あっと! ヴィーナス!!第二部
 part-6 「で、どうやってアポロンの元へ行くんだ?」 「わからん」 「わからんって……なんでやねん」 「ああ、アポロンは居所をちょこちょこ変えるし、隠れ家なんかもあるからね」 「じゃあ、どうやって探すんだよ」 「愛を連れていったのは使徒だ。そいつを追いかければ判る」 「何言ってるの。そいつはとっくに空の彼方だ」 「わたしを誰だと思っている」 「天空の女神だろ」 「で、能力を知っているか?」 「天空を駆け巡り、時を操る……って、おいまさか!」 「そのまさかよ。愛が誘拐されるその時限に遡り、使徒の後を隠れて追いかけ、アポロン の居場所へ案内してもらうのさ」 「なるほどな」 「では行くぞ」 「おうともよ」  ディアナが手を前に突き出すようにして、 「ゲート、オープン!」  と言うと、目の前に時の扉が現れた。  扉には【過去への扉】という札が掛かっていた。 「なんだよ、この札は」 「君にも理解できるようにしたつもりだが」 「そうか。では、ノックしてから入るのか?」 「なぜそうする?」 「部屋に入るときは扉をノックするのが礼儀だろう」 「その必要は無い」  というとディアナは扉のノブを回した。  目の前には、どこへ続いているか判らぬ暗黒の闇が広がっていた。 「着いて来い!」  扉の中へと入ってゆくディアナに続いて、弘美も恐る恐る入る。  暗い扉を抜けた先は雪国、ではなくて弘美が働いているファミレスの前だった。 「なんだファミレスじゃないか」  行き交う人々の中に、見知った人物がいたので声を掛けようとすると、 「待ちなさい。ここは過去の世界だ、干渉することは許されない」 「未来が変わるとか、パラレルワールドに突入するとかか?」 「それもあるが、アポロンに気づかれるかも知れぬ」 「触らぬ神に祟りなしか」 「まあ、そういうことだ。そもそも我々の姿はこの世界の人々には見えない」 「なんだ」  ファミレスから弘美と愛が楽しそうに出てくる。 「ふうっ!疲れたあ」  大きく伸びをする愛。 「それにしても……あの人、なんだろうね」 「例の客?まだ食べているのかな」 「ううん……どうかな。もう食べ終わってるんじゃない?」  談笑しながら帰り道を歩く二人。 「同じこと喋ってるな」 「当たり前だろ」
     
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