第一章
Ⅷ 投降
二万隻の迎撃艦隊がガラクタ戦艦に気づいて引き返すことを決定した時、背後から
新たなる艦隊が襲い掛かった。
デイミアン・オルコック少将率いるシュトラールズント艦隊である。
旗艦シュトラールズントの艦橋。
「うまく引っかかってくれましたね」
副長のアルフィー・キャメロン中佐がほくそ笑む。
「油断するなよ。敵は四倍の数があるのだからな」
「はい。分かりました」
シュトラールズント艦隊は、ガラクタ戦艦を予定のコースに乗るように放出した後、
いずれ迎撃にやってくる敵艦隊を後背から襲える位置に転進していたのであった。
「敵はどうでると思う?」
オルコック少将が副官キャメロンに質問する。
後背を取られた敵艦隊が取るだろう行動は、
1、こちらへ回頭して弱点を回避しつつ攻撃を開始する。
2、全速前進し、ガラクタ戦艦の残骸を盾にして中を通過しつつ態勢を整える。
3、投降する。
「投降することはないでしょう」
当然だろうという表情で答える副官。
「さて、どう出るか?」
正面スクリーンをジッと見つめる准将。
「敵がこちらに向けて回頭を始めました!」
レーダー手のライオネル・エムズリー中佐が叫ぶ。
「よっしゃあ! 敵が横っ腹を見せる今が好機だ。撃ちまくれ!」
より一層激しく攻撃を加えるシュトラールズント艦隊。
激しい側面攻撃を受けて、次々と撃破されてゆく敵艦隊。
「ガラクタ戦艦にはもう少し働いてもらおうか。第二段階に移れ!」
「了解しました」
と答えて、通信士のボビー・ハイアット中佐に合図を送る。
「分かりました」
ハイアット中佐がガラクタ戦艦の自動操舵システムにアクセスを始めた。
「システムに入りました。これより後部艦隊の曳航を切り離します」
ガラクタ戦艦の機動力を有する前部と、ただ曳航されるだけの後部が切り離される。
電力も遮断されたので、完全にただ漂流するだけとなった後部艦隊だった。
「切断完了。続いて前部艦隊を回頭させます」
ゆっくりと回頭を始める前部艦隊。
「回頭終了。全速前進を開始します」
加速を始める前部艦隊。目指すは敵迎撃艦隊に向かって。
正面スクリーンには、味方艦隊と敵艦隊を示すマークが映し出されているが、そこ
へ新たにガラクタ戦艦のマークが追加表示された。
ガラクタ戦艦が敵艦隊の後背から近寄るが、相手は見向きもせずに本隊への攻撃に
専念していた。
「敵艦隊は、ガラクタと侮っているようですね」
副官キャメロンが推測した。
「そうだな。目にもの見せてやろうか」
と、ハイアット中佐に合図を送る。
「分かりました」
目配せをしてから、手元のスイッチを押した。
三分後、ガラクタ戦艦が敵艦隊の中央で爆発した。
戦艦に搭載していたトリコバルト爆弾が炸裂し、亜空間ストレスを発生させて、辺
り一帯の空間を歪ませ敵艦隊を飲み込んだ。およそ半数の艦艇が消え去った。
「敵は、驚き戸惑っている。畳み掛けるぞ! 攻撃の手を休めるな」
さらなる激しく攻撃が加えられる。
当初二万隻だった艦隊は、一万隻となり、五千隻、さらに百隻を割り込んだ。
一時間後、敵旗艦から白色信号弾が打ち上げられた。
「投降信号です」
「全艦、攻撃停止せよ!」
一斉に攻撃が止む。
「敵艦、エンジン停止を確認しました」
「敵艦より入電!」
降伏や降伏勧告などを行うための国際通信帯があり、それを使って通信してきたの
である。
降伏の手続きが始められた。