第二章
Ⅲ 勝利  公国艦隊旗艦デヴォンシャー艦橋。 「正面に帝国艦隊」  電探手のグレゴリー・クロンプトン少佐が報告する。 「隊列がバラバラだ。だいぶ驚いているようだな」  満足の表情の公王アレックスだった。 「畳みかけるぞ! 光子魚雷準備!」 「全艦、光子魚雷準備!」  復唱するタスカー大将。 「魚雷装填! 重力補正上下角プラス三度! 雷速二万ノット」  魚雷長のブルース・パクストン少佐が魚雷室に指示する。 「合わせました!」  魚雷室から返答がくる。 「発射!」  全艦から発射される光子魚雷が敵艦隊へと向かってゆく。  光子魚雷(反物質)の破壊エネルギーは、荷電粒子砲(陽子など)のソレより強力 である。魚雷は当たれば跡形もなく消滅となるが、粒子砲では当たった部分を破壊す るだけだ。  敵艦隊に光子魚雷が襲い掛かり破壊してゆく。  次々と蒸発してゆく敵艦隊。  なにもかもが先手必勝態勢となっている。  艦艇数七万隻対四万隻では、ジリ貧となることは必定だ。  成すすべもなく艦艇数を減らしてゆく帝国艦隊。  地上に降下した一万隻によって、地上基地は攻撃されて補給船を派遣できず補充も ままならない。  そして遂に数千隻にまで減っていた。  やがて白色信号弾三つが打ちあがった。 「投降信号です。敵が降伏しました」  タスカー大将が伝える。 「敵艦隊、エンジン停止を確認しました」 「敵より入電しました」  通信士のデイヴィッド・シモンズ少佐。 「繋いでくれ」  通信用モニターに相手が映し出される。 『ラインホルト・ブルーメンタール准将です。司令官負傷のため、自分が指揮してお ります』  敬礼して挨拶している姿の後方には、酷く損傷している艦内が映し出されている。 火炎の煙も漂っている。 「司令官と旗艦は大丈夫なのか?」 『はい。重傷ですが、はっきりとした意識があります。艦はかなりの損傷を受けまし たが、何とか航行できる程度です』 「それは安泰。生存者の救出活動に入るが大丈夫か?」 『ありがとうございます。お願いいたします』 「戦艦ロイヤル・サブリンより入電です」  シモンズ通信士が報告する。  降下部隊を指揮して地上に降りたマーティン・ウォーズリー中将の坐乗する旗艦か らだった。 「おお、やっと下を制圧したか。繋いでくれ」 『ウォーズリーです。宇宙港、参謀本部、放送局など主要機関を押さえました』 「よくやった。そのまま占領政策は任せる」 『分かりました。閣下はどうなされるのですか?』 「五万隻を率いてレマゲンの橋を渡る。恒星ブレスト系第三惑星リモージュを攻略する」 『なるほど、成功を祈ります』  通信を終えて、新たなる作戦を発表する公王アレックスだった。  その会話を聞いていたタスカー大将が尋ねる。 「ついに敵の本拠地に殴り込みに行くのですね」 「そうだ。今がチャンス、時期を逃してはならない。リモージュが手薄なうちに殴り 込むのだ」  惑星トゥーロンとリモージュは本来七万隻づつ駐留していたが、公国の帝国進撃を 受けてトゥーロンに集積させて十四万隻としていた。 「至急、五万隻の遠征艦隊を選出してくれ」 「かしこまりました」  こうしてケンタウロス帝国との最後の戦いへと誘われることとなったのであった。
   
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