第八章
Ⅵ 決闘2  ゆっくりと転回する両船。  今度は、右舷側での反航戦である。 「取り舵五度、右舷側砲台戦闘準備」  展開が終わって、右舷側での砲雷撃戦が始まる。 「ジミーの仇は討ってやるぜ!」  ブルーノ・ホーケンが鼻息荒くしている。 「おいおい、仲間を殺すなよ。ジミーは生きてるぜ」 「いや、言葉の綾ですよ」  言いながら砲台の席に腰を降ろした。 「来たぞ!」  砲塔の視覚野に敵船の舷側が入ってきた。 「撃て!」  砲撃を開始するフォルミダビーレ号。もちろん相手方も撃ち返してくる。  双方とも無傷ではいられない。  砲弾が当たって船体に穴が開いてゆく。  恒久修理班が開いた穴を塞いでいく。  すれ違いが終わった。  三段目は、正面向き合っての撃ち合いとなっている。 「船首魚雷戦!」  アーデッジ船長が下令すると、 「船首に魚雷戦発令!」  復唱するリナルディ副長。 「装填!」  魚雷室では、アキッレ・フラスカーニ魚雷長の指示のもと、光子魚雷を発射管 に装填している。 「一号・二号発射管、装填完了!」  直後に、次弾が砲弾庫から揚弾筒を上昇して運び込まれる。  魚雷室と砲弾庫とは分厚い障壁で区切られており、弾薬に被弾爆発しても魚雷 室にいる人員に被害がでないようになっている。 「発射準備完了しました!」  フラスカーニ魚雷長が伝送菅を使って報告すると、 『よし、合図を待て!』  指示が返ってくる。  再度の展開を終えて、向かい合う両船。  フォルミダビーレ号船橋。 「敵船も転回完了! こちらに向かってきます」 「敵船、軸線上に入りました。有効射程内です」  オペレーターが報告する。 「軸線がずれたぞ。右に三度回せ!」  戦闘用パネルスクリーンを見ていたアーデッジが命令する。 「面舵三度、軸線固定!」 「発射準備完了!」 「撃て!」  アーデッジの声がひときわ大きく船内に響き渡った。 「発射します!」  艦首から発射された光子魚雷が、ガスパロの船へと直進してゆく。  ほとんど同時に敵船からも魚雷が発射されて、こちらへと向かってくる。 「回避せよ!」  アーデッジが叫ぶ。 「取り舵十度! 左舷減速、右舷一杯!」  リナルディ副長が回避運動を下令する。  迫りくる敵魚雷を間一髪で交わして、 「左舷後方噴射! 右舷前方噴射!」  船首を敵船に向けたまま、ドリフト運動するように移動するフォルミダビーレ 号。 「照準よし! 粗点固定!」 「魚雷2号、発射!」 「発射します!」  第二弾が発射される。  転回に遅れたガスパロの船の側面に向かって光子魚雷が突き進む。  そして命中し炎上するガスパロの船、アフォンダトーレ号。 「敵船、機関停止したもようです」  やがて、停船を意味する信号弾が打ち上げられた。 「敵船、降伏の意思表示です」  リナルディ副長が言った。 「やったぜ!」  小躍りするオペレーター。 「ガスパロから通信が入っています」 「繋いでくれ」  通信用パネルスクリーンにガスパロが映し出された。 「降参だよ。身分は保証してくれよな」 「分かってますよ」  その後、両船は基地に戻って修理を始めた。
     
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