第七章
Ⅵ 救出作戦  宮殿前広場。  銃を突き付けられながら、X型張り付け台に両手両足を縛り付けられるアーデ ッジ。  二人の重厚な槍を携えた処刑人が両脇に立って待機している。  その傍の銅鑼の前には、腕時計を気にしている進行役と思われる役人が時間を 気にしている。  処刑は槍を突き刺して死に至らしめる方法のようだ。  銅鑼が鳴らされ、法務官と思われる人達が広場に現れた。  ゆっくりと歩いて、一人がお立ち台に上がり、死刑執行の宣誓書を読み上げる。  宣誓書を読み上げる法務官。 「この者は、国際法違反である海賊行為を行った罪状によって、公開処刑される 裁定が下った。よってここにおいて処断されることとなった」  ここで再び銅鑼を鳴らす進行役。  処刑執行人が槍を構えて、アーデッジの足元に歩み寄った。  その頃、牢獄内に突如として現れた四人の少年達。  アムレス号の転送装置によって、瞬時に送り込まれたようだった。 「流石はロストシップだぜ。船内に転送システムがあるなんてな」  ジミー・フェネリーは驚いて言った。 「まだまだこれからだよ」  というと、ブルーノ・ホーケンは光学迷彩服のフードを被った。メタマテリア ル素材で出来た、姿を消すことのできる服である。 「先輩達の囚われている場所は?」  フレッド・ハミルトンが尋ねると、 「今調べる」  ベルトに止めていた端末を開いて電源を入れるエヴァン・ケイン。  画面に牢獄のマップが表示され、目標と思われる場所へのルートが指示されて いた。 「よし、行くぞ!」  ブルーノがスタンガンを構えて、ゆく先々で出会う兵士を眠らせながら進んで ゆく。  宮殿前警備に回されているのか、牢獄内の兵士は少なく感じた。  一方アムレス号船橋では、ロビーがフォルミダビーレ号のコンピューターにア クセス開始していた。 『フォルミダビーレ号ニ、接続成功シマシタ』 「よっしゃー! 船のコントロールをこちらに回して下さい」  操舵士のマイケル・オヴェットがガッツポーズを見せてから、遠隔自動操縦装 置に手をつけた。 『コントロール、回シマス』 「補助電源使用可能。エンジン始動します!」  船を動かすには電力が必要であるから、まずエンジンを始動させて電力を生み 出す。 「船内に人の姿はなし! 乗船口のドアロック施錠」  船のエンジンが掛かったのに気づいて集まってくる兵士達だが、乗船口が閉じ られてはなすすべもなかった。 「浮上開始!」  噴射ガスを避けるために退避を始める兵士達。 『倉庫内シャッター、ヲ遠隔操作開放シマス』  閉じられていたシャッターがゆっくり開いてゆく。 「前方クリアー。微速前進」  浮上して前進するフォルミダビーレ号。 『倉庫内ヨリ出マシタ』 「全速前進! 衛星軌道へ向かいます」  急上昇するフォルミダビーレ号。  その後を追いかけるように、地上発進の戦闘機が向かっている。 『敵戦闘機、フォルミダビーレ号ニ急速接近中デス』 「こちらから迎撃してください。船には当てないでね」 『了解。レーザーパルス照射シマス』  操舵と迎撃の両方をマイケル一人では不可能なので、船に纏わりつく戦闘機は 上空のアムレス号が担うこととなった。  軌道上からの攻撃に態勢を崩す戦闘機群。  その間に、成層圏を越えて衛星軌道上まで上昇するフォルミダビーレ号。  もはや追撃は不可能となり、基地へと帰還してゆく戦闘機群。  代わって宇宙艦隊の発進準備が開始されていた。  牢獄内。  囚われた仲間達が座り込んで暗く落ち込んでいる。  牢の前に立つ兵士が突然倒れた。 「なんだ?」  不思議な表情になる仲間達。 「助けにきました」  そこへどこからともなく聞いたような声がする。 「誰だ?」  声のした方に尋ねる、すると。 「僕達ですよ」  光学迷彩服のフードを降ろして顔を出す少年。  その顔を確認して、 「ブルーノじゃないか!」  驚くモレノ・ジョルダーノ甲板長だった。  他の少年達もフードを降ろして顔を見せた。  仲間達が立ち上がって鉄格子の傍に駆け寄る。 「どうしてお前たちが? それにその服は光学迷彩か?」 「話は後です。一刻も早く脱出しましょう」  急かしながら、倒れている兵士から鍵を取り上げて牢の錠前を開けるブルーノ。 「分かった!」  開いた牢獄からゾロゾロと出てくる仲間達。 「こっちです」  端末に表示される脱出ルートに従って案内するエヴァン。  大急ぎで駆け出し、途中で出会う兵士を倒しながら脱出行へと急ぐ。  裏庭に続く最後の扉を開けて外に出た。  空を仰ぐと、こちらに向かってくる小型艇が飛んでくる。 「バスタード号だ!」  指さしてから、 「おおい! こっちだ!」  大きく手を振る海賊達。  そして目の前に着陸した。  乗船口が開いて、マイケルが顔を出した。 「早く乗ってください!」 「マイケルか、船長は?」  ここにはいないアーデッジを気遣う海賊達。 「船長は、アレックスが救出に向かっています」 「分かった。みんな急いで乗れ!」  モレノが合図すると、少年と海賊達はバスタード号に乗り込み、各自の持ち場 に着いた。  全員が乗船したのを確認すると、 「発進します!」 「後方に感あり! 戦闘機接近中!」  ルイーザが叫ぶ。  フォルミダビーレ号の追撃を諦めた戦闘機が、引き返して回ってきたのであろ う。 「俺に任せろ!」  甲板長でありながら砲手でもあるモレノが応える。  後部砲台に着席して、迫りくる戦闘機を迎撃するモレノ。
     
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