銀河戦記/波動編 第四部 第二章 Ⅱ 磁力を制する者
第二章
Ⅱ 磁力を制する者
惑星トゥーロン守備艦隊参謀室。
ギーゼブレヒト大将が怒鳴る。
「迎撃に向かった艦隊が全滅しただと?」
「はい。最期の通信で『敵艦隊は囮(おとり)だった。伏兵五千隻に襲われている』と伝えてきました」
副官のラインホルト・ブルーメンタール准将が答える。
「五千隻の艦隊に二万隻がやられたというのか?」
「そのようです。やはり戦闘経験の差だと思われます」
「まだ言うか!」
さらに言葉を紡ごうとした時だった。
艦内が激しく揺れた。
「どうした?」
「敵の攻撃です。すぐそばの味方艦がやられました。その衝撃波です」
「敵艦の方向は?」
「後ろ、いえ下です」
「下だと?}
「敵艦隊は、低軌道を高速で我が艦隊の後ろに回ったのです」
「低軌道を回っているなら、地上基地からミサイル攻撃できるだろう?」
「だめです。地上基地と交信ができません」
「ジャミングか?」
「いえ、基地そのものが音信不通のようです」
「やられたというのか……」
激しい攻撃は続いている。
反撃しようにも後ろ下にいる敵艦隊には攻撃できない。
攻撃するには、自分達も低軌道へ移動しつつ後ろに回るしかない。
もしくは、惑星表面から離れて宇宙空間に出て攻撃するかだが、その場合は惑星を占領される危険がある。
「仕方あるまい。もう一度、宇宙に出て攻撃する」
惑星そのものを防衛するよりも、敵艦隊を攻撃壊滅させることを優先したのである。
衛星軌道から離れてゆく帝国艦隊、その数八万隻に減っていた。
対する公国艦隊は八万隻と、同戦力まで縮まっていた。
「敵艦隊の一部が地上に降下しているようです。およそ一万隻」
ブルーメンタール准将が報告する。
「放っておけ。今は目の前の艦隊を撃滅してしまうんだ。さすれば、その後でゆっくりと地上軍を追い出せる」
「かしこまりました」
公国艦隊は、すでに惑星の裏側に姿を消していた。
衛星軌道から離れて、宇宙空間で隊列を組みなおしながら、公国艦隊が現れるだろう地点に艦首を向けた。
「姿を見せてみろ! 集中砲火でバルハラへ送ってやる」
正面スクリーンを凝視するギーゼブレヒト大将。
敵艦隊が出てくるのを今か今かと待っている。
「まもなく姿を見せる頃です」
「よし。全艦光子魚雷発射準備!」
「発射準備完了しました」
息詰まる時間が続く。
その時、敵艦隊出現予想点から眩い光が届いた。
「何だ、あの光は?」
目を細めているキーゼブレヒト大将。
次の瞬間だった。
周囲の艦艇が次々と撃沈していったのだ。
「敵が攻撃してきました。荷電粒子砲です!」
ブルーメンタール准将が解説する。
「荷電粒子砲だと、相手はまだ惑星の裏側だぞ!」
「磁力線です! 地磁気を利用して荷電粒子を曲げているんです」
解説が続く。
「地磁気だと!」
驚愕するキーゼブレヒト大将。
敵の攻撃の手は止まなかった。
次々と撃沈されてゆく味方艦隊。
「ええい。魚雷発射だ! 敵が地磁気なら、こちらは重力だ!」
「しかし……」
「構わん。発射した後、こちらも荷電粒子砲だ!」
「分かりました。魚雷発射します」
味方艦隊から発射される光子魚雷だったが、重力を振り切って宇宙の彼方へと消え去った。発射速度が速すぎたのだ。
「荷電粒子砲用意!」
遅ればせながら、荷電粒子砲に切り替える帝国艦隊であった。
しかし、時すでに遅し。
磁力線に沿わせて敵艦隊に当てるためには、粒子砲の電圧などの調整が必要だが、その数値が分からない。まさに当てずっぽうで撃ちまくっていた。
その間にも、味方艦隊は一方的にやられ続けて四万隻に減っていた。
敵艦隊は七万隻で、何の策もなしに只撃ち合うだけなら数の多い方が勝つのは当たり前である。
そうこうするうちに、惑星の陰から敵艦隊が姿を現した。
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