リリア「そんな遠いに道のりを歩いてきたんですか?」
コンラッド「それはまた。大変な苦労でしたでしょうね」
道具屋「あなた達、ファンタリオン王城からご一緒してたんじゃないんですか?」
コンラッド「いえ、私は途中で旅を一緒にすることになったんです」
リリア「あたしは、魔物に襲われて死んで魂がさまよっている時に、ナタリーさんの蘇生術とある方の身体を借りて生き返ったんです」
道具屋「まあ、その身体は借り物なんですか?」
リリア「はい。身体はこれですけど、中身は女の子です」
道具屋「なるほど、どうりでしゃべり方に違和感を感じたのですね」
ナタリー「で、これは何なんですか?(改めて尋ねる)」
道具屋「ああ、話がそれましたね。これはマジックマッシュルームという薬草から薬効成分を抽出精製したものです」
コンラッド「マジックマッシュルーム?」
ナレ1「マジックマッシュルームは、幻覚成分であるトリプタミン・アルカロイドのシロシビン、またはシロシンを含む菌類(キノコ)」
ナレ2「日本では、麻薬、麻薬原料植物、向精神薬及び麻薬向精神薬原料を指定する政令にて麻薬原料植物として扱われている」
ナレ1「インターネットにて販売しているのを見かけるが、上記の通り麻薬扱いなので購入しないように」
リリア「何に使うのですか?」
道具屋「解呪薬の原料の一つです」
ナタリー「解呪薬?」
道具屋「村に入って何かお気づきのことはありませんでしたか?」
コンラッド「村人が一人もいませんでした」
リリア「その代わりに猫がたくさんいました」
ナタリー「村人全員が猫になったのかと……」
道具屋「実はその通りなのです。ある魔女によって呪いをかけられているのです」
リリア「魔女の呪い?」
コンラッド「それで村には猫しかいなかったんですね」
道具屋「猫にされてしまった村人を元に戻すために、この薬を取り寄せることにしたのです」
ナタリー「それにしても、あなただけ猫にされていないのは、どうしてですか?」
道具屋「実は解呪薬があったんです。私もやはり猫にされてしまいました。ところが猫には解呪薬の入った瓶の蓋を開けられません」
リリア「どうなさったのですか?」
道具屋「瓶を棚から落として割ったんです。薬は床の上に散らばりましたが、何とか舐めて呪いが解けました」
コンラッド「良かったじゃないですか」
道具屋「しかし残りの薬には不純物が混じってしまって解呪薬としての効能が失われました」
リリア「それで妹さんに解呪薬を届けるように依頼したのですね。ギルドを使って」
道具屋「その通りです」
リリア「それじゃあ、早速解呪薬を作りましょう」
道具屋「それが、もう一つ材料が足りないのです」
コンラッド「それは何ですか?」
道具屋「マンドレイクです」
ナレ1「解説しよう。マンドレイク(Mandrake)、別名マンドラゴラ(Mandragora)とは、ナス科、マンドラゴラ属の植物である。古くから薬草として用いられたが、魔術や錬金術の原料として登場する。根茎が幾枝にも分かれ、個体によっては人型に似る。幻覚、幻聴を伴い時には死に至る神経毒が根に含まれる」
リリア「マンドレイク? 以前錬金術師から聞いたことがあります。人のように歩き回り、引き抜くと悲鳴を上げてまともに聞いた人間は発狂してしんでしまうという伝説があります」
ナタリー「それじゃあ、採取できないじゃない」
リリア「ですから、飼い犬などを首輪でマンドレイクに繋いでおいて、遠くから犬を呼び寄せるのです」
コンラッド「犬は飼い主の元へ駆けだし、首輪に繋がったマンドレイクを引き抜くということか。しかし、犬は……」
リリア「はい。マンドレイクの悲鳴を聞いて死んでしまいます」
ナタリー「あたしも聞いたことがあるわ。マンドレイクの取引には、死んだ犬も一緒にということらしいわね」
道具屋「まあ、どれも噂ですから……。ほんとのところは誰にも判りません」
コンラッド「ともかく、そのマンドレイクを手に入れないといけないようですね」
リリア「どこにあるか判っているのですか」
道具屋「このモトス村から南へ12000マイラほど行ったところに妖精の森があるらしいのですが、その森のどこかに茂っていると言われています」
リリア「妖精の森ですか? 森に入った旅人を惑わす結界が張られていると聞いたことがあります」
道具屋「はい。森に入ったら二度と生きては帰ってこられないとか。だから誰も近づかないそうですよ」
ナタリー「うう……。またぞろ人面樹が出てきそうな所ね」
コンラッド「村人の状況を知った以上は、そのマンドレイクを手に入れるために妖精の森へ行くべきだと思うのですが」
ナタリー「生きては帰れないかも知れないのよ。それに、マンドレイクをどうやって採集するのよ」
コンラッド「マンドレイクなら、犬の代わりに猪などの動物でも良いでしょう。食料は必要ですし、どうせ屠殺してしまうのですから」
リリア「考えていてもしかたがありません。村人を救うためにも妖精の森へ行きましょう」
ナタリー「冒険に出たことがないリリアが言うような言葉じゃないと思うけど」
リリア「でも、なんとかしたいと思いませんか? 人として」
ナタリー「気軽に言うものじゃないと思うけど」
リリア「でも……」
道具屋「あの、無理していただかなくても結構です。妹にもマンドレイクを手に入れるように頼んでますし、ギルドにも依頼を出してますから」
ナタリー「ギルド? 報酬はいくら?」
道具屋「マンドレイクを重量100グレンあたり、10000Gです」
ナタリー「よっしゃー! その依頼、あたし達が請け負った」
道具屋「それはありがたいのですが、この村のギルドの職員もみな猫になってますから、契約ができないですよ」
ナタリー「あなたと直接契約はできないの?」
道具屋「それはできません。二重契約になりますから」
ナタリー「うう……。なんとかならないのかしら」
コンラッド「村人が困っているのに、黙って見過ごしていくわけにもいかないでしょう」
ナタリー「そりゃまあ、コンラッドは騎士で、人を助けるのが心情の職業ですものね」
コンラッド「そのとおりです」
リリア「いいじゃありませんか。袖触れ合うも多少の縁というじゃありませんか」
道具屋「こうしませんか。私が証人になりますから、後承認契約を結びましょう」
ナタリー「後承認契約?」
道具屋「たった今、わたしが考え出したものです」
ナタリー「なんだ、それじゃあ効力がないんじゃない?」
道具屋「それは何とも言えませんが、ギルドの方々だって猫にされた呪いを解いてもらうんですから。きっと納得していただけるでしょう」
ナタリー「あやしいものだわね」
道具屋「あともう一人証人があった方が良いでしょう。そこの騎士さんが良いでしょう」
コンラッド「わたしですか?」
道具屋「お見受けしたところ、王国騎士団のナイトの称号を持っていらっしゃるようですね」
コンラッド「判りますか?」
道具屋「身内からあふれる気品が漂っています」
ナタリー「ナイトって偉いの?」
リリア「王国のために身を奉げ、国民を守るために死をもいとわずに戦うとか」
道具屋「そうです。公式的に認められた身分ですからね」
ナタリー「いわば、国家公務員上級職みたいなものね」
リリア「なんですか? その公なんとかというのは……」
ナタリー「官僚天下りでべらぼうな報酬を貰ったり、予算から裏金としてプールしたりして自分達の遊行費や飲食代として、国民の税金を無駄使いする悪徳役人のことよ」
リリア「ひどい話ですね」
ナタリー「そのくせ人手が足りないかったからと言い訳して、幼児虐待や育児放棄で多くの子供たちが死んでいくのを、手をこまねいて見過ごしている職務怠慢な奴らとかね」
リリア「許せないですね。高給をいただいているのだから、24時間血眼になって国民のために働きなさいといいたいです」
道具屋「あの……。何の話しをしておられるのですか?」
ナタリー「ああごめん。話がそれたわね、ニポンとかいうおめでたい国のことを言っていたのよ」
道具屋「ニポン?」
ナタリー「海を遥か遠くに渡った、地球の果てにあるという広大な滝のすぐそばにあると噂されている国でね」
コンラッド「話を元に戻しませんか?」
ナタリー「ああ、悪かったわね。コンラッドはいい人だから気にしないでね」
コンラッド「ともかくマンドレイクを採集するために、妖精の森に出かけようと思うんです」
ナタリー「いよっ! さすが王国騎士、どんな苦難にも挑戦するいい男」
コンラッド「茶化さないでください」
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