陰陽退魔士・逢坂蘭子/胞衣壺(えなつぼ)の怪

其の拾壱 事件ファイル  台所。  父親が喪服を脱いで食卓上に投げ捨て、ネクタイをグイと下に引きずりおろして、椅 子の背に頭をもたげるようにして疲れたようにだらしなく座っている。  食卓の上には、葬儀屋が手配したのであろう家族用の食事が並べられている。  そこへ美咲が入ってくる。  すでに喪服から普段着に着替えて、外出していたようである。 「お帰り、食事しないか」  それには答えず、無言で二階の自室への階段を昇る美咲。  母親を亡くした気持ちを察して、それ以上は追及しない父親。  二階に上がり、自室に入る美咲。  その足元には、黒ずんだ血液の塊がこびり付いたままとなっている。  仮に拭き取ったとしても、ルミノール反応が明確に現れるだろう。  日頃から、許可なく入室禁止と固く約束させていた。  ましてや男性である父親が入ってくることはなかった。  母親がたまに許可を得て入ってくるだけである。  血痕に目をくれることなく、机に向かう美咲。  その上には、怪しく輝く胞衣壺が鎮座している。  数時間後、玄関から無表情で姿を現す美咲。  その右手には、キラリと怪しく輝く刀子を握りしめていた。  公立図書館。  パソコン閲覧室で過去の新聞を調べている蘭子。  各新聞社ともデータベース化されているが、朝日新聞の【聞蔵IIビジュアル】を開き、 利用規約などに同意した後、ログインする。  何かと朝鮮日報(韓国の新聞社)日本支部と叩かれるほど、日本国と日本人を侮辱し 朝鮮寄りの報道姿勢を取っている新聞社。  それが証拠に、激しい旭日旗叩きをしている韓国人でも、旭日旗模様の朝日社旗だけ は何故かスルーしている。  それはともかく、調査だ。  明治12年(1879)から〜平成11年(1999)までの紙面イメージを、日付・見出し・キー ワード等で検索可(号外・広告含む)  昭和60年(1985)以降の記事を収録し全文検索可能。  まずは、定番の住所・氏名などから、事件の手がかりを探る。  タッチペンで画面をクリックしながら、記事を検索する。 「あった!」  そこには、かの旧民家の写真とともに、事件の内容が記述されていた。
     
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