第三章
Ⅵ 混戦  旗艦戦艦デヴォンシャー艦橋。 「敵の分艦隊が本隊に合流しました。我が方の分艦隊は敵艦隊への側面攻撃が可能で すが」  艦隊参謀長のランドルフ・タスカー大将が報告する。 「そうだな、側面攻撃を仕掛けよう。ウォーズリー少将に連絡しろ」 「かしこまりました」  双方の分艦隊にとって、その位置取りが重要である。  帝国の分艦隊は、本隊と公国分艦隊との中間地点にいる。公国艦隊への攻撃には最 適な位置だが、公国分艦隊からの側面攻撃を受ける。この状態では、あっという間に 撃滅されてしまう。本隊に合流するのは理にかなっている。  第二部隊旗艦、戦艦ロイヤル・サブリンの艦橋。 「戦闘目標変更! 敵艦隊本隊を側面から攻撃する!」  指令を受けて敵艦隊本隊への攻撃を開始するウォーズリー少将。 「攻撃目標、敵艦隊本隊!」  副官のグレーム・アーモンド少佐が復唱する。  本隊に加えて、第二部隊千隻の攻撃が始まった。 「しかし、敵艦隊は装甲の厚い戦艦を前面に配置しながら、後退しています。壊滅的 な打撃を与えるのは難しいでしょう」  航海長のハリスン・メイクピース中佐が指摘する。 「敵艦隊の狙いは、援軍の到着までの時間稼ぎというところでしょう」 「そうだろうね」  デヴォンシャー艦橋。 「しぶといですね」  タスカー大将の副官のアリスター・カークランド大佐が呟いた。 「敵は、後退しながらの防御戦闘だし、距離が縮まないから効果的な攻撃が当たらな い」  艦隊参謀次長のジェフリー・ウォーカー大佐が説明した。 「艦艇数では、こちらが圧倒しているのですから、別動隊を分けて惑星ケムニッツに 先着して奇襲を掛けてはどうでしょうか?」 「それは止めた方が良いな」 「なぜですか?」 「援軍の存在があるからだよ。奴らは明らかに時間稼ぎをしている。つまり援軍を待 っているということだ。何隻かは分からないが、すでに惑星に到着しているかもしれ ない。そんなところへ別動隊が向かえば全滅するかもしれん」 「なるほど」 「それにだ。別動隊を作らずとも、全力で突撃すれば五千隻の艦隊など容易く蹴散ら せるだろう。それをやらないで、敵の後退戦法に付き合ってあげてるのには、陛下に は何か意図することがあるのだろう」 「陛下が?」  指揮官席に座って戦いの行く末を考えているアレックス公王を見つめるカークラン ド大佐だった。  じっと前方のスクリーンを見つめるアレックス公王。  時折、参謀長のタスカー大将と話し合っている。 「だいぶばらけてきたな」  アレックスが呟く。 「開戦から三時間が経過しました。敵艦隊の総数は約三千隻に減りました」  タスカー大将が伝える。  装甲の厚い戦艦もすでに撃沈し、艦隊へのダメージが大幅に増えていた。 「投降を呼びかけるのもありなのだがな」  アレックスが呟くと、 「援軍がくるということなら無理でしょう」  タスカーが答える。 「だよな」  ため息をつくアレックス。 「その援軍ですが、情報によりますと三万隻になります」 「三万隻、つまり今戦っているのと合わせて約一倍半か。まあ何とかなるだろう」  自身気ある発言に、胸を撫でおろす乗員達だった。
   
11