第三章
Ⅱ 戦闘  宇宙空間を飛ぶセルジオ艦ビーグル号。  艦橋では、元囚人達によって計器は操作され、インゲル星から遠ざかりつつあ った。 「プラズマエンジン大気圏外出力から惑星間航行速度へ」 「インゲル星重力圏突破しました」  パネルスクリーンに離れてゆくインゲル星を見ながら歓声を上げる囚人達だっ た。 「やっと解放されたぞ!」 「我々は自由になったんだ!」  一同口々に叫んでいる。 「それはまだ早いぞ」  ビューロン少尉が注意勧告する。  それと同時に艦が激しく揺れる。  あちこちに飛ばされ動揺する囚人達。 「何だ。一体何が起こったんだ?」  レーダー担当になっていた者が叫ぶ。 「右舷後方に敵地球艦隊接近中!」  インゲル星の背後から現れた、クロード王率いる地球艦隊。  旗艦ノーザンプトンの艦橋内。 「いいか。絶対に逃がすなよ」 「はっ!」 「巡洋艦前へ。駆逐艦は両翼に展開して、魚雷で徹底的にやれ!」  艦長がテキパキと指令を下している。  その様子を見つめながら、スクリーンを眺めている。 「それにしても、セルジオ様ともあろうお方が、簡単に艦を奪われるとは……」  ビーグル号艦橋内。 「追尾装置セットオン!」 「いいか。よく狙って撃て」  ビューロン少尉が注意する。 「方位修正右0.2秒。上下角そのまま。敵艦主砲軸線上に乗りました」 「よし。攻撃開始」  攻撃を開始するビーグル号。  ビーム砲が地球艦隊に当たって砕け散る。  ノーザンプトン艦橋。 「敵が撃ってきました!」  副官の報告にクロード王が応える。 「なあに大したことはない。相手は戦艦ではないのだ。たとえ高性能のゴーラン ド艦とてたかが一隻。我々の方が数・火力とも上だ」 「それに、ビーグル号をまともに操縦したことのない連中ですからね」 「そういうことだ」  ビーグル号艦橋。  濛々(もうもう)と煙を上げる艦内。  時折起こる爆風。  倒れている兵士と囚人達。 「機関部損傷。エネルギーゲージ70%ダウン」  機関部からの連絡が入る。 「クソォ! ここまで来ながら……」 「諦めるのは早い。最後まで戦うのだ」  次々と被弾し、損傷の酷くなってゆくビーグル号。 「第一主砲被弾。第七副砲……全砲使用不能」 「もはやこれまでか……」  老人が掛かりかける。 「アレックス様」  ノーザンプトン号艦橋。 「敵は完全に沈黙しました」 「よし。ビーグル号に打電しろ。降伏か死か選ばせるのだ」 「了解」 「脱獄者は処刑あるのみではないですか?」 「本来ならばな。しかしビーグル号はセルジオ様の船でもあるしな……。通信士、 収容所のセルジオ様との連絡は取れたか?」 「はっ。それがセルジオ様はお休みになられたとかで、応対に出られないとのこ とです。代わりにガードナー少佐が出られて、ビーグル号に関しては一切口出し 無用捨て置けとの返答です」 「何だと! 一切関知するなと言うのか?」 「その通りです」 「一体何を考えているのだ。こんな重大事にセルジオ様が眠っておられる。その 上、奪われたビーグル号も捨て置けとは……」 「陛下。ビーグル号が逃げていきます」 「通信士、先ほどの打電の返答は?」 「ありません。応答なし」 「よし、撃ち落せ」 「しかし、ガードナー少佐は捨て置けと」 「たかが将校ごとき聞く耳持たぬわ。セルジオ様直々のお言葉なら別だがな」 「どうしますか?」 「ええい! かまわん撃破してしまえ」 「了解。主砲発射用意! 目標ビーグル号」 「しかし陛下。敵に奪われはしたものの、ビーグル号はセルジオ様の船です。い いのでしょうか?」  副官が確認する。 「かと言って、囚人をこのまま逃がしてもいいというのか?」 「それは……」 「お前は黙っていろ!」 「陛下、主砲発射準備完了しました」 「よし。発射しろ!」  ビーグル号艦橋。 「敵がまた撃ってきました」 「なすすべもなしか……」 「それにしても、これだけ攻撃を受けても良く持っているのが不思議だ」 「そりゃそうですよ。これはゴーランド艦ですよ。地球艦とは比べものにならぬ 程、材質・技術が違います。がしかし、こうも集中攻撃を受けては、さしもの ゴーランド艦とて……」  その瞬間、艦内を爆風が襲う。  吹き飛ぶ囚人達、そして老人。  濛々たる黒煙が立ち込める。 「おじいさま!」  老人のもとに駆け寄るルシア。  ノーザンプトン号艦橋。  正面スクリーンを見つめるクロード王。 「よし。そろそろ止めを刺せ」 「はっ。ミサイル艦前へ」  前進するミサイル艦。 「ミサイル発射!」  多数のミサイルがビーグル号に襲い掛かる。  ビーグル号艦橋。  老人の身体に触れ伏して泣いているルシア。  それを見つめているアレックス達。 「ミサイルだ!」  誰かが叫ぶ。 「あれにやられたら一たまりもないぞ!」  ミサイルがビーグル号に襲い掛かる。  ノーザンプトン艦橋。  まばゆい光に目を細めるクロード王。 「命中です」 「うむ……」  次第に光が薄らいでゆく。 「むっ?」  スクリーンを凝視するクロード。  そこにはビーグル号が生存していた。 「どうしたんだ? ビーグル号は健在だぞ!」 「そんな馬鹿な! ミサイルは直撃しました。木っ端微塵になっているはずで す」  ビーグル号艦橋。  床に伏して震えている者、耳を押さえて目を瞑っている者。  皆やられたと思ってかじっとして動かない。  ゆっくりと立ち上がるアレックス。 「どうしたんだ?」 「ん……ミサイルは?」  ビューロン少尉も不可思議な表情をしている。  倒れている者も、次々に起き上がりスクリーンを見つめる。 「助かったのか?」 「ミサイルがぶつかる寸前に爆発したみたいだけど……」 「あ、あれは何だ?」 「どうした?」  囚人の一人がスクリーンを指さす。  そこには見知らぬ宇宙船が映っていた。 「あの船が迎撃してくれたのか?」 「地球の船ではないようね」 「ケンタウリの船でも、トラピストの船でもないようだ」  ノーザンプトン艦橋。 「右舷三十度に未確認艦発見!」 「何だと?」 「ミサイル接近中! 五秒で接触します」 「迎撃しろ!」 「駄目です。間に合いません!」 「機関全速、取り舵一杯!」  眩い閃光と共に、護衛艦の一隻が轟沈した。 「第二波接近します」 「全艦、主砲をあの宇宙船に標準合わせ! 機関砲、ミサイルを撃ち落せ!」 「あれは! 地球を脱出した例の宇宙船ですよ」  副官が気付いて報告する。 「何、本当か!」
   
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