見越して行動することは大切だと思います」
「ありがとう」
 その時、機体への補給が完了した報告がもたらされた。
「それじゃあ、行くとするか」
「ナイジェル中尉を叩きにね。ハイネ上級曹長の仇を討ちましょう」
「ようし、出撃準備だ」
「総員出撃準備。機体に乗り込め」

 砂塵を上げて進撃を開始したサブリナ達。
 やがて目の前に森林地帯が広がった。
「何があるか判らん。慎重に進め」
 警戒しながら突き進む。
 と、突然。
「止まれ!」
 サブリナが叫んだ。
 全軍が停止する。
 サブリナ機のコックピットが開いてサブリナが降りてくる。
 そして慎重に周囲の探索をはじめた。
 そこら中に爆薬が仕掛けられているのが確認できた。
「なるほど、ブービートラップか……。後方の憂慮を最小限に食い止めておいて、前面の敵に全精力を注ぐというわけだな。ハイネらしい考えだ」
「どうします? 迂回しますか?」
「せっかくのトラップだ。利用させてもらおうじゃないか」