第九章 共和国と帝国
Z  その頃、アレックス坐乗するインビンシブルの後方で、密かに行動する艦隊があった。  スザンナ・ベンソン少佐率いる旗艦艦隊二千隻である。 「輸送艦サザンクロスに、Pー300VX特務哨戒艇を出して前方を索敵させて下さい」  サラマンダーから支持を下すスザンナ。  輸送艦サザンクロスは、タルシエン攻略の際に次元誘導ミサイルを搭載していた艦であ る。今回の巡行には、Pー300VXを積んでいた。 *参照 タルシエン要塞攻防戦  歪曲場透過シールド発生装置を搭載して、電磁波はおろか光さえも透過させて敵に探知 されないという、戦艦百二十隻相当の予算が掛かっている秘密兵器である。  サザンクロスからPー300VXが降ろされて、前方の彼方へと滑るように発進した。  電子装備やら時空歪曲場シールドやらが、エネルギーを馬鹿食いするので長距離は飛べ ず、索敵出動時以外は輸送艦に積まれて待機しているのである。 「Pー300VX、インビンシブルの後方32光秒の位置に着きました」 「敵艦出現想定位置からの索敵範囲圏外になります」 「よろしい。そのまま待機せよ」  獲物を狩るハンターのように、息を潜めてじっと待ち続ける。  アレックスがトランターを出発する数時間前のことだった。  呼び出されてアレックスの元を訪れたスザンナ。 「君に極秘の任務を与える」 「はい!!」 「私は、インビンシブルで帝国に出発する」 「サラマンダーではないのですか?」 「そうだ。私が以前に、帝国からアルビエール侯国へ向かう時に、海賊艦隊に襲われたこ とがある」 「すると今回も海賊が?」 「それだよ。しかし、サラマンダー艦隊が連れ添っていれば、海賊は現れないだろう。わ ざと防御を手薄にして見せることで、敵さんをおびき寄せることができるというものだ」 「内通者がいると?」 「おそらく、ジュリエッタ艦隊の中に紛れ込ませているだろう。そして、逐一艦隊の位置 座標を知らせる発信機かなんかを持っているはずだ。宇宙は広すぎる、予定進行ルートが 判明していても、それだけでは遭遇することは不可能だ」 「なるほど」 「それで、サラマンダーで後ろからサポートしてくれ」 「わかりました」 「まず最初に、Pー300VXで通信傍受して、内通者のいる艦を特定して、インビンシ ルの私に報告してくれ」  さらに、綿密な作戦が伝達される。  サラマンダー艦橋の正面スクリーンを見つめているスザンナ。  そのはるか先には、アレックスの乗るインビンシルがいる。  自ら囮となって、仇なす見えない敵をおびき出す計画。  そして、その掃討のために、サラマンダー艦隊を預けてくれた。  責任重大であるが、その絶大なる信頼に応えようと誓うスザンナだった。 「VXより入電。前方二時の方向に感あり!」 「識別信号は出していますか?」 「出しておりません。帝国及び共和国同盟の味方信号なし!」 「どうやら、敵と見てよいですね。全艦戦闘配備をしておきましょう。提督の合図次第で す」 「それにしても、こうやって秘密裏に行動するってのはいかがなものでしょう?」 「提督は、これまで二回も海賊に襲われていますからね」 「帝国首都星アルデラーンとアルビエール侯国との往来でですね」 「そうです。今回の道行きにも、提督いえ、皇太子を亡き者にしようと企む摂政派の一派 が蠢いている可能性大です」 「大艦隊で移動していればともかく、少部隊ならば好機とするでしょうね」 「もう一度確認しておきます。敵の旗艦もしくは指揮艦は撃沈させずに、航行不能にして 鹵獲して下さい。指揮官を捕虜にして、黒幕を白状させるのです」 「接近接弦装備の確認」 「白兵準備!」
     
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