あっと! ヴィーナス!!(38)
ハーデース編 part-3 「地図だ!Google Map のようだな。地図の真ん中にマークがあるぜ」 「ローマ郊外のようだな」 「俺のスマホに届いたってことは、俺がその場所に『ファイルーZ』とやらを持っ て来いということだよな」 「まあ、そうなるだろうね」 「ファイルーZを、そこに名がある弘美が持って来いか……」 「上手くいけば、一石二鳥というやつね」 「経路ナビを立ち上げてっと、行き先は地図のマーク地点、出発地は現在地、そし て徒歩で行くと……日本列島北部を縦断して宗谷岬から海を渡って樺太へ、さらに 間宮海峡を渡ってロシアに上陸、シベリア鉄道沿いに行くこと、106日と16時間 (13,146km)と表示されたぞ!」  ディアナがスマホをのぞき込む。 「そのようだな」 「これって、24時間ひと時も休まず、飲み食いもせずにひたすら歩き続けた結果の 数値だろうな」 「あなたは馬鹿ですか!?誰が徒歩で行く人がいますか?」 「そりゃ海の上は歩けねえが、宗谷海峡や間宮海峡くらいなら、泳いで渡る自信は あるぞ」 「そうじゃなくって!」 「じゃあ飛行機で行くのか?俺、そんな金持ってねえぞ。そういや、パスポートと やらもないし」 「呆れたわ。目の前にいるのが、誰だと思ってるのよ」 「飲んべったらしの女神だろ?そもそもの発端が、その酒癖の悪さだろ?」 「うむ。確かにその通りだ!」  ディアナがキッパリと肯定した。 「そうじゃなくって!」 「じゃ、なんだよ?」 「私たちは神だ。そこは分かるな」 「一応そういうことになってるようだな」 「神は人間にできないことができる」 「まあ、それは認めよう。で?」 「ローマなど一瞬で移動できる能力を持っているということである」 「……?」 「もう一度言うぞ。ローマなど一飛びだ」 「なるほど、ワープするのだな。本当にできるのか?」 「インディアン嘘つかない!」 「また、それかよ。神夜映画劇場の見すぎだろ」 「天上界には、映画会社や放送局とかないからな。地上デジタル放送は娯楽の一つ となっておる」 「それで、どうやるんだ?ドラクエみたく旅の扉を使うのか?それともドラエモン のどこでもドアか?」 「似たようなものだが……はい、ディアナよろしく頼む」 「なんだ、私がやるのか?」 「時空管理者の方が間違いないからな」 「言ってろ!ゼウス様のお声が掛かってなけりゃ、おまえの手助けなど御免なんだ がな」 「痴話喧嘩してないで、行動に移せよ」 「おまえに、そんなこと言われるのが心外だな」 「ま、確かに。行動に移すべきだな」  手を前に突き出すようにして、 「ゲートオープン!!」  と唱えると、目の前に扉が現れた。  観光都市ローマへようこそ!  という札が掛かっている。 「観光案内かよ。やっぱ、どこでもドアだったな。確か前回は『過去への扉』だっ たよな」 「まあな。ノックしなくてもいいぞ」 「さあ、出発しましょう!」  ディアナ、弘美、ヴィーナスの順で扉をくぐる。  一瞬光に包まれたかと思うと、目の前はローマの街だった。
     
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