第十六章 新艦長誕生
[  それから数日後。  リンダのサラマンダー艦長としての初搭乗の日がやってきた。  その日は、リンダの大尉の任官式でもあった。  サラマンダーの上級士官搭乗口には、寿退艦予定の副長のカーラ・ホフマン中尉以 下主要な艦の責任者達が出迎えていた。 「ようこそリンダ・スカイラーク艦長。お待ち申しておりました」  艦長と呼ばれて、改めて感慨深げになりつつも、就任の挨拶を交わすリンダ。 「こちらこそ、よろしくお願いします」  カーラが出迎えの要人達を紹介し始めた。 「紹介します。機関長のジェド・コナーズ上級曹長です」 「コナーズです」 「よろしく」 「航海長のエレナ・F・ソード先任上級上等曹長です」 「エレナです。よろしく」 「よろしく」  以下次々と紹介が続いていく。 「それでは早速艦橋へ案内しましょう。みんなが待ってますよ」 「判りました」  タラップを昇り艦内に入ってすぐに、乗艦受付所があった。  そこで乗艦する士官達を管理しているデビッド・ムーア軍曹に申告する。 「リンダ・スカイラーク大尉。乗艦許可願います」  そしてリンダの個人情報が記録されているIDカードを差し出す。  それを受け取って端末に差し込み、個人情報を確認しているムーア。  画面にリンダの写真画像と共に、チェックOKの文字が現れた。 「リンダ・スカイラーク大尉を確認しました。艦長殿、サラマンダーへようこそ」  とカードを返しながら敬礼をした。 「ありがとう」  艦橋に入った。  一斉にオペレーター達が立ち上がって敬礼で出迎えてくれた。 「リンダ・スカイラーク艦長! ようこそいらっしゃいました」 「これから、よろしくお願いします」  ここでもまた士官達の紹介が繰り広げられた。  周知の通りに全員女性士官である。  艦隊の総指揮を司るサラマンダーの艦橋は、今まで勤務していた軽空母セイレーン と大きく違うところがあった。  その大きな違いは艦橋が二層構造になっていることだった。  一個の戦艦としての操舵や艦の艤装兵器への戦闘指示を執り行う戦闘艦橋と、一段 上の階層にあって、戦闘艦橋を見下ろす位置にある、ランドール提督が鎮座する艦隊 運用のための戦術艦橋とに分かれていた。  戦闘艦橋には、操舵手、艤装兵器運用担当、機関運用担当、レーダー哨戒担当、重 力加速度計探知担当など直接の戦闘に関わるオペレーターがおり、戦術艦橋には多く の通信管制担当がひしめいており、他にパネルスクリーンなどの操作や戦術コンピ ューターなどの設定を行なう技術担当、そして各種参謀達の席がある。 「艦長の席はこちらです。わたしの隣の席になります」  航海長のエレナが席を案内してくれた。  艦長と航海長は何かと蜜に連絡を取り合う必要があるので席が隣同士になっている のだ。しかも戦術艦橋の一番前にある。  そこは、旗艦艦隊司令としての修行をはじめた、前艦長スザンナ・ベンソン大尉の 席だったところだ。 「今後ともよろしくお願いします」 「よろしくね」  丁度そこへランドール提督がパトリシアと共に入室してきた。  他のオペレーター達と共に立ち上がって敬礼するリンダ。  目ざとくリンダを確認して話しかけるランドール提督。 「良く来たねリンダ。よろしく頼む」 「はい、期待に応えられるように頑張ります」 「うん。みんなも共にカバーし合って、より良い艦隊運用が行なえるようにしてくれ たまえ」 「了解しました!」  全員が一斉に答えた。 「いい声だな。早速だが任務だ」 「ええーっ! いきなりですかあ?」  黄色い声が飛び交った。リンダの声も混じっている。 「こらこら。遊びじゃないんだぞ。リンダ、初の操艦だ。心の準備はいいな」 「は、はい。いつでも結構です」 「よし、それでは全員配置に付け」  ランドール提督はやさしい口調ではあったが、何かしら重要な任務を帯びているら しいことに、オペレーター達は気づきはじめていた。 「これよりシャイニング基地に向かう。バーナード星系連邦の新情報を入手したから だ。連邦が総勢七個艦隊の大艦隊をもって、シャイニング基地及びクリーグ基地に向 けて大攻勢をかけて来ることが判明したのだ」  オペレーター達の表情が一瞬にして固まった。 「大攻勢って、それはいつの事ですか?」 「時期はまだ明らかにされていないが、急を要することは確実だ。速やかにシャイニ ング基地に戻って打開策を練らなければならない」  淡々と答えるランドールであったが、事態は急転直下で進展していくことになった。 「全艦発進準備。シャイニング基地に向かえ」  リンダにとっては着任早々の大仕事が待ち受けていた。 第十六章 了
     ⇒第十七章
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