あっと! ヴィーナス!!第二部
第二章 part-1
「アポロンは無類の女好きなのは、君も知っているだろう」
「まあな」
アポロンと関係した女性は、すべて悲劇的な運命をたどることになる。
プロローブでも紹介したが、改めて再掲しよう。
さて諸君もご存じの通り、このアポロンはゼウスの最初の浮気の相手とされる
レトが産んだ双子の一人で、姉(妹?)がディアナである。
なぜか彼が恋する相手は悲劇を迎える。
月桂樹となったダフネ。
ヒヤシンスの花にまつわる美少年ヒュアキントス。
他にもシビュレーやカッサンドラーなどなど。
それがゆえに常に新しい恋を求めてさまよう。
なお、アポロンとはディアナ(ダイアナ)と同じく英語名。
「いずれ、手下の黒服である使徒が、人違いで愛を誘拐した事に気づくだろう。改めて本
命の君に目がいくことになる。がしかし、その君が男言葉に男的態度をしていたらどうな
るかな?」
「それがどうした」
「とりあえず本命の君には失望して、煮るなり焼くなりした後で、愛を手篭めにするのは
判りきったことじゃないか。可愛い女の子には目が無いからね。それでいいのかい? 弘
美」
「そ、それは……」
言葉に詰まる弘美。
「愛を助けるためには、君がアポロンの目に留まらなければならない。しかも飛び切りの
可愛い女の子としてだ。間違いに気づいて愛を解放するかも知れない」
「俺はどうなるんだよ」
と言った途端。
「ちっちっ!(と人差し指を目の前で横に振りながら)俺、じゃない。あたしと言いなさ
い」
ヴィーナスが注意した。
「あ、あたし……はどうなる……の?」
しどろもどろに言い直す弘美。
「そうそう、その調子。声が可愛いんだからね。態度も女の子らしくすれば完璧よ」
しょげかえる弘美に、思い通りに事が進んで上機嫌のヴィーナス。
「さあ、雲の中に突入するぞ!しっかり掴まっていろよ」
ディアナが手綱を操りながら、雲塊に突入する体勢を取る。
弘美とヴィーナスは、振り落とされないように、戦車の縁にしっかりと掴まる。
「突入する!」
大声で合図をすると、雲塊の中へと突入する。
凄まじい突風が襲い、戦車を激しく揺さぶる。