【初稿版】学園小説/梓 中編
(六)野球部へ
野球部部室。
練習開始前のミーティングで、部屋の中に集まっている部員達。
「今日も来るかな、あの子達」
「来るんじゃないかなあ」
「いっそマネージャーになってくれたらいいのにね」
「ああ、何にもしなくてもいいから、じっと見守ってくれるだけでもいいよ」
「おまえら、何いってんだ」
その時、部室のドアがノックされる。
「誰か、来たみたいですね」
「どうぞ、入ってください」
戸口そばに座っていた二年生の木田孝司が返事をする。
しかしドアを開けて入ってくる気配がない。
「ん、どうしたのかな。木田、おまえ見てこい」
木田に向かって命令する山中主将。
「はい」
木田がドアの所へ行って、扉を開け外を確認する。
そこには微笑んでいる梓が立っていた。
「き、君は!」
「こんにちは」
一斉に振り向く一同。
「今の声は!」
「梓ちゃんじゃないのか?」
「なに、梓ちゃん!」
木田を押し倒してドアに殺到する部員達。
「やっぱり、梓ちゃんだ」
「絵利香ちゃんはきてないの?」
「うん。今日はテニス部の練習」
「あ、そうかテニス部って言ってたっけ」
「で、梓ちゃんは、何しに来たの?」
「うん。キャプテンいますか?」
部屋の中をちらりとのぞく梓。
「ああ、キャプテンね。いますよ」
山中主将に視線が集中する。
「キャプテン、梓ちゃんが面会ですよ」
「梓ちゃんだとお。こっちに呼んでこい」
「なにいってんですかあ。かわいい女の子が、こんなむさ苦しい部室の中に、入って
これるわけがないじゃないですか。キャプテン出てきてくださいよ」
「ったくう……」
山中主将、しぶしぶ外に出てくる。
梓を囲むようにしている部員達。
「おまえらなあ……ぼさっとしている暇があったらグラウンドへ行け!」
右手の拳を振り上げて怒鳴り散らす山中主将。
蜘の子を散らすようにグラウンドに駆け出す部員達。
「ほれほれ、早く行かんか」
とろとろ歩いている部員の尻を蹴飛ばして、グランドに押しやる武藤。
「ったく、しょうがない連中だ」
ぶつぶつ呟きながら、副主将の武藤の采配で一同が練習を始めるのを見届けてから、
梓に話しかける山中主将。
「で、キャプテンの山中だけど、僕に何か用かい?」
部員達に対しては怒声を上げる山中主将であるが、可愛い顔で微笑む梓を前にして
は、さすがに口調もやさしくなる。
「はい」
鞄を開けて中から一通の書状を取り出して主将に渡す梓。
「これは?」
梓、にっこりと微笑んでいる。
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