第九章 共和国と帝国
X  インビンシブル艦橋では、援軍の到着と海賊の殲滅とに歓喜の声を上げていた。 「殿下、ありがとうございます。海賊が襲ってくることを予言なされていて、密かにサラ マンダー艦隊に後を追わせていたのですね」  ジュリエッタが感心している。 「まあね。これまで二度もやられたから、二度あることは三度あるだよ」  その時、 「殿下、サラマンダーより連絡が入りました」 「こちらに繋いでくれ」  送受機を取り、サラマンダーからの報告を受けるアレックス。 「ジュリエッタ。サラマンダーの随行の許可を頼む」 「かしこまりました」  早速配下の者に指示を出すジュリエッタ。 「それと艦内の捜索をしてくれ。おそらく艦載機発着口辺りに発信機が取り付けられてい るはずだ」 「発信機……内通者ですか?」  早速、艦内捜索が行われてアレックスから指定された周波数を探って、発信機が発見さ れた。さらに艦内モニターに映し出された、発信機を取り付けたと見られる容疑者も特定 されたのだった。  容疑者の元に警備兵が駆け付けた時には、時すでに遅く命を絶った後だった。 「消されたかな……」  報告を受けたアレックスは呟いた。  生きていれば、首謀者の名前を聞けたかもしれなかった。  そして以前にもあった事件を思い出すのだった。 *参照 第一部第八章・犯罪捜査官コレット・サブリナ 「他にも内通者が?」 「陰謀を企てる者は、幾つもの予防線を張るものだ。実行犯は、その下っ端ということだ よ」 「乗員全員の身元調査を行いますか?」 「いや。その必要はない。どうせ二重三重の予防線を張ってるさ」 「そうでしょうか……」  命の重さも毛ほども気にしない陰湿な陰謀の闇、気高いジュリエッタには理解しがたい ことだろう。 「一度、サラマンダーに戻る。手配してくれ」 「かしこまりました」  本来なら、皇太子殿下が旗艦インビンシブルから離れるのは、警護の上でも避けなけれ ばならないが、同盟軍最高司令官でもあるアレックスの行動を止めることはできない。  アレックス専用の艀「ドルフィン号」が、駆逐艦に護衛されながらサラマンダーへと移 動する。例え目の前にあったとしても、万が一を考慮してである。  サラマンダー艦橋に戻ったアレックス。  オペレーター達の敬礼に迎えられながら、スザンナが明け渡した指揮官席に座る。 「通信記録の解読はできたか?」  開口一番の質問だった。 「残念ながら記録は抹消されていました。引き続きデータの復元作業を行っています。断 片的にでも特定の人物が浮かび上がればよいのですが」 「ふむ。よろしく頼むよ」 「ところで、インビンシブルの居心地はいかがですか?」 「ああ、結構息苦しいな。殿下と呼ばれると、こそばゆいよ」 「そのうち慣れますよ」
     
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