第四章
Ⅲ 侯爵艦隊出撃  アレックスがアルデラーン公国再興を高らかに宣言した日、ロベスピエール侯爵の 宣戦布告の日でもある。  宮殿会議室に家臣達を集めて、今後の施策を検討していた。 「宣戦布告をしたものの、戦争の準備が始まってもいない。艦隊編成から始まって補 給をどうするかなど、ここで討論してもらいたい」  その後、侃々諤々(かんかんがくがく)の議論を経て、一応の戦略が練り上げられ た。  ともかく侯爵側も戦争の経験のある者は一人もいない。公国分裂以来時勢が落ち着 き平和な時代が長く続いて、せいぜい戦闘訓練か机上作戦演習程度しか行ったことが ない。 「カーライル子爵の情報では、敵勢力はロストシップの他に駆逐艦十二隻、謀反者の ウォーズリー少佐の艦艇五隻、計十七隻+αとなっております」 「ウォーズリーの奴が寝返りしなきゃ、伯爵艦隊など気に掛けるほどのこともなかっ たのに。捕虜にできたら、反逆罪で処刑しましょう」 「まあ良いわ。去った者は放っておけ! それより早く艦隊編成を急ぐのだ!」 「かしこまりました」  数時間後。 「こちらの艦隊の勢力が整いました。巡洋艦二十四隻すべてを投入します。ルビコン の橋の防衛ですが、現在トリスタニア共和国はケンタウロス帝国と戦っていますので、 こちらから侵略してくる可能性はありません」 「分かった。では、肝心の艦隊司令官は誰にするか?」  ロベスピエール侯爵が尋ねると、一人の臣下が歩み出て跪(ひざまず)いた。 「私め、ブランドン・ヘニングにお任せを」 「ヘニング男爵か」 「さようにございます。この私めにお任せくだされば、こましゃくれた小僧の艦隊な ど一捻りにして差し上げます」 「心強い言葉だ。いいだろう、男爵に艦隊を預けよう」 「ありがたき幸せ。必ずや小僧の首を召し上げてみせましょう」  館内にどよめきが沸き起こり、拍手喝采となった。  漆黒の宇宙を突き進む侯爵家分艦隊。  旗艦アクティオンにはヘニング男爵が坐乗している。 「小僧目らの艦隊の位置はまだ分からないのか?」  遭遇予定位置のヴォルソール星域に到達しても敵艦の姿が見当たらないのに焦って いる。勝敗はどちらが先に発見して攻撃を仕掛けるかに掛かっていると理解している からである。 「レーダーに感あり! 前方二万宇宙キロ!」  レーダー手が叫ぶ。 「でかした! モニターに映せるか?」 「かしこまりました!」  すぐに正面モニターに敵艦が映し出される。  そこに映っていたのは、アムレス号だった。 「まさか……あれが伝説のロストシップ……なのか?」 「全長約3000メートルの化け物です!」 「3000メートルだと! この艦隊最大の我が艦アクティオンですら900メートルだぞ!」 「他に艦隊はいないのか?」  副官がレーダー手に聞き返す。 「見当たりません。一隻だけです」 「まさか一隻で足止めして、残りの艦隊がアルデラーン本星を目指しているのでは?」 「小癪な作戦を……。ええい、いくら巨大でも全艦で攻撃すればひとたまりもないだ ろ。射程に入り次第、総攻撃だ!」  接近し合う艦隊とアムレス号。  やがて、火花を散らし始める。
     
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