第五章 アル・サフリエニ

「駐留艦隊の総数は、およそ一万八千隻です」
「工業大国を防衛するには、少な過ぎやしないか……?」
「補給の問題でしょう。工業国とはいえ、資源を輸入して加工品を輸出するという国政ですから、補給までは手が回らないでしょう。何よりも最大の問題が食料補給でしょう」
「自分達の国民でさえ食糧不足で困っているのにか?」
「その通りです。連邦軍は食料を自前で確保しなければなりませんから、大艦隊を派遣することはできないでしょう」
「だろうな」
「とにかく、数で圧倒して勝利は確実ですが、やりますか?」
「当然! 戦闘配備だ」
「了解。戦闘配備」
 戦闘が開始された。
 一万八千隻対十万隻という戦力差。数の上ではウィンディーネ艦隊の圧勝というところだが、技術大国を防衛する責務に燃える駐留艦隊の激しい抵抗にあって、一進一退が続いていた。というよりも、投降を一切認めない『皆殺しのウィンディーネ』と悟って、死にもの狂いで反撃していたのである。
「なかなかやるなあ……。エールを送りたくなるよ。しかしこれでどうだ」
 ゴードンは両翼を伸ばして完全包囲の態勢を取ると、オドリー少佐の部隊に突撃を命じた。
 ランドール戦法の攻撃力が加わると、さしもの駐留艦隊も態勢を乱して総崩れとなり、降伏を認めないゴードンによって全滅に至った。
 すぐさま惑星トバの首長と面会を求めたが拒絶された。
「我々はバーナード星系連邦と協定を結んだ。たとえ今ここで解放戦線と協定を結び直したとしても、連邦は再び艦隊を次々と派遣してくるだろう。たかが三十万隻そこそこの解放戦線に何ができる。最後に勝つのは連邦に決まっている。よって我々は解放戦線とは組みしない。判ったらさっさと立ち去るが良い」
 そういわれて、
「はい、そうですか」
 と引き下がるようなゴードンではなかった。
「言ってくれるねえ……感心するよ」
 相手が言うことを聞かなければ実力行使しかない。
 ただちに降下作戦に入り、瞬く間に惑星トバを占拠してしまったのである。
 首長ら高級官僚を拘束し、連邦軍排除派の民衆運動家のリーダーを首長に据えて、解放戦線との協定を結んでしまったのである。
 旧首脳陣は、ゴードンが実力行使という強行手段に出るとは思いもしなかったようである。アレックス率いるランドール艦隊が、民衆を大切にし解放のために戦っていることは知っている。
 おだやかなるアレックスの性格から民衆をないがしろにする行為には出ないだろう。
 そんな甘い考えがあったに違いない。
 しかし、連邦への復讐に燃えるゴードンには通じなかった。
 連邦の味方をすると公言したトバの首長を許すわけにはいかなかったのである。
 こうしてゴードンは、鉱物資源・精錬所・造船所と、戦艦を増強する手段を確保したが、肝心の資金がなかった。民衆から税金を徴収して運用資金を得られる政府軍と違って、解放戦線には海賊行為でもやらない限り資金集めは非常に困難であった。そもそもアレックスが銀河帝国へ向かったのも活動資金を援助してもらうためである。
 幸いにもカルバキア共和国から鉱物資源の採掘権が認められている。そこで資源を開発して希少金属を採掘して、それを売却して資金源とすることを決定した。そのために鉱脈探査の専門家を呼び寄せて調査に当たらせた。まるで山師のようで、どうなるものか判らないが、手をこまねいていては解決しない。
 その間にも、資金を提供してくれる友好国を求めて奔走するゴードンであった。

 第五章 了

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