あっと! ヴィーナス!!第二部
第三章 part-4
アポロンが決断を迫る。
「さあ、人質交換に応じるのかな」
愛は可愛いが、ゼウスのお気に入りリスト【ファイルーZ】の弘美は、さらに可愛い。
成長すれば、それこそ絶世の美女となりうるのだ。
アポロンにしてみれば、愛より弘美を選ぶのは当然だろう。
たじろぐ弘美。
愛は助けたい。
かといって、人質交換に応じて、アポロンの元に行くのも、吝かである。
「どうするかね?」
「本当に愛を解放する気はあるのか?」
ヴィーナスが確認する。
アポロンの周りを見渡せば、篭絡した女の子や神子をはべらしているのだ。
弘美を手に入れても、愛を手放すとは言い切れない。
「約束しよう」
「言い切ったな。約束したぞ」
ヴィーナスとディアナが見詰め合って確認している。
「さあ、こちらへ来なさい」
アポロンが手招きする。
躊躇するが、愛を助けたい気持ちには変わらない。
ここにはヴィーナスとディアナという女神がいる。
愛と自分を助ける算段をしているかも知れないし。
ゆっくりと前へ、アポロンに向かって歩き出す弘美。
時々振り返りながら。
後数歩にまで来たときだった。
突然、弘美を含めたアポロンの周囲にバリアーのようなものが発生して、女神との間を遮断した。
「何をした!?」
ヴィーナスが近づこうとしたが、バリアーが進入を防いで、その身体を弾き飛ばした。
「だましたな!約束が違うじゃないか」
ディアナが叫ぶ。
「はて?何か約束をしたかな?」
知らぬ存ぜぬといった風情のアポロン。
「弘美、大丈夫か?」
何があったのか、茫然自失状態の弘美。
愛は可愛い、弘美はもっと可愛い。
女たらしのアポロンが、どちらか一方を手放すと思ったのが間違いだったのだ。
地団太踏んでくやしがる女神。