(四)自覚して
それから数日後に、隠し部屋から自分が以前寝ていた部屋に移された。
警察の事故調査がすべて終わって、こなくなったかららしい。
助手は毎日のように朝昼晩と、部屋へやってきた。
私に食事を与えなければならないからである。
しかし、食事をすれば排泄する。
生きていれば避けて通れない生理現象である。
小水のほうは、膀胱にカテーテルが入れられているらしく、全然尿意すら覚えないのであるが、問題は便の方である。
当然垂れ流しとなるので、紙おむつが当てられていた。
最低一回はその交換が必要である。
わたしとて垂れ流しはしたくないが、生理機能が回復していないからどうしようもない。
おむつを取り外して、汚れたお尻を丁寧に拭き取って新しい紙おむつをあてる。
まるで赤ん坊である、きわめて恥ずかしい限りだ。
しかし助手は、少しも嫌がらずに処置をしてくれていた。
とにもかくにも、わたしは壊れ物を扱うように慎重に大切に扱われていた。
毎日の生理現象の処理をするだけではないようだ。
助手はどこからか衣装を持ってきては、わたしに着せて悦んでいるようだった。
「昨日のビキニの水着姿も良かったけど、やっぱりセーラー服が一番似合っているね。君のような女の子にはぴったりだよ」
まるで着せ替え人形だった。
もちろんランジェリーなども上から下まで完璧に装っているらしい。
かと思うと、
「今日の君は、僕のために忠実に従うメイドになるんだよ。『お帰りなさい、ご主人さま!』とか言うんだよ」
あのなあ……。
わたしは喋れないんだ。
しかし、助手は自分勝手に想像を膨らませて、
「ああ、そうだね。君の言うとおりかも知れない。今度は、君自身が主人公になれるような、シンデレラみたいなウエディングドレスを持ってくるよ。そして二人だけの結婚式をあげよう」
とか一人芝居をはじめている。
それから数日後、助手はウエディングドレスを持ってきたようだった。
「ほら、約束とおりにウエディングドレスを持ってきてあげたよ」
はあ、よく言うよ。
「今日はお風呂に入ろうね。垢がだいぶたまったみたいだから」
そうなのだ。
わたしの身体の表面を覆っている人工皮膚は生きているから垢もでる。
いや皮膚だけでなく、身体全体を形作っているすべての人造細胞や臓器は生きて細胞分裂を繰り返して、常に新陳代謝をおこなっているのだ。
風呂に入って垢を落とす必要があった。
放置されて垢まみれとなった身体を想像したくはなかった。
その点、助手はきれい好きだった。
だからこそ排泄物もいやがらずに処理してくれているのだ。