第二十一章 タルシエン要塞攻防戦
U  艦橋。  モニターに、アレックス達の乗るミサイルが重爆撃機に取り付けられていく様子が 映し出されている。 「まるで人間魚雷ですね」  副指揮官のリーナ・ロングフェル大尉が感想を述べた。 「まあね、元々は次元誘導ミサイルの筐体だから。総括的な作戦立案は、ウィンザー 少佐でしょうけど、この人間魚雷だけは提督のアイデアということ」 「そうですね。だからこそ提督自ら乗り組んでいるのでしょう。そうでなきゃ誰も志 願などしないでしょう」 「成功すれば二階級特進が約束されているとはいえ……」 「噂では、提督はこの日のために士官学校時代から、ウィンザー少佐と作戦を練られ ていたとか」 「まあね……」  士官学校よりの信頼関係にあるジェシカとて、およその概要の説明を受けていたと はいえ、いつどこで作戦が発動されるかといった詳細はアレックス以外にはパトリシ アとレイチェルしか知らない。  ハード面においては、フリード・ケースンを開発中心として、次元誘導ミサイルの 開発生産、特殊中空ミサイルの製作と綿密周到な射撃訓練。ソフト面では、レイチェ ル・ウィングを連絡係りとして、ジュビロ・カービンとレイティ・コズミックらによ ってコンピューターシステムの乗っ取りが計画された。 「すべては、今日のために仕組まれていたとはいえ……」  それぞれは単独では何ら意味をなさないが、こうして組み合わされてはじめて、そ の意味の真相が明らかとなる。アレックスがパトリシア以外に詳細を明かさなかった のも、作戦立案から発動までに至る間、外部に情報が漏れるのを危惧したせいである。 「ま、夫婦士官で秘密もないだろうからな」 「少佐、時間です」 「ふむ」  艦内放送のマイクを取るジェシカ。 「諸君良く聞け。作戦は、ハリソン少佐率いるセラフィムからの第一次攻撃隊、続い てカーグ少佐率いるセイレーンからの第二次攻撃を敢行する。第一攻撃隊は、要塞手 前 0.8宇宙キロの地点にワープアウトすると同時に、艦載機は全機発進。総攻撃を敢 行する。目標は要塞砲台、ミサイル弾薬を間断なく発射し、一撃離脱でそのまま駆け 抜けて戦線を離脱する。一分一秒足りとも要塞宙域に留まることのないように。  続いて第二次攻撃隊は、提督の乗り込む重爆撃機の護衛しつつ、合図を待て!  敵守備隊は、我等が本隊を迎撃すべく要塞から離れつつある。その間隙をついて攻 撃するのだ」  作戦の概要が確認される。 「全艦発進!」
     
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