第八章・犯罪捜査官 コレット・サブリナ
V  レイチェル・ウィング大尉を筆頭に、関係者が一同に会している。  同僚の死亡という姿を目の当たりにして、その表情は暗い。 「事故捜査官の、コレット・サブリナ中尉です。今回の事件、ミシェール・ライカー 少尉の死亡について、みなさんの証言を伺いたく集まっていただきました」 「やはり事故なんですか?」 「それは調査中ですので、この場では明らかにはできません」 「そうですか……」 「それではお聞き致しますが。まず、第一発見者は、どなたですか?」  関係者を一同に集めた中で、開口一番尋ねる。 「カテリーナ・バレンタイン少尉です」  レイチェルがカテリーナに視線を送りながら答えた。 「では、バレンタイン少尉。事件に遭遇した時、誰か他にいましたか?」 「いいえ、一人でした」 「ジムに一人でやってきて、事件に遭遇したのですね」 「はい、そうです」 「どうしてジムにきたんですか?」 「わたしは当直でした。交代の時間になってもミシェールが姿を見せないので探して いたんです」 「当直の担当部門は?」 「艦内放送FM局スタジオ勤務です」 「パーソナリティー?」 「いえ、ADです」 「どういう事をしているのですか?」 「タイムキーパーが主ですが、その日に使う曲のセッティングや、必要備品を用意し たりもしています」 「スタジオは何名で?」 「四名です。ディレクターと調整室員が他にいます」 「その方の氏名と所属を教えてください」 「はい」  メモにカテリーナが言った氏名を記入するコレット。 「ところであなたがジムに、ミシェールを探しにきて、器械に挟まれた姿を発見した のですね」 「はい。てっきり、死んでいると思って、悲鳴をあげてしまったんです」 「その時、まったく遺体には触れなかったんですね」 「恐くて……」 「何か物音がしたとか、不審な点はありませんでしたか?」 「いいえ、何も。気が動転していましたのでなにも……」 「そうですか、わかりました」  続いて現場立ち会い者達の証言をとることにする。 「そしてウィング大尉達が、カテリーナの悲鳴を聞きつけてやってきたんですね」 「そうです」 「何か不審な点に気づいた事はありますか?」 「いいえ」 「どなたか、遺体には触りましたか?」 「生死を確認するために、わたしが脈を計りました。首筋です」  レイチェルが名乗り出た。 「他の箇所には?」 「いいえ。触りません。それで死んでいると判って、捜査科に連絡しました。現場保 存のために、遺体はもちろん周辺の器械にも触れないよう、物品を動かさないように 指示しました」 「おそれいります。捜査協力感謝します」 「ミシェールに最後に会った方は?」 「たぶんわたしだと思います」  ミシェールと同室のクリシュナ・モンデール中尉が答える。 「ミシェールの死亡直前の行動を教えてください」 「ミシェールとわたし達は、食事前にこのジムで汗を流していました。その後の食事 時間に疲れたと言って、食事を拒否して部屋に残ったんです。それが最後でした」 「同室のみなさんは、揃って食事に行かれたのですね」 「はい。当直のカテリーナ以外は一緒でした」 「ミシェールが着ていたレオタードはその時と一緒ですか?」 「はい。同じです」 「最後に姿を見たという正確な時刻が判りますか?」 「うーん。時計を見ていないから……。あ、そうだ! 艦内FM放送で、今流行の 『サラサーテの彼方』という曲が流れはじめたから……」 「カテリーナはADでタイムキーパーをやってるそうですが、調べられますか?」 「はい。スタジオで当時のタイムスケジュールを調べれば正確な時刻が判ると思いま す。スタジオ要員なら誰でも判ります」 「判りました。後でスタジオに寄ってみましょう」 「放送中はスタジオには入れないので、午後五時のスタッフ交代前を見計らって訪ね ると丁度良いと思います」 「ありがとう」  メモ帖に午後五時スタジオと記入するコレット。
     
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