第三章
Ⅰ 取り舵一杯!  太陽からケンタウルス座の方向に4.3光年離れた位置にある三連星『ケンタウルス α星』主星αA、第一伴星αB、そして第二伴星であるαCの赤色矮星がプロキシ マ・ケンタウリである。  プロキシマ・ケンタウリには、惑星プロキシマ・ケンタウリbがあり、ハビタブル ゾーン内を11.2日で公転している。  人類が太陽系を脱出して植民星とした、バーナード星に次ぐ二番目の惑星である。  銀河渦状腕オリオン腕に人類が行き渡った頃から、帝政軍事国家化して侵略行為を 始めて、すべての惑星国家を手中に入れた。  それがケンタウロス帝国である。  そして今、立場が逆転しアルデラーン公国の侵攻を受けている。  航空宇宙防衛司令部の司令指揮所。  モニターがズラリと並んでおり、それぞれにオペレーターが付いて監視していた。 「敵艦隊の総数は?」  司令官アレクシス・ボーメ大将が尋ねる。 「七万隻です」  副官のトラウゴット・オイケン准将が答える。 「トリスタニアでは、味方の裏切りがあったというじゃないか?」 「はい。トリスタニア人ですね、後方に配置していたため、挟み撃ちの恰好になって しまいました」 「だったら、こちらの艦隊にもケンタウリ人じゃない奴らがいるな?」 「はい。太陽系人とバーナード人の艦がおります」 「よし、そいつらは前衛に配置しろ! 盾にしてやる」 「かしこまりました」  惑星ケンタウリの衛星軌道上に展開する帝国艦隊、その旗艦戦艦クローンプリンツ 艦橋。  艦隊司令官アロイジウス・クレンマー大将が嘆く。 「ケンタウルス人以外の艦を前面に押し出せだと?」  副官のエトガル・アイヒベルガー大佐が答える。 「盾にするって、どういう考えですかね。ケンタウリ人だって、元は太陽系人ではな いですか」 「人間とは差別するのが本能なのだよ。母なる星地球にだって、白人と黒人とか肌の 色だけで差別していた時代があるからな」 「とにかく、そういう命令ですから。従いましょう」 「分かった。仕方あるまい」  艦隊が動いた。  太陽系人とバーナード人の艦が前方へと移動を開始した。  だがそれらの人々の間に不信感が沸き上がっていた。  戦艦アクティオンの艦橋内。 「俺らを盾代わりにするつもりだな」  艦長のジョージ・フェアクロフ大佐が呟く。 「我々を捨て駒扱いですか?」  副長のエルヴィス・バルフ中尉が嘆く。 「捨て駒にされてたまるか! まあ、見ておれ」  公国艦隊が近づいてきた。 「戦闘配備命令が出ました」  通信士のエドウィン・バーンズ少尉が報告する。 「そうか……。全周波帯の国際通信の用意をしろ!」 「全周波帯? 公国艦隊にも聞かせるのですか?」  バーンズ通信士が聞き返す。 「そうだ」 「なるほど。分かりましたよ」  バルフ副長が悟った。 「うむ」 「敵艦隊の射程距離に入ります」  レーダー手のサンディー・マッキントッシュ中尉が報告する。  これまでの戦いの情報から、敵艦隊の射程の方が長いことは既知のことである。 「よし、全周波国際通信!」 「準備OKです。どうぞ」 「分かった」  マイクを取り上げるフェアクロフ艦長。 「太陽系及びバーナード星の友軍艦に伝える。全艦取り舵一杯全速、我に続け!」  戦艦アクティオンが一番に取り舵で転進を始めると、次々と後に着いてくる艦があ った。
     
11