冗談ドラゴンクエストⅢ 冒険の書・3
2020.04.08

冗談ドラゴンクエストⅢ 冒険の書・3


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ロマリア地方へ

勇者「国境の長いトンネルを抜けると……」
ナレ「深い森の中だった」
リリア 「そして森を抜けると」
ナタリー「新天地の大陸が広がっていたのであった」
コンラト「何やってるんですか?」
勇者「いやなに、ちょっとリレー対話を……」
リリア 「ともかく城が見えてますね」
勇者「そうだな。キメラの翼やルーラの拠点とするために、すみやかに入城しよう」
ナタリー「確かにね……」
ナレ「城に入る一行」
兵士「ようこそ、ロマリアのお城に!」
勇者「城下町か、城に入る前に町内を反時計回りに情報集めするぞ」
町人「これはうわさですが……やがてアリアハンの勇者がやってきて、魔王を退治してく
れるそうですよ」
勇者「おうよ。期待していてくれ」
ナレ「武器屋に入る」
町人「魔王が世界をほろぼすといううわさのせいかも知れんが…昔にくらべ、ひとびとの
心もみだれたものよ。なげかわしいことだ」
ナレ「東の家に入る」
住民「なにやら世の中がぶっそうになってきているらしいねえ。ここロマリアもせいぜい
王さまにがんばっていただかねばならんのに……」
勇者「箪笥の中に皮の帽子、壺の中に小さなメダル、見っけ(*^^)v」
リリア 「あなたは泥棒ですか?」
勇者「なに言ってるの。このゲームは、壺とか箪笥とかに入ってるものは、自由に持って
いってもいいんだぞ」

ナレ「中央広場で遊ぶ子供に聞く」
子供「ねえねえ、おねえちゃんたち、アリアハンからきたんでしょ?ボク、すぐにわかっ
たよ」
勇者「おねえちゃんたち……って、女だけのパーティーって、わかるのか?」
ナタリー「女だけじゃない」
勇者「そうかあ?俺のグラフィックは、どうみても男みたいだぞ」
リリア 「それは、いわないことにしましょう」
ナレ「東の教会に入る」
町娘「この城のはるか北にカザーブの村がありますわ」
勇者「ふむ、次の目的が分かったな。お、本棚から『あたまがさえるほん』を見つけたぞ。
これを使えば知力でも上がるのかな?おい、ナタリー読んでみろ!」
ナタリー「ええ、あたしが?なんで」
リリア 「知力が上がるとしたら、魔法使いのナタリーさんが読むべきですよね」
コンラト「私もそう思います。ナタリーさんは知力を必要とする呪文が頼みですから」
ナタリー「どうなっても知らないわよ」
ナレ「ナタリーは『あたまがさえるほん』をパラパラとながめた。とても合理的なあたま
の使い方が、ナタリーのかしこさを引き出す!ナタリーはひとにきれものと呼ばれるよう
になった!」
リリア 「門前のおじいちゃんに聞いてみましょう」
老人「フューフュー。ああ、くちぶえがうまくふけん。ボビーや!どこにいったんじゃ、
ボビー!そろそろ、うちに帰るぞい!」
コンラト「その犬なら、城の外壁の隅にいましたよ」
リリア 「そろそろ城に入りましょう」

城内へ

ナレ「ロマリア城の中に入る一行」
衛兵「もしや、アリアハンからまいられたおかたでは?おお!お待ちしていました!」
勇者「まあ、王さまに会うまえに城内を見物しようぜ」
ナレ「と、城の城郭通路に出て散策をはじめてしまった」
勇者「ぐるぐると城郭を巡って、西側の階段を昇って、昇って」
コンラト「ここはどうやら西側の尖塔のようですね」
リリア 「頂上です。鉄格子があります。中の人と話せるようですよ」
囚人「うるせえなあ!オレはカンダタの仲間じゃねえって、なんといったらわかるんだ!」
勇者「何も言ってねえよ」
囚人「…あれ?お前だれ?オレはてっきりこの城の兵士がまた聞きにきたと思って…まあ、
いいや。カンダタってのは、オレなんかより、よっぽど悪人だぜ。シャンパーニって塔に
分をあつめて住んでいるから、自信があるならやっつけてやれよ」
コンラト「どうやら、シャンパーニの塔へ行くことになりそうですね」
ナレ「西側の尖塔を降りて、再び城郭通路を巡って東に向かうと、階段のそばをうろうろ
ている人がいる」
商人「北のカザーブからくる途中、魔物におそわれて荷物をみんな落としてしまいました。
なんとかロマリアに着いたものの、もう商売あがったりですよ。トホホ……」
勇者「その荷物、見つけたら何か貰えるのかな……え?荷物探しのクエストはない?残念」
ナレ「階段を昇った先は、東側の尖塔であった」
老人「わしの息子は遊び好きでな、王さまになってもそのくせがぬけん。困ったやつじゃ」
勇者「本棚から、『ずるっこのほん』を見つけたぞ」
ナタリー「おじいさんの話聞かないで、本探しばかりしないでよ」
勇者「え?何か言ったか?」
リリア 「聞いてないですね。降りましょう」
ナレ「城郭通路を南下する」
コンラト「ここは兵士の待機所のようですね」
兵士「ふーむ。このあたりは、とくに魔物がふえているようだな」
勇者「それは知っているさ」
兵士「東にはおそろしい怪物が……。まず北に旅立ち、腕ためしするがよかろう」
コンラト「なるほど、まだ東には行くな!ということですね」
リリア 「北にあるというカザーブに向かうことになりますね」

勇者「だいたい情報は集まったな。王さまに会うとするか」
詩人「私は、かぜのささやきを聞きました。あなたも聞きますか?」
勇者「吟遊詩人か、聞かせてみろ」
詩人「カザーブの村のはるか西にシャンパーニの塔がそびえているよ、そびえているよ…」
リリア 「西の塔の囚人が言っていた、にシャンパーニの塔が西にあるということですね」
侍従「どうかわが王のたのみを聞きとどけてくだされ!」
王妃「アリアハンは美しいところと聞きます。きっとひとびとの心も美しいのでしょうね」
国王「よくぞきた!勇者オルテガのうわさは、われらも聞きおよんでおるぞよ。勇者が次
のレベル……。ではたのみがある!」
勇者「なんだよ」
国王「カンダタという者が、この城からきんのかんむりをうばって逃げたのじゃ。もし、
それを取り戻せたなら、そなたを勇者と認めよう!さあ、ゆけ!勇者よ」
勇者「認めようが認めまいが、俺は勇者だけどな」

カザーブの村

コンラト「まずは、カザーブの村へ行きましょう」

村娘「ここはカザーブ。山に囲まれた小さな村です」
勇者「ここは時計回りに情報集めだな」
ナタリー「時計回りとか反時計とか、どういう基準で決めてるの?」
勇者「気分だ!」
ナタリー「あ、そ……」
勇者「教会には何もなかったな。しかし、右に行けるぞ」
リリア 「墓地ですね。誰かいます」
剣士「ここには、偉大な武闘家が眠っている。彼は素手でクマをも倒したという。できる
ならあやかりたいものだな」
町娘「この村より北にいくとノアニール。西に行けばシャンパーニの塔があります」
ナタリー「聞いた?シャンパーニの塔ですって」
勇者「いずれ行くことになるだろう。今は情報集めだ」
コンラト「この家は、どうやら酒場のようですね」
店主「ここは村の酒場。ゆっくりしていってください」
町男「どこかに、ねむりの村があるなんて、信じられないよ。ねえ、旅のひと」
勇者「知るかよ!」
町娘「だからね、その村はエルフをおこらせたために、村じゅう眠らされたわけ!」
ナレ「酒場を出ようとした時……」
勇者「ちょっと待て!」
ナタリー「なあに?」
勇者「見ろ!酒場の北側に階段が見えるだろう」
コンラト「ああ、見えますね」
リリア 「隠し通路とかがありそうですね」
勇者「壁を調べろ!」
ナレ「一行が酒場の壁を調べたが、何もなかった」
勇者「ということは外だ!外壁を調べろ」
ナタリー「あった!裏階段」
コンラト「酒場の二階のようです」
子供「パパとママなら、夜になれば帰ってくるよ」
勇者「よし、夜になったらまた来よう。その前に……」
コンラト「また、家探しですか?」
勇者「けがわのフード、いのちのきのみ、見っけ(*^^)v」
ナタリー「いい加減にしたら?」
勇者「何をいうか!ドラクエでは探して見つけた者、早い者勝ちなんだから。さあ、次の
場所へGO!だ」
ナレ「道具屋の裏部屋に入る」」
勇者「ステテコパンツかよ。こりゃ、トルネコの愛用だよな。男性専用だから売るしかな
い。店内は……宝箱があるけど、店主が邪魔だな。夜になって眠ったらチャンスだ!」
ナタリー「中央の池の中の小島に誰かいるわよ」
老人「ちからのない魔法使いでも、どくばりで急所をつけば、怪物をしとめられるという。
昔はこの村の道具屋でも売っていたぞ」
リリア 「毒針?魔法使いとなれば、ナタリーさんが適格ですね」
勇者「道具屋かあ……。あの宝箱に入っているかもな」
リリア 「この町の情報は全部集まりました」
勇者「夜になるまで、外で時間潰ししよう」
コンラト「時間潰しと言っても、魔物との戦いですけどね」
ナレ「こうして夜になるまで町の外で、魔物との戦いに勤しむであった」
勇者「よし、夜になったぞ。町に戻って、夜這いを掛けるぞ」
リリア 「夜這い?ちょっと意味が違うようですが……」
勇者「気にするな。お、墓場に骸骨が蠢(うごめ)いているぞ。行ってみよう」
ナタリー「いやだ……」
骸骨「わたしは、偉大な武闘家。うわさでは、素手でクマを倒したことになっておる。し
かしてつのつめを使っていたのだよ。わっはっは」
勇者「ふむ、何かくれるかと思ったのだが……。お、右の墓のそばに、ちいさなメダル見
つけだぞ(*^^)v」
ナレ「つづいて、酒場の二階を訪れる」
店主「うわさでは、ノアニールの西の森の中に、エルフたちがかくれ住んでいるそうです
よ」
主婦「おやめくださいませ!主人がみていますわ!あら、いやだ。ねぼけちゃったみたい
……」
勇者「夢を見ていたのか……。16歳の女の子が夜這いかけられるわけないからな」
ナタリー「あんたなら、やりそうだわ」
勇者「俺がレズビアンとでも言うのか?」
ナタリー「冗談ドラゴンクエストIを読んだら?」
勇者「……読んだぞ。あの勇者は俺じゃないし」
ナタリー「そうかしら。男で2回、女レズで1回、合わせて30000G、キッチリ耳を揃えて支
払ってもらおうか」
勇者「た、たんま!それって異世界の勇者だろう?俺には関係ねえよ。な、な?」
ナタリー「じーー(勇者の顔を凝視する)ま、いいわ。そういうことにしてあげるわ」
勇者「(ほっと胸を撫で下ろして)つ、次だ。道具屋に行くぞ!」
リリア 「毒針があったらいいわね」
ナタリー「あなたまで、それを言うの?」
リリア 「じょ、冗談よ」
ナレ「道具屋に入りました」
店主「ぐうぐう……」
勇者「寝ているな。よしよしヾ(・ω・`)忍び足でいくぞ」
ナレ「勇者は、宝箱からこんぼうとどくばりを見つけた」
ナタリー「やったあ!どくばりだわ」
勇者「なに喜んでんだよ。やっぱり欲しかったんだ」
ナタリー「ち、違うわよ。ふん」
勇者「ま、いいか。とりあえず、この町周辺でレベルアップしよう」
コンラト「そうですね。全然、歯が立たない魔物のグループも出ますし」
ナレ「カザーブの村の近辺でレベルアップに励む一行」
勇者「ち、ちき、しょう……キラービーのま、ひ攻撃、うけち、まった、ぜ……」
リリア 「まんげつそうで治療しましょう」
勇者「ま、待て。む、らに、入れ。ある、き回れ、ば、治る」
コンラト「判りました。すぐに村に入りましょう」
ナレ「村に入り、しばらく歩き回って麻痺を回復させることにした」
勇者「よし!治ったぞ」
ナタリー「村が近かったから良かったもののケチねぇ…(^^;」

勇者「こういうこともあろうかと、すぐ避難できるように町のすぐそばをクルクル回って
いたのだよ」
リリア 「良かったですね。わたしが、麻痺回復呪文(キアリク)を覚えればいいのですが…」
ナタリー「これからは、麻痺回復のまんげつそう、持っていく必要ありね」
勇者「それにしても……SFC版とGB版には、この辺りに第一すごろく場があるはずな
んだがなあ('ω')」
三人「……(無視)」
コンラト「そろそろ、次の目的地に行きませんか?」
ナタリー「そうね、レベルアップもある程度進んだし」
リリア 「ロマリアの王さまの依頼である、きんのかんむりの奪還ですね。城の牢獄に入れられて
いた囚人が、カンダタがシャンパーニの塔にいると言ってました。ここから西へ向かったとこ
ろにあります」
勇者「シャンパーニの塔か……誰か、ダンジョン脱出呪文(リレミト)覚えているか?」
ナタリー「コンラッドは論外だし、あたしがレベルアップすれば……だけどね」
勇者「だと辛い行軍になるな、帰るか……」
ナタリー「あんたねえ!なんのために冒険はじめたのよ(と、勇者の耳を引っ張って)はいはい、行
くわよ」
勇者「痛い、痛い。なんか……。この情景、どこかで体験したような……」
ナタリー「Iを読み返しなさい」
ナレ「というわけで、次なる目的地であるシャンパーニの塔へと出発したのであった」
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銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第七章 宇宙へ Ⅱ
2020.04.05


 機動戦艦ミネルバ/第七章 宇宙へ


II


 総督軍中央情報局。
「トランターに接近する艦隊があります」
「なに?どこの艦隊だ」
「総督軍ではありません。おそらく反乱軍かと思われます」
「接近艦隊の数、およそ七万隻。現在L5ラグランジュ点を通過中です」
「一個艦隊か。ワープゲートなしでここまで来るには、補給艦を連れてきているな。実質
戦艦五万隻というところだな」
「いかが致しますか?」
「無論迎撃に出る。留守を預かっている者として、猫の子一匹通したとあっちゃ責任問題
になる」
「猫……ですか」
「たとえだよ。行くぞ」
 と、防衛艦隊帰艦バトラスの駐留している宇宙港へと向かう司令官だった。
「トランターが空になりますが、よろしいのですか?」
「近づいているのは、ランドールの所の艦隊である可能性大だ。だとしたら、敵艦隊の数
倍以上の数で対処しなければ勝てない。これまでの経験からな」
「なるほど……」
「迎撃は、持てる兵力のすべてを出して当たるのがセオリーだ」
 首都星の防衛の役目を担っていた駐留艦隊が、接近する艦隊への迎撃のために、トラン
ターを出航した。

 その頃、リンゼー少佐の元へ、ミネルバが宇宙に上がったとの情報が寄せられた。
「ミネルバが宇宙へ飛んだだと?大気圏専用の空中戦艦じゃなかったのか……」
「詳しい仕様は、技術部でも解読できなかったということでしょう」
「共和国同盟の艦艇だろ、そこの技術部の誰も知らなかったのか?」
「はあ、何せミネルバ級はケースン研究所のとある人物が、艦体も運用システムもたった
一人で設計したらしいので、詳細仕様は彼の頭の中ということです」
「とある人物ってなんだよ」
「極秘情報で、名前も顔も誰も知らないそうです。誘拐や暗殺のターゲットにされないよ
うにでしょうね」
「とにかくだ!我々も宇宙へ上がるぞ!」
「宇宙ステーションに上がる連絡艇しかありませんが」
「ったく、主力の艦隊は銀河帝国遠征に出撃しているし、防御艦隊は敵艦隊接近の報を受
けて、迎撃にでている。首都防衛はガラ空じゃないか。そんな時に、ミネルバが宇宙に上
がるとは」
「何か関連がありそうですね」
「大有りだろうよ。もしかしたら陽動に掛かったのかもな」
「陽動ですか、ミネルバが?」
「いや、接近しているという敵艦隊の方だよ」
「敵艦隊が陽動?」

「運よく補修に出ていた戦艦プルートが残っていました」
「よし、艦長に会おう」
 早速乗艦許可を貰ってプルートの艦橋に上がって艦長と面会するリンゼー少佐。
「艦長のマーカス・ハルバート少佐です」
「ミネルバ討伐隊のゼナフィス・リンゼー少佐です」
「で、ご用命はいかに?」
「追っているミネルバが、この宇宙へ出てきました。そこで貴官の戦艦をお借りたい」
「パルチザンの旗艦であるミネルバを討つのは総督軍の使命。となれば従うしかないです
ね。よろしい、このプルートをお貸ししましょう」
「ありがたい」
 快く戦艦の指揮を譲ったハルバート少佐は、
「ミネルバを追いましょう」
 と言った後、
「艦長をリンゼー少佐に交代する」
 艦橋要員に伝達した。
 艦長席に座るリンゼー少佐、その両脇に立つ正副艦長。リンゼーの副官は、さらに後方
の位置に控えて立っていた。
「これよりミネルバの後を追う。機関始動、微速前進」
「機関始動」
「微速前進」
 ゆっくりと宇宙ステーションを出てゆくプルート。
「L4ラグランジュのワープゲートへ向かえ」
「進路ワープゲート」
 副官が復唱する。
「なぜワープゲートですか?」
 ハルバート少佐が尋ねる。
「ミネルバの航行システムは、磁力線に浮かぶように進む船のようなものです。つまり航
行できるのは、磁力密度の高い大気圏内と惑星周辺のみで、外宇宙には出られないのです。
惑星周辺で重要施設となれば……」
「ワープゲートということですね」
「現在、反乱軍接近との情報から防衛艦隊は迎撃に出て、ワープゲートは無防備です」
「急ぎましょう。全速前進でワープゲートへ向かえ!」
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銀河戦記/鳴動編 第二部 第六章 皇室議会 V
2020.04.04

第六章 皇室議会




 正面パネルスクリーンには、勇壮と進軍する統合軍艦隊が映し出されていた。
「しばし後を頼む」
 席を立つアレックス。
「どちらへ?」
「ティータイムだ」
 統合軍の進撃が順調に進んでいるのを見届けて、ちょっと休憩したくなったのであろう。
 第一艦橋を出てすぐの所に、自動販売機コーナーがある。
 立ち寄って販売機にIDカードを挿しいれてドリンクを購入するアレックス。
 湯気の立ち上がるカップを取り出して、そばのベンチに座って口にする。
「うん。自動販売機にしては、結構いける味だな」
 一服している間にも、艦橋要員のオペレーターが立ち寄っていくが、アレックスが任務
中なのを知っているので、軽く挨拶をするだけで話しかける者はいない。


 ドリンクを飲み終わり、やおら立ち上がって艦橋とは反対方向へと歩きはじめる。
 向かった先は、通信統制室の一角にある通信ルーム。
 その中の一室に入り、端末の前に着座して、機器を操作している。
「特秘通信回線を開いてくれ」
 端末に向かって話すと、
『IDカードヲ、ソウニュウシテクダサイ』
 と喋り、言われたとおりにIDカードを差し入れると、
『モウマクパターンヲ、ショウゴウシマス』
 レーザー光線が目に当てられて、網膜パターンのスキャンが行われた。
『アレックス・ランドールテイトクト、カクニンシマシタ。トクヒカイセンヲ、ヒラキマ
ス』
 と同時に背後の扉が自動的に閉じられ鍵が掛けられた。
 アレックスは通信相手の暗号コードを入力して短い電文を送信した。

 静かな湖から白鳥は飛び立つ

 たったそれだけであった。
 何かを指示する暗号文なのであろうが、これだけでは知らない人間には通じない。
 おそらく受け取った誰かだけが、その真意を理解することができるのであろう。
 ややあってから、
『ジュシンヲ、カクニンシマシタ。リョウカイシタ』
 という通信が二度返ってきた。
 暗号文が二箇所の相手に伝えられ確認されたことを意味していた。
 通信端末の回線を切るアレックス。
 回線を切ると自動的に扉が開く。
「よし。これでいい」
 立ち上がり、通信ルームを退室する。


 艦橋に戻ると一騒動が起きていた。
 整然と並んでいた艦隊が乱れていた。
「どうしたんだ?」
「はい。地方の委任統治領の領主が参戦したいと割り込んできたのです」
「委任統治領?」
「いわゆる周辺地域をパトロールしていた警備艦隊を引き連れてきました」
「警備艦隊ねえ……」
 警備艦隊は、各地で起こった暴動や反乱などを鎮圧するのが主な任務である。
 つまり艦隊戦の経験がまったくないということである。
 これからやろうというのは、総督軍との艦隊決戦である。
 艦隊戦闘の経験のない艦隊など役に立つどころか足手まといになるだけである。
「ここで名を売っておこうという腹積もりなのではないかと」
「おそらくな」
「どうしますか、追い返します?」
「そう無碍にもできないだろう。何か役に立つこともあるだろうさ」
「索敵にでも出しますか?」
「いや。索敵を甘く考えてはだめだ。勝利の行方を左右する重大な任務に素人を投入する
のは危険だ」
「では、後方支援部隊に協力させて、解放した惑星の戦後処理にでも当たらせますか?」
「そうだな……」
 厄介なことになったが、相手は委任統治領の領主であり、土地持ちの上級貴族である。
 今後の銀河帝国における政策にも関わる問題であり、彼らを抜きにしては将来は保証で
きない。
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